インタビュー
2020/03/12

先進的な取り組みで注目されるマイクロソフトの人事戦略とは【会える人事 イベントレポート】

先進的な取り組みで注目されるマイクロソフトの人事戦略とは【会える人事 イベントレポート】

先進的な人事採用戦略や、働き方の取り組みで注目されている日本マイクロソフト。2019年8月には、全社員へ1カ月間、「週勤4日制」を試験導入したことで話題になりました。「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」と呼ばれるこの取り組みは、多くのメディアに取り上げられています。

優秀な人材獲得に多くの企業が苦戦している今、日本マイクロソフトは、社内外の人材採用・活用をどう考え、どのような仕組みのなかで進めているのでしょうか。イベント前半には人事本部採用チームマネージャーの大渡郁佳(おおわたり・ふみか)様が、人事戦略の具体的な事例を紹介。後半には、同社リクルーターの森まみな様が加わり、日本マイクロソフトのカルチャーについて議論を交わしました。

マイクロソフト_大渡様_森様_会える人事

(写真右)大渡郁佳(おおわたり・ふみか)様

日本マイクロソフト株式会社人事本部採用チームマネージャー。人材サービス会社で派遣営業などを担当。夫の海外転勤のため一時キャリアを中断したのち、2011年にリクルーターとして日本マイクロソフトに入社。部門人事を経て、2016年より3年間シンガポールでHRビジネスマネージャー(HR事業企画)を担当。2019年5月より現職。

(写真左)森まみな様

日本マイクロソフト株式会社人事本部採用チームリクルーター。これまで3社で人事・採用を担当し、2018年2月より現職。

※本記事は、2019年11月13日に開催された「会える人事」のイベントレポートです。所属・役職等は取材時点のものとなります。

【セミナー】カルチャー変革を進めるマイクロソフトの人事戦略とは

大渡様

マイクロソフトが会社として大事にするカルチャー、人事評価の仕組みは、この5年で大きく変化したと、大渡様は話します。

「2014年にサティア・ナデラがCEOに就いて以降、マイクロソフトが目指す方向は大きく変わりました。それまで、自分たちだけで強い製品を作ることに注力していたところから、外部のテクノロジーの力を活用し、協業しながら価値ある製品を提供していこうと、アライアンスやコラボレーション重視のカルチャーへ大きくかじを切ったのです。

背景にあったのは、産業構造の変化です。クラウドビジネスの事業規模が拡大し、開発サイクルが短期化するなか、他社が提供できていないイノベーションを、より早く出すことが求められるようになりました。大きなビジネスインパクトは、一人の力に依存した組織カルチャーでは生み出せません。それに伴い、日本マイクロソフトの社内カルチャーも『チーム』を重視した評価制度やクラウドツールの活用へ変革してきました」

2015年からスタートした新たな人事制度で定めたゴールは「成長とコラボレーションを加速し、顧客に貢献するイノベーションを生み出す」こと。そのために定めているのが、

  • チームワークを通じた成果の実現
  • 成長を加速し、より良い結果を出すためのフィードバックの仕組みを実装
  • インパクトに応じて報酬を分配
  • という3つの指標だといいます。

    「個人で実現したことに対する評価は3分の1。ほか3分の2の評価基準は、チームの協業でどう目標を達成したか、周りの知見をどう活用できたかを見ています。個人のアクティビティーベースではなく、どのようにチームを巻き込めたか、チームワークを通じたインパクトを評価し、そのフィードバックを可視化しています」

    チームを重視した企業カルチャーの浸透に向けて、自社クラウドツールを最大限に活用し、さまざまな取り組みを行っている日本マイクロソフト。その一つが、「コネクト」と呼ばれる、年3~4回の1on1ミーティングの実施です。

    「期初の目標設定に対してどのくらい達成できているか、チームワークのインパクトをどう生み出しているかをツール上で共有し、上司と1時間のディスカッションミーティングを行います。以前は年に1回のフィードバックミーティングがありましたが、事業変革が目まぐるしい今、1年単位では間に合いません。それ以外にも2週間に1度、日々の進捗やキャリアについて話す1on1ミーティングが推奨されており、私もシンガポールにいる上司とオンラインでコミュニケーションを重ねています。日本マイクロソフトではリモートワークが推奨されていますが、1on1のカルチャーが浸透しているため、仕事の進捗共有は問題なくできています」

    ほかにも、通話やビデオ会議など「会話」の機能をベースに部門横断的なプロジェクトを支援するクラウドツール「Microsoft Teams」や、人事関連の問い合わせや申請を簡単に行える「Ask HR」など、社員の生産性を落とさない仕組みが整っているといいます。

    「人事・経営者向けのデータが可視化された『Power BI』では、必要な情報はすべてデータアナリストによってまとめられています。人事採用戦略を考えるにあたり、社員の退職率の変化や退職者のインタビューなどまとまったデータを見ることができ、データ整理をする時間が削減できる。かなりの業務効率化につながっています」

    日本マイクロソフトが取り組むユニークな人事戦略の一つとして大渡様が紹介したのは、2018年1月より展開している「リターンシッププログラム」。出産や介護などで離職しキャリアを中断した方でも、社会に復帰する後押しを実現させるために考案されたプログラムです。

    「インターンシップの形で受け入れたのち、その期間のパフォーマンスを鑑みた上で社員へのリードの道を作っています。約1年半で13人のインターンを受け入れ、現在7人が就業中。4人がセールスやサポートエンジニアなどで正社員となっており、一定の成果を上げられていると考えています」

    2019年8月に1カ月限定で行った、週勤4日の試験導入「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」は、効果が検証され、94%の社員が「評価する」と回答しているといいます。

    「マイクロソフトは、まだまだカルチャー変革の旅の途中。さまざまな取り組みを社員と試行錯誤しながら、より心地よく、生産性の高い働く環境づくりを進めていきます」

    【パネルディスカッション】マイクロソフトのカルチャーについて

    ――日本マイクロソフトのリクルーターが他社と異なる点はどこにありますか。

    大渡:
    採用のほとんどをダイレクトリクルーティングで行っています。採用のなかでカルチャートランスフォーメーション(企業文化の変革)を進めるべく、現場の採用責任者へのコーチングもリクルーターが担当。現場のマネージャーと各部門が人事戦略を考え、どのような人材が必要なのか、常に議論を重ねながら次のアクションを進めていきます。社内ではリクルーターではなく「スタッフィングコンサルタント」とも呼ばれており、まさにコンサルタントとして現場の採用を支える役割を担っています。

    森:
    これまで3社で採用を経験してきましたが、日本マイクロソフトはリクルーターの担当範囲が非常に広いと感じています。

    組織開発の観点で、年間の人員計画がアメリカ本社から下りてきますが、具体的にどういう配置が必要で、人材供給をどう進めるかは現場のハイアリングマネージャー(採用部署の決裁者)と初期段階から握っていきます。リクルーターというと「現場からきたオーダーに対応する」というイメージを持たれがちですが、現場と協業できるのが日本マイクロソフトの特徴ですね。

    ダイレクトリクルーティングと並行して、社内公募も積極的に実施します。求められるスキルは1年ごとに大きく変わっていくので、社内異動で適材適所に人材を配置するのも、私たちの重要なミッションです。ただ、社内の配置転換であっても会社側が一方的に決めることはなく、個人の希望に応じて通常の外部採用と同じ選考フローをとり、合格を勝ち取って異動が決まります。

    ――リクルーターの働き方に特徴はありますか。

    大渡:
    いつでもどこでも活用できるクラウドツールは、リクルーティング業務にも生きています。たとえば当社には、遠方で生活しながら従事するリクルーターがいます。候補者と対面のコミュニケーションがなくても、ツールを使えば業務上まったく問題がなく、優秀な成果を出し続けています。

    今後のライフイベントに関する社内アンケートでは、85%の社員が「介護の可能性がある」と答えています。在宅勤務ニーズが確実に増えるなか、すでにクラウドベースで働けているのは恵まれた環境だと思います。

    森:
    私は2018年にタレントソーサー(人材発掘の担当者)でしたが、私以外のメンバーは全員、国外にいました。Microsoft Teamsで会話するのが当たり前で、いつでもどこでも誰とでも働ける環境は心地いいなと実感しましたね。

    ――これまでの人材採用での失敗経験と、それをどう改善させてきたかを教えてください。

    大渡:
    2000年代に多くの人材を採用していたときは、「こちらが選んでいるんだぞ」と、上から目線で候補者に接するハイヤリングマネージャーが少なくありませんでした。たくさんのご批判をいただいた反省を生かし、現在はすべての面接担当者へのインタビュートレーニングを徹底しています。

    森:
    インタビュートレーニングでは、そもそも私たちは候補者の方に選んでいただく立場であり、面接の1時間に人生を懸ける候補者の方がいるということを伝えています。面接の場は、企業カルチャーや社員の雰囲気、人となりが一番見えるところです。誠実に向き合ううえで適切な言葉遣いを心がけること、時間通りに面接を始めることなど基本的なルールまで細かく規定しています。

    ――全社の採用への意識を高める取り組みはしていますか。

    大渡:
    日本マイクロソフトの採用は、2017年までほとんどが人材紹介会社経由でした。しかし、ダイレクトリクルーティングが主流であるアメリカ本社からのオーダーもあり、2018年以降の採用手法は、社員紹介とダイレクトリクルーティングにシフトしています。

    リファーラル採用で優秀な人材を獲得するには、「社員全員がリクルーター」という意識を社内に浸透させなければいけません。そのために行っているのは、中途入社者を対象にした2日間の入社後オリエンテーションです。入社早々、「皆さんがストーリーテラーになり、周りの優秀な人材にマイクロソフトの魅力を伝えていってほしい」と明確にメッセージを発信している。「自分たちの仲間は自分たちで増やしていく」というマインドセットを共有しているのです。

    森:
    社員紹介には2つの方法があります。1つは社内のキャリアサイトに紹介したい方の情報、職務経歴書までを登録する方法と、もう1つは紹介したい方の「LinkedIn」の情報だけタレントソーサーに共有する方法です。情報をもらったタレントソーサーは、候補者に直接連絡をして選考のプロセスなども決めていきます。この後者の方法は職務経歴書の提出が不要でハードルが低く、社員紹介が増えた要因の一つになっています。

    また、マイクロソフトに興味がありそうな方を気軽に誘えるように、「カジュアル面談紹介カード」も用意しています。カードに印刷されたQRコードからアクセスすれば、カジュアル面談を設定できたりイベント案内が届いたりと、マイクロソフトとのつながりを保てる仕組みです。

    今の転職市場は、優秀な人であればあるほど、今すぐには動けない……というケースが多いもの。1~2年を経て入社に至るケースもあるので、タレントソーサーと候補者がつながりを持っておくことが大切です。

    ――人材評価を進めるうえで取り組んでいることはありますか。

    大渡:
    すべてのチームがピープルディスカッション(人材評価に関するミーティング)に非常に時間とパワーを割いています。「この部署で、ビジネスインパクトが大きいとはどういうことか」について、具体例を挙げて確認しながらディスカッションを深めるのが特徴です。

    森:
    四半期に一度ピープルディスカッションミーティングが行われますが、ここに人事・採用担当が同席します。現場から参加を促される形で参加できるのはマイクロソフトのカルチャーならではです。

    ミーティングに参加することで「この部署ではこういう人材が活躍しているんだな」「人材に関してこんなところに困っているんだな」といった現場のリアルな状況をキャッチできる。採用を考えていくうえでもとても有益な情報です。また、自分が採用した方がどう活躍しているのかを見られる貴重な機会でもあります。現場と採用側がしっかりと接点を持ち、風通しの良い環境が作れています。

    まとめ

    日本マイクロソフト社内のミーティングスペースで行われた本イベント。さまざまな業界の人事・採用担当者が、マイクロソフトの取り組みに熱心に耳を傾けていました。パネルディスカッション後には懇親会が開催され、採用上の工夫のほか、採用後のキャリア育成についての質問が出るなど、議論が盛り上がっていました。

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