経営課題
2019/12/19
人材流出が企業にもたらすリスクとは?優秀な社員の離職を防ぐ方法
企業の持続的な成長には、優秀な人材の採用と定着が欠かせません。そのため「人材流出」とも言えるような相次ぐ人材の退職は、会社の発展と存続に深刻な影響を与えてしまいます。大企業のみならず、中小企業でも人材流出への対策が必要でしょう。

人材流出を防ぐには、何が社員の不満につながっているのかを理解し、対策に努めることで退職の「芽」を摘むことが必要です。そこで今回は、人材流出によって引き起こされるリスク、社員の主な退職理由と防止策を紹介します。  

1. 人材流出によって起こる経営のリスク

人材流出によって、具体的にどのような経営リスクが発生するのでしょうか。ここでは「成長鈍化」「コスト増」「ノウハウ・顧客の流出」の3点からご説明します。

1-1. 企業の成長が鈍化する

最大の問題は、企業の成長に多大な悪影響を及ぼすことでしょう。最近では「人財」と称する企業もあるように、企業を支える重要なリソースの一つが人です。人材を安定的に確保するのは、事業を継続・拡大させるために欠かせません。したがって、離職率が高まれば経営状態の悪化につながる可能性が出てきます。

内閣府の発表によると、近年では男女とも転職者数や転職率が緩やかな上昇カーブを描いているのが現状です。労働者の流動性が高まると、優秀な社員を中途採用できるチャンスが広がります。その一方で、時間をかけて経験と実績を積んだ優秀な若手社員が退職してしまうリスクが高まっていることも意味しています。

事業の根幹を支えてきた社員が多く退職してしまえば、経営難に陥る危険性もあります。特に社員数の少ない中小企業では、数人単位の退職だけでも致命的なリスクにつながるかもしれません。

【参考】「日本経済2017-2018 第2章 多様化する職業キャリアの現状と課題(第1節)」(内閣府)

1-2. コストが増加する

人材流出が起きると、新規採用のために求人広告を出したり、人材紹介会社へ紹介を依頼したりと、採用コストを多くかけざるを得なくなります。また、採用した社員に一から企業理念を伝えたり、仕事のやり方を教えたりしなければならないほか、パソコンなどの情報システム機器を用意しなければいけません。

コストには、工数(人的リソース)も含まれます。既存社員が採用活動や研修に大幅な時間を費やすとなると、事業に費やせる工数は減ってしまいます。

1-3. ノウハウや顧客の流出

社員の退職は、その社員が自社で培ったノウハウや積み重ねてきた経験の流出を意味します。そうすると、その社員が退職後の事業運営が滞る場合もあるでしょう。たとえば、VBAで「Excel」や「Access」などでの作業の自動化を唯一担当していたエンジニアが転職してしまい、その管理が困難になるような事例も考えられます。

つまり、一人の社員の退職は、個人に付随するノウハウや経験などの流出を意味する可能性があるということです。

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2. 社員が退職を考える理由

人材流出を防ぐには、まず退職の「芽」を摘むところから始まります。社員の退職の原因を3点からご説明します。

2-1. 労働条件への不満

まず考えられるのは、給料や労働時間、休日数など労働条件の問題です。特に仕事量や業績に見合わない労働環境の場合、不満を抱きやすいと考えられます。また、社員の個人的な価値観と会社の風土が合わないと仕事や会社への満足度は下がりやすいでしょう。

政府の打ち出した「働き方改革」に呼応するように、労働条件の改革を進める企業も少なくありません。社員の能力や生活環境、価値観などに即した待遇改善の取り組みが必要でしょう。特に採用の時点で、労働条件を明示 することが重要です。

2-2. 職務内容への不満

職務自体への不満が出ることもあります。自分の仕事にやりがいを見いだせない、裁量権がない、あるいは就職(転職)前に説明を受けていた仕事内容と異なるなど、職務への不満はさまざまあると考えられます。

職務内容への不満を防ぐには、当然ながら社員がやりたいと思う仕事に挑戦できる環境を整えることが大切です。経営者が明確な事業戦略を描き、管理職がそれを事業や職務に落とし込み、そうした職務を希望する社員を採用できれば、職務内容への不満は出にくいでしょう。

ただし、現実にはどうしても社員の希望と異なる仕事が発生することは避けられません。そうしたなかで社員の思いを反映させるためにも、面談を定期的に実施して、現場社員の仕事に対する思いなどについてヒアリングすることが必要でしょう。また、タスクを割り振る際の説明、個人目標の設定とフィードバックなど、社員と会社(上司)との密なコミュニケーションが求められます。

2-3. 人間関係への不満

社内の人間関係の問題から、退職を考えることもあるでしょう。各種のハラスメント、職場の雰囲気とのミスマッチ、さまざまな要因が存在します。こうした問題は、SNSなどで明るみに出やすく、結果としてその後の採用にも悪影響を与えることもあります。

組織である以上、人間関係の問題を完全になくすことは困難です。しかし、問題を最小限にとどめるための工夫はできます。ハラスメントの相談窓口を社内に設ける、上司や人事担当との1対1のミーティングを定期的に実施するなど、問題の深刻化を防ぐ施策が求められるでしょう。

3. 人材流出を防ぐ方法

人材流出対策のことを、近年では「リテンションマネジメント」と呼ぶことが増えてきています。最後に、このリテンションマネジメントの仕組みについて考えます。

3-1. 評価制度を改善する

全従業員の納得しやすいフェアな評価制度づくりは、人材流出を防ぐために考えられる対策の一つです。成果を上げた社員を高く評価する一方、その他の社員へも、成果に対する理由・課題・解決策がしっかり認識している場合に評価する制度であれば、社員のモチベーションアップが期待できます。

もちろん、評価制度を賃金体系と結びつけることも重要です。年齢によらず、評価に応じて年収アップや昇格につながるのであれば意欲が高まるでしょう。

3-2. 希望する部署への異動を検討する

どうしても現在の部署で活躍できない、希望と異なるという場合、本人の経験や要望を踏まえて、異動の機会をつくるのがよいでしょう。適切な処遇のためにも、面談を通じて本人の気持ちをヒアリングすることは欠かせません。

大企業の場合は、部署によって全く風土が異なるケースもあります。異動後、スムーズに新しい仕事へ移れるようにするためにも、人事担当者や異動先の部署の上司・先輩などのサポートが必要です。

3-3. 管理職に対して人事評価研修を行う

管理職が部下を評価する過程で、管理職の人柄や部下との相性によって、評価が属人的になる場合があります。評価を標準化し、公平性の高い評価を実現するためにも、管理職研修の一環として、評価方法について指導することが求められます。

これはつまり、部下の育成や評価には「スキル」が必要だということです。人事担当者だけでこうしたスキルを指導することが難しいのであれば、社外の研修会社やコンサルティング会社、人材サービス会社などの専門家に相談することをおすすめします。

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4. 人材流出を個人の問題ではなく企業の経営課題として捉える

退職と聞くと、個人のキャリアパスやビジョン、性格、あるいは上司・同僚や会社の風土との相性など、個人の問題として捉えてしまうかもしれません。しかし個人レベルではなく、全社的に影響を及ぼしかねない経営課題として「人材流出」をしっかりと捉え直す必要があります。

社員の退職は、経営にも関わる大きな問題です。個人レベルで解決しようとせず、全社的に人事制度を見直し、不満の出にくい体制を構築することが必要でしょう。

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