面接官が聞いてはならないタブーな質問とは何か|面接を成功させるポイント
初めて面接を担当する方も、何百人もの候補者と面接した経験がある方も、候補者から見れば同じ「面接官」です。
初めて面接業務を担当することになった方は、「面接官として、最低限知っておくべきことを具体的に把握したい」「任されたからには失敗したくない」と考えているのではないでしょうか。
候補者に真摯(しんし)に向き合うために、面接官が心得ておくべき、採用選考の基本的な考え方、面接官がしてはならない質問、面接を成功させるためのポイントについて紹介します。
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1. 面接官が覚えておきたい、採用選考の基本的な考え方
面接時にしてはいけない、不適切な質問(タブーな質問)を確認する前に、候補者の採否を判断する際の、基本的な考え方と取るべき姿勢をしっかりと理解しましょう。
この考え方に沿って個別の質問が適切かどうかを検討することで、「何を聞いてはならないのか」を判断し、タブーな質問をしてしまうことを避けることができます。
1-1. 公正な採用選考であること
企業は「自社が定めた雇用条件、採用基準に合う人」であるかどうかを客観的に確認し、合致する候補者はみな、次の選考ステップに進むことができるよう対応する必要があります。
「この候補者は、なんとなく自分と相性が悪そうだ……」といった、直感的に感じてしまうことなども含め、選考基準に関係のない要素や情報を元に判断するのは、当然のことながら許されません。
特に面接時の質問内容については、それを聞くことで、候補者の自由権や社会権といった基本的人権を侵害しないように注意しなければなりません。
1-2. 採否は候補者の適性、能力のみで判断すること
日本国憲法は、全ての人に職業選択の自由を保障しています。また一方で、企業側にも、採用方針・採用基準・採否の決定など、「採用の自由」が認められています。
しかし、この「採用の自由」とは、企業が採用選考時に、候補者に何を聞いてもよいということではありません。候補者の基本的人権を侵害するほどの、「採用の自由」が認められているわけではありません。
採用選考にあたっては、下記の2点を基本的な考え方とすることが大切です。
- 候補者の基本的人権を尊重する
- 候補者の適性と能力のみを判断基準とする
「緊張をほぐすための雑談として」「人間的な魅力や本音を引き出すため」など、候補者を評価するためではなかったとしても、誤解を招くような質問は避けましょう。
質問内容によっては就職差別につながることもあり得ます。例えば、平成29年度に行われたハローワークの「不適切な面接内容」についての調査では、「本人の適性・能力以外の事項を把握された」との指摘があった選考のうち、46.5%もの候補者が「家族に関することを聞かれた」と回答しています。
社会的差別の原因になる可能性がある個人情報の把握は、個人情報保護の観点からも認められないことに十分留意してください。
参考:自社の採用選考における質問事項をチェックしてみましょう!(厚生労働省)
2. 面接官が候補者に聞いてはいけないタブーな質問例
今回ご紹介する「質問例」は全て法律によって禁止されている、というわけではありません。業務内容や話の流れから、合理的であると判断されるケースもあり得ます。しかし、配慮が必要な質問事項であると、面接官側がきちんと理解しておくことが重要です。
2-1. 本人に責任のない事項
・本籍や出生地に関する質問
あなたの出生地はどこですか、あなたの本籍はどこですか など
・家族に関する質問
あなたのご両親の健康状態について教えてください、あなたの配偶者の職業は何ですか など
・住宅状況に関する質問
あなたの家は賃貸ですか、持ち家ですか、あなたの家はマンションですか、一軒家ですか など
・生活環境や家庭環境に関する質問
○○にお住まいとのことですが、国道○○号線のどちら側ですか、あなたは長男ですか。家業を継ぐ可能性はありますか など
2-2. 本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)
・宗教に関する質問
あなたの信仰している宗教は何ですか、あなたは、神や仏を信じますか など
・支持政党に関する質問
あなたが支持している政党はどこですか、◯◯選挙で投票した政党を教えてください など
・人生観や生活信条に関する質問
信条としている言葉を教えてください、あなたの人生観について教えてください など
・尊敬する人物に関する質問
尊敬する人物がいれば、理由も含めて教えてください、あなたには目標とする人がいますか など
・思想に関する質問
あなたは自分の生き方についてどう考えていますか、「多様性」に対するあなたの考えについて教えてください など
・労働組合や社会運動に関する質問
これまで社会運動に参加したことがありますか、あなたはデモに対してどんな考えを持っていますか など
・購買新聞や雑誌、愛読書に関する質問
よく読む本はどのような内容のものですか、趣味は読書と書いてありますが、どのようなジャンルでどの作家が好きですか など
2-3. 男女雇用機会均等法に抵触する可能性のある事項
・男女雇用機会均等法に抵触する可能性のある質問
出産後も仕事を続ける予定ですか、結婚の予定はありますか など
「採用活動では一般的な質問ではないか」「志望動機に関連するのではないか」と感じる質問もあったのではないでしょうか。
面接のアイスブレークのつもりでした質問が、候補者の能力と適性に基づかない不合理な採用選考を招いてしまった場合、基本的人権を侵害する行為とされます。面接時は、言葉遣いや話し方などはもちろんのこと、質問内容については細心の注意を払って、常に誠実な対応を心がけましょう。
3. 面接を成功させるポイント
面接官は採否の判定を担うとともに、候補者の入社意欲を高め、入社後のミスマッチを回避できるよう、業務や会社のカルチャーなどについて、丁寧に説明する役割も担っています。
その役割を十分に果たすことができなければ、面接を成功させることは難しいでしょう。
3-1. 事前に質問と評価基準を用意する
候補者が自社の求める人物像に合致するか判断するための、質問と評価基準を事前に用意しましょう。企業によっては、面接官全員に共通した質問を用意するケースもあります。
候補者の適性と能力を判断するための質問になっているか、公正な評価をするための質問になっているか、客観的に確認することが大切です。
3-2. 話しやすい雰囲気を作る
候補者が緊張せず、落ち着いて面接に臨むことができるように、和やかな雰囲気を作るため、面接官は相手を思いやった言動を心がけましょう。「圧迫面接」と言われるような、威圧的な振る舞いは候補者を萎縮させる恐れがあります。
冒頭で面接官自身の自己紹介や短時間の雑談を交えたり、集団面接の場合は候補者全員に対して平等に時間を配分したりと、候補者に寄り添った配慮が必要でしょう。
3-3. 候補者に不快な思いをさせないよう注意する
面接官は会社の「顔」として候補者と対面します。採否にかかわらず、良い印象を持ってもらえるように心がけましょう。将来的に、採用に至らなかった候補者が自社の顧客や取引先になる可能性もあります。
候補者に対して敬意を持って丁寧にやりとりすること、身だしなみや言動で悪い印象を与えないこと、してはならない質問をしないことは、最低限注意するべき事柄です。
候補者が緊張せず、落ち着いて面接に臨むことができるように、和やかな雰囲気を作るため、面接官は相手を思いやった言動を心がけましょう。「圧迫面接」と言われるような、威圧的な振る舞いは候補者を萎縮させる恐れがあります。
4. うっかり、タブーな質問をしてしまった場合
面接官としてきちんとした対応を心がけていることを伝えるためにも、できるだけ不適切な質問は避けることが重要ですが、どんなに事前に意識していても「ついうっかり質問してしまう」ケースもあるでしょう。
面接の最中に、候補者から「私は御社の創業者を大変尊敬しております」と言われたので、つい「創業者の本を読みましたか。もし、印象に残った言葉やシーンがあれば、教えてください」と聞いてしまった。愛読書や尊敬する人は聞いてはいけないのに……。
話の流れでつい適切でない質問してしまった場合は「こちらの質問は不適切でした」と訂正し、答える必要がない旨を明確に伝えるようにしましょう。タブーな質問を避け、適切に質問するためには、面接官自身が「何のためにその質問をするのか」という目的を明確にすることが重要。意図を持って、質問するための準備を行うことが必要です。
面接を成功させるためには、質問の目的を意識し、候補者への敬意を忘れずに相手と向き合うことが大切です。
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