経営課題
2020/01/29
【「自信と誇り」を取り戻し、 業績も向上】オリンパスが行なった風土改革とは
オリンパスが行った風土改革とは

業務の生産性向上を追求すると、本来は大切にすべき仕事のやりがいや職場の価値を見失いがちになる。これはどの企業でも共通の悩みだろう。

なぜここで働くのか、どんな夢があるのか。自分自身にそんな問いかけをする機会はなかなか持てない。だからこそ、企業は意識してそうした機会をつくり出すべきだろう。

トップの不祥事で苦しんだオリンパスでは、人事部が現場と一体となって組織風土改善に取り組み、成長路線への原動力を生み出していた。

※ビズリーチは、日経ビジネス電子版 SPECIAL テーマ特集「働くを考える」に協賛しています。
※日経BP社の許可により、2018年4月10日~の日経ビジネスオンラインSpecialに掲載された広告から抜粋したものです。禁無断転載 (C) 日経BP社

活力低下の原因は事件ではなく組織風土にある

オリンパスは来年100周年を迎える。売上高7500億円、従業員数3万5000人。医療、科学、映像の分野で確固たるポジションにある大企業だ。しかし2011年、同社を激震が襲う。 トップ自らが粉飾決算を主導するという不祥事が明るみに出たのである。株価は急落し、第三者委員会が設置され、当時のトップは辞任し、刑事事件にまで発展した。

この不祥事は、誇りを持って仕事に取り組んできた同社の従業員たちの心も大きく傷つけた。企業の業績を支えるのは言うまでもなく従業員たちだ。しかし、不祥事があれば現場で矢面に立たされる。同社が立ち上がるには、従業員が誇りを取り戻し、再び上を向いて仕事に取り組むことが不可欠だった。2012年に新体制で再スタートした同社は、現在、経営方針として大きく2つのことを掲げている。専門性の高い顧客のニーズに高い次元で応える「To be the greatest ”Business to Specialist” Company」と、グローバルで全社のパフォーマンスを最大化させる「One Olympus」だ。

「One Olympus」という経営方針には、従業員たちが一丸となって信頼回復に努めたという意味合いもあるだろう。同じ志を持ち、価値観を共有することこそが活力を生み、会社の再生にもつながる。「1人ではない」という絆を持つことは人を強くするからだ。しかし、事件直後の同社はむしろ正反対の状況だった。事件の影響は大きく、従業員の気持ちはどこか消沈していた。同社は企業風土改革につなげるため、現状を把握するための組織診断を新経営体制発足直後の2012年に実施し、事件前の2008年に行ったものと比較した。

同社の人事本部の森賢哉氏は「やはり経営への信頼感や従業員の活力が低下していました。ただ、分析してみると前回の2008年で悪かったところがさらに悪くなっていたのです。これは組織風土の問題だという仮説を立てました」と語る。負のスパイラルを打ち切るために同社では課題を整理し、取り組みテーマを決め、風土改革に向けた施策を打ち出していった。

部門を超えた絆をつくるための全社イベントの開催

「課題としては、大きく5つにまとめることができました。経営トップのコミュニケーション不足、上位方針の展開とPDCAが不徹底、人と組織を束ねるマネジメントの弱体化、現場活力の減退、そして個別最適化の加速です」と森氏。これらの課題は歴史のある企業ではありがちな現象だろう。

この5つの課題を受けて、取り組みテーマを(1)経営トップ・コミュニケーション強化、(2)マネジメント支援・強化、(3)職場活性化に設定し、全てのレイヤーごとに具体的な施策を実行していった。例えば、経営トップ・コミュニケーション強化では、経営トップによるタウンミーティング(対話集会)を3年間で200回実施し、これには約2000人が参加し、現在も取り組みを継続している。

またマネジメント支援では、本部長・部長を対象に360度評価を取り入れた。3つ目の職場活性化としては、部門を超えたFace to faceコミュニケーションの活性化と主体性を持って最後までやり抜く「考動力」の強化をテーマに取り上げた。まず、仕事のやりがいを再確認するための「職場のワークショップ」は人事部がフレームワークをつくり、各部署で自主的に実施してもらい、そのうえで初めての全社イベント「OLYMPUS FUN FESTIVAL(OFF)」を開催した。

OFFは2015年夏にパシフィコ横浜で開催され、任意参加ながら国内グループの従業員とその家族約6000人が参加した。そこでは大玉送りやリレーなどのスポーツ競技、各事業部の予選を勝ち抜いてきた人が出場する超人決定戦、それぞれの事業の紹介イベント、地方拠点による太鼓や踊りの出し物、フォトコンテスト、屋台など盛りだくさんの企画が用意された。



イベントの狙いは一体感の醸成だ。職場活性化のための部門を超えたFace to faceのコミュニケーションを活性化させるために、希望者で90人からなる全社横断の実行委員会を組織し、約1年かけて準備を進めた。各事業場で予選が開かれるなど、準備のためのプロセスを通して全社としての一体感を盛り上げていった。いわゆる“自分ゴト化”の実践である。

リーダーとしてイベントを仕切った森氏は「人事の私が主導するのではなく、実行委員がやりたいことをやりきってもらい、実行プロセスで多面的に従業員をつなげる仕掛けを用意。イベントという非日常で、日常の感動を伝えることにこだわりました」と語る。

ともに働く仲間とのつながりを感じてもらうために、当日は従業員からの感謝のエピソードと職場らしさを伝える集合写真を映像で紹介した。辞めたいと相談したときにおいしい料理をご馳走してくれた先輩、転勤した自分を温かく迎えてくれた職場の同僚、チームを引っ張ってくれるリーダー。そういう仲間たちがいて今の自分がいるということを再認識できる映像だった。

イベントのトリを飾ったのは、上映後の社長からの従業員への手紙だ。ともに危機に立ち向かった従業員への感謝の思いがこもった感動的な内容だったという。

家族に良い会社だと思ってもらえたことが一番

同社初の全社イベントは大成功に終わった。参加者の9割がこうしたイベントの継続を希望し、100周年でもイベントの開催を検討しているという。「どのような効果があったと思うかという問いに対して、一番は従業員の家族に良い会社だと思ってもらえたことでした」と森氏は語る。



もちろん、当初の狙いであるOne Olympusマインドの醸成や従業員同士のつながりの強化という項目が上位にきているが、トップは家族への影響だった。家族に良い会社で働いているということが、従業員の誇りにつながることが改めて確認された。

「一体感というのは、方向性と関係性の2軸からもたらされるものだと思います。理念や価値観、戦略といった方向性を共有するとともに、信頼や協働といった関係性を強化することで一体感が醸成されます。OFFは関係性の強化に大きく貢献することができたイベントでした」と森氏は話す。

こうした全社イベントは通常は総務部が取り仕切ることが多い。しかし、レクリエーションではなく、組織開発の一環として捉えれば、同社のように人事部門が主導しても不思議ではない。従業員の関係性の強化は組織を強くするという視点から、イベントにおける人事部門の役割を見直してみてはいかがだろうか。

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