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2019/08/28
マネーフォワードのリファーラル採用ブースト作戦 ~社員の心理的障壁を取り除き、紹介が回り続ける新たな仕組みとは~【採用強者の流儀 イベントレポート】


労働力人口の減少により、売り手市場はますます加速するといわれる昨今。優秀な人材確保の手法として欠かせないのが、社員が一緒に働きたい仲間を紹介する「リファーラル採用」です。

6月25日に行われたビズリーチ主催のイベントでは、リファーラル採用率が常に全体の20~25%を占めているという株式会社マネーフォワードが登壇。リファーラル採用の課題に向き合い、新たな紹介の仕組みを生み出した取り組みに、多くの人事・採用担当者が耳を傾けました。


 

社員の心理的障壁を取り除く「GOENカード」を発行

「すべての人の、『お金のプラットフォーム』になる。」をビジョンに掲げ、2012年に創業したマネーフォワード。個人、法人向けにお金の見える化サービスを提供し、着実に成長を続け、2019年2月時点で社員数449名となっています。創業当初から数年はほぼ1名体制だった採用担当は、8年目の今年、9名体制に。年間採用数は、昨年は150名超だったところから2019年には200名超ペースへと拡大を続けています。

会社の規模がそれだけ大きくなるなかでも、リファーラル採用をより加速するために、マネーフォワードではさまざまな取り組みを行ってきました。 例えば、社内、社外向けの広報記事の発信や、経営陣や人事部からの全社員に向けた定期的な情報発信。成功事例の共有として、リファーラル採用で入ったメンバーを紹介する社内向け記事「マイリファラルストーリー」の発信やインセンティブ付与など、制度も整えています。さらに2019年6月からは、社員(誘う側)も候補者(誘われる側)も、より負担なく、自分のタイミングで応募へのアクションをとれるようにと「GOENカード」の発行をスタートさせました。

新たな施策に乗り出したきっかけや、その効果について、人事本部人材採用部部長の小川昌之様(写真右)、同副部長の菱沼史宙様(写真左)に話を伺いました。


(写真右)人事本部 人材採用部 部長 小川 昌之 様
(写真左)人事本部 人材採用部 副部長 菱沼 史宙 様

誘う側、誘われる側に立って感じた不安から「GOENカード」のアイデアが生まれた

―2019年6月より「GOENカード」を導入。このきっかけは何でしたか?

菱沼: リファーラル採用は、常に企業側、経営側の視点で「採用コストの削減につながる」「入社後のミスマッチが少ない」といったメリットを語られがちです。でも、実際に「うちに来ないか」と誘う社員、誘われる個人の目線はほとんど無視されている。一人一人が感じる不安をもっと解消できれば、リファーラルはよりスムーズになるのではないかという思いがありました。

小川: 僕自身が、菱沼をリファーラル採用で誘ったんです。前職で人事マネージャーとして活躍しているのを知っていましたから、誘っても難しいだろうな……と思いながら声をかけたのをよく覚えています。

菱沼: そうそう。人事コミュニティーの飲み会で出会い、その後二人で飲みに行くようになり意気投合。「来ないか」と誘われたときに、もっとも悩んだのは「転職するタイミング」でした。いつまでに回答すべきか、今断ったらもう縁がなくなってしまうのではないかと、心のどこかで常に考えていました。さらに、自分が人事・採用畑に長くいるので、候補者をシビアに評価することもわかっていました。勇んで面接に行っても、評価が悪くて落ちたら小川に迷惑がかかるのではないか。せっかくいい人事仲間ができたのに、不採用になることで気まずくなるのではないか。そんな不安もありました。

小川: リファーラル採用を推進している人事でさえ、誘う側、誘われる側に立てばささいなことを気にして誘うことも応募することもちゅうちょしてしまう。現場の社員はもっと悩むはずです。そこで、不安を払拭する仕組みを作ろうと考えたのが「GOENカード」でした。



「GOENカード」でリファーラル採用のネックを解消

―「GOENカード」で実現できることとは?

小川: まず、カードを作るにあたり、リファーラル採用において解消したい課題を考えました。誘う側には、「相手の転職に対する意欲がわからないので誘い方がわからない」「誘った人が不採用になることを考えると誘いにくい」という懸念があります。誘われる側には「転職への意欲はあるが伝える機会がない」「誘ってもらって応募しても採用になるか不安」という思いがあります。 「GOENカード」があれば、「自分の意思で、好きなタイミングで応募を検討してほしい」と、誘う時期や相手の状況を探ることなく渡すことができる。受け取る側も、自分の転職への意欲が高まったタイミングでカードに記載されているQRコードにアクセスすれば、いつでもエントリーできます。適切なタイミングで誘えない、というリファーラル採用上の大きなネックを解消することができるのです。

菱沼: また「誘ったのに、あるいは誘ってくれたのに、不合格だったらどうしよう」という、関係性への懸念も払拭できるよう、エントリーフォームにも工夫をこらしました。フォームでは、「ご縁のきっかけを創った社員は誰か」「エントリーしたことをその社員に伝えるか」を尋ねる項目がありますが、入力の可否、伝えるか否かは応募者の意思で決められます。転職に対する意欲も「積極的に転職活動中」なのか「まずは話を聞いてみたい」程度なのかを選べるので、エントリーしたからといってすぐに選考というフローにはなりません。どうすればお互いの不安や負担が最小限になるかを考えました。



―長期的な視野でタレントプールを考えているのですね。

小川: たとえ数年後でも応募してきてくれたらうれしい、という思いで作りました。ただ、実際に運用をスタートしたら、社員から「カードを渡したい人がいる」と多くの手が挙がり、すぐに100枚以上※が社員の手に渡りました。

菱沼: 驚いたのは、運用開始から3週間で3人からエントリーがきたこと※。即効性を期待していなかったので、かなり手ごたえのある数字です。しかも転職の意欲が高い方ばかり。短期間でアクションがあったのはとてもうれしいですね。



リファーラル採用が盛んな会社は「紹介したいと思える会社」

―「GOENカード」があっても、社内にリファーラル採用への理解が浸透していなければ運用は難しいのでは。どのように、カルチャー浸透を進めてきましたか?

小川: リファーラル採用においてもっとも大切なのは「紹介したいと思える会社」づくりです。そう思えるだけの会社の意思決定やアクションをコントロールすることは困難です。そのため、意思決定やアクションの事実、ひいてはその背景まで社内に伝えるためのインナーブランディングを目的に、社内向け、社外向けの記事発信を続けています。そのなかで直近は、リファーラル採用のメリットや事例を伝えるために、誘った人と誘われた人の出会いや関係性、リファーラルに至ったエピソードをつづる「マイリファラルストーリー」という企画も始めています。また、リファーラルで入社に至った場合は、紹介者である社員へのインセンティブを付与しています。

菱沼: インセンティブは、キャンペーンと称して金額を上げたこともありました。でも、額が変動したから紹介数が上がるかといえば、そんなこともない。インセンティブで人は動かないし、それが目的になるのは本質ではないと実感しました。

小川: あとは、採用活動自体にさまざまな社員に参加してもらうことも、良い効果を生んでいます。最近では、自社の採用イベントを企画し、普段は選考に関わっていない社員にも運営に参加してもらい、候補者の方ともコミュニケーションを取る機会を作っています。この体験が、「自分はなぜマネーフォワードに入社したのか」という原点回帰につながってエンゲージメントが高まり、より採用活動に協力的になってくれています。

菱沼: リファーラル採用が一定の割合で続いているうちは、「紹介したいと思える会社」である証拠だと思います。これが減ってきたら、会社に何かほころびが生じているということ。リファーラルは、会社の状態を知る一つのバロメーターです。何年後かに、全体の採用のうち通常のリファーラル採用と「GOENカード」経由を合わせて50%を超えたら素敵だなと思っています。



※本文中の運用実績は取材時の2019年6月25日時点。
2019年8月23日時点では社員からの問い合わせでカードを渡した数約500枚、GOENカード経由の応募数10件、内定承諾も1名獲得。

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