人事課題
2020/10/15

終身雇用とは? 歴史背景やメリット、デメリットについて

終身雇用とは? 歴史背景やメリット、デメリットについて

日本の正社員雇用の多くは、倒産などしない限り定年まで雇用するというものが一般的で、簡単に解雇されることのない雇用となっており、これを「終身雇用」と呼びます。

今回の記事では、終身雇用とはどんな制度なのか、歴史背景、メリット・デメリット、社会に合わせて終身雇用がどのように変化してきたのかなど、終身雇用が今後どうなるかについて、現状と併せて解説します。

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1. 終身雇用とは

就寝雇用のイメージ

厚生労働省の調査によると、若年期(22〜24歳)に入社しそのまま同じ企業に勤め続けている大卒の正社員は、約5割(2016年時点)。このことからも日本の終身雇用の傾向はまだまだ続いていると捉えられます。同調査では1995年からのデータをとっており、終身雇用は、長期的には低下傾向です。

参考:我が国の構造問題・雇用慣行等について|平成30年6月 厚生労働省職業安定局

1-1. 終身雇用の法的な位置付け

終身雇用は日本的な“慣行”(ならわし)であって、法令上で定義されているわけではありません。終身雇用であることを示す制度としては、年功序列型の賃金制度・昇進制度、退職金制度、新卒一括採用などが挙げられます。終身雇用とは、そのような制度のもと雇用が続いてきた結果であるといえるでしょう。

労働基準法第16条には「解雇権濫用の法理」が明文化されています。「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています。法的な観点でも、日本の雇用は守られているといえるでしょう。

1-2. 雇用形態を海外と比較してみる

日本の雇用を海外と比較すると、その考え方の違いがわかります。

海外では、ポジションに応じて適格なスキルがある人を雇用する「ジョブ型雇用」が一般的。採用された際に決められた職務範囲から外れることはなく、労働者の専門性によって職務が決まります。「人事として採用されたが、数年後に営業に異動になった」ということは発生しないのです。
給与は職務によって決まるため、より高い収入や待遇を得るためには別の職に就く、つまり転職をする必要がある。そのため欧米型の雇用環境では、キャリアアップ・スキルアップのための転職が自然と行われます。

一方、日本で多く行われているのは「メンバーシップ型雇用」。新卒一括採用ののち、適性を見て職種を割り当てる雇用タイプです。いわゆる「総合職」として採用され、その企業のプロフェッショナルとして育成され、ジョブローテーションで営業や人事、企画など多様な職種を経験します。
同じ企業の中で勤続年数を重ねることで給与や役職がアップするため、転職を経験しない人も多く存在するのが特徴です。

雇用の仕方の違いによって、キャリアアップ・転職への考え方が異なってくることがわかります。

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日本独自の雇用慣行である終身雇用は、そもそもいつ始まり、なぜ続いてきたのでしょうか。ここからは終身雇用制度の歴史と変化についてご紹介していきます。

2. 終身雇用制度の歴史と変化

終身雇用制度の歴史と変化

終身雇用制度の原型ができたのは、大正末期から昭和初期にかけてといわれています。そして第二次世界大戦後、本格的に日本全国に普及しました。

現在では、成果主義や有期雇用の普及、フリーランスなど働き方の多様化が進んでおり、終身雇用の慣行は変化を迎えています。

2-1. 【歴史】終身雇用が生まれたワケ。戦前の日本と労働者の移動

実は戦前の日本では、転職が盛んに行われていました。企業による労働者の解雇も日常的に発生していたといいます。

特に工場で働く熟練工は、給与のより高い職場を求めて転職を繰り返し、優秀な人材の引き抜きも行われました。そこで優秀な人材を引き留めるために企業が考えたのが、さまざまな奨励制度。勤続年数に応じた昇給や積立式の退職金制度、福利厚生の充実などを図った結果、大正末期から昭和初期にかけてブルーカラー層の転職率は高かったものの、ホワイトカラー層の長期雇用化が進みます。

ところが1937年から始まった日中戦争の影響で、労働者の移動はいっそう激しくなりました。働き手である男性が徴兵されることに加え、軍需産業の高まりによって、人手不足が深刻化したのです。そのため、国が労働統制(戦時下の限られた労働力をどう配置し動員するか、国家が管理)を行うようになりました。

戦時中は「労務調整令」によって自由な転職・解雇が禁止されるなど「職場の固定化」や、年1回の定期昇給・退職金支給が半義務化されるなど「賃金統制」が図られていきました。

そのようななかで「国・企業は労働者の生活を保障し、労働者は国・企業のために働く」という価値観・慣行が広まっていったのです。

参考:終身雇用制はいつからあるの?|公文書に見る戦時と戦後 -統治機構の変転- 

2-2. 【歴史】高度経済成長時代に定着し、新たな転換点を迎える終身雇用

終身雇用制度が定着したのは、戦後になってから。戦後は社会が混乱し多くの人が貧困に苦しむなか、人々はまず生活の安定と保障を求めます。年功に応じた定期昇給や退職金の支給制度が一般化し、不当な解雇も規制されました。そうして高度経済成長期に、多くの企業で終身雇用が定着していったのです。

終身雇用制度を形作っている年功序列の昇給制度や退職金制度などは、業績が右肩上がりであれば持続可能性が高いでしょう。一方、業績が横ばい又は悪化傾向のなかでは、従業員を長く雇用し給与を上げ続けることは困難です。

現在は業績に苦しむ大手企業も珍しくなく、転職が一般化しました。成果主義の導入や、働き方の多様化などに合わせて、終身雇用の慣行は変化しつつあります。

2-3. 【変化】終身雇用について経済界のトップの発言

戦後から続いてきた終身雇用制度について、経済界からはどのような見方がされているのでしょうか。

一般社団法人 日本経済団体連合会の中西宏明氏は2019年に「制度疲労を起こしている。終身雇用を前提にすることが限界になっている」と発言。終身雇用を保障できる時代ではなくなってきていることがこの発言からもわかります。
参考:朝日新聞デジタル:「経団連・中西会長「終身雇用は制度疲労」改めて持論展開

同じく2019年に、トヨタ自動車株式会社の豊田章男社長は「なかなか終身雇用を守っていくというのは難しい局面に入ってきたのではないか」と発言しました。現状では、雇用を長く続ける企業にインセンティブがあまりないことも指摘しています。自動車業界のトップも、終身雇用の継続は難しいと認識しているのです。
参考:テレ朝news:「終身雇用守るの難しい」トヨタ社長が“限界”発言

2-4. 【変化】近年の終身雇用に関するデータ

終身雇用は実質的にまだ続いているものの、それに対する認識は大きく変わってきていることが、前出の発言からもわかります。

企業と労働者の終身雇用への認識や実態は、どのように変化してきているのか、各種データから考えてみましょう。

2019年に日本経済新聞が100人の社長を対象に実施したアンケートでは「年功賃金の見直し」を考えている社長が72.2%でした。年功賃金を見直す理由については「優秀な若手や高度な技術者などを処遇できない」が76.9%と最多で、年功賃金による歪みが多くの企業で発生していることがうかがえます。

また、2016年の独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査では、終身雇用を支持する人(終身雇用は「良いことだと思う」「どちらかといえば良いことだと思う」と回答した人)
の割合が87.9%と過去最高に。終身雇用の継続は難しくなる一方、不安定な社会の中では雇用の保障への意識が高まります。企業の現実と労働者の意識は、逆行しているともいえるでしょう。

2019年リクルートワークス研究所が発表した「全国就業実態パネル調査2019」では、これまでの退職回数が調査されており、雇用者全体でみると、1回が17.9%、2回が14.7%、3回が12.1%という結果が出ています。退職経験者の割合(退職回数0回および在学中の人の割合を除いたもの)は66%と、終身雇用は実際に崩壊してきていることがわかります。

【参考】
年功賃金「見直す」72%、人材に危機感 社長アンケート: 日本経済新聞 

記者発表「第 7 回勤労生活に関する調査」結果―スペシャル・トピック「『全員参加型社会』に関する意識」―:労働政策研究・研修機構(JILPT)  

全国就業実態パネル調査2019データ集 :リクルートワークス研究所 

3. 終身雇用に関する論点や観点 

終身雇用制度に関する論点

3-1. 終身雇用のメリット・デメリット

終身雇用は実態として崩れてきていますが、一概に悪いものとはいえません。企業・労働者それぞれにメリット・デメリットがあります。ここからは双方のメリット・デメリットを整理していきます。

まず企業側のメリットとして、長期的な人材育成や人材確保がしやすいことが挙げられます。終身雇用制度のもと新卒一括採用で人材を採用すれば、長期的な人材育成の計画が立てられ、雇用が保障されることで人材確保もしやすいと考えられます。

終身雇用における企業のデメリットとしてまず挙げられるのは、人件費の高騰。また、新卒生え抜き社員で構成される組織のため、人材の多様性に欠ける点もデメリットと捉えられるでしょう。

労働者側は、安定した収入と雇用を得られる保障のメリットが大きいです。一方で、異動や転勤などを伴う大きな変化も企業に委ね、自らの意思でキャリアを選択できないことなどがデメリットとして挙げられます。

3-2. 終身雇用は崩壊する(した)のか?

厚生労働省の資料によると、2016年時点で生え抜き社員(若年期に入社し、そのまま同一企業に勤め続けている人)の割合は大卒正社員の5割程度。高卒正社員では3割程度というデータがあります。減少傾向ではあるものの終身雇用の慣行は続いているといえます。

終身雇用の崩壊に影響を与えている現象としてまず挙げられるのは、経済の低迷。また、優秀な若手人材確保などのために成果主義を導入する企業が増えていることも、終身雇用の崩壊を象徴する流れだと言えるでしょう。

大手企業が一定の年齢以上の社員を対象に早期希望退職者を募集するなど人員削減策を図っていることからも、終身雇用の崩壊が進んでいることがわかります。
 
参考:我が国の構造問題・雇用慣行等について|平成30年6月29日 厚生労働省職業安定局

3-3. 人材育成と終身雇用

「終身雇用のメリット・デメリット」でも述べたように、長期雇用(終身雇用)のメリットは、長期的な視点で人材育成・投資が行いやすい点。

終身雇用が崩壊し労働市場の流動化が進むと、企業が社員に対する教育投資を減らすことになるのではないかという懸念が出てきます。

3-4. 終身雇用は、適切な労働力配置への妨げになる可能性

終身雇用制度のもとでは、人員整理や転職が難しいのがデメリット。終身雇用は、適材適所での労働力配置を妨げることが指摘されており、これは企業・労働者どちらにとってもデメリットだといえるでしょう。

3-5. 企業の「人事権」と終身雇用

日本の正社員雇用の特徴は、無期限雇用であり、ポストも職務も曖昧であることです。企業は労働者のポジション異動などを比較的自由に行うことができ、大きな「人事権」を持っています。「企業が強い人事権を持つこと」と「終身雇用制度」は相性が良く、切っても切れない関係であるといえます。
日本企業では例えば、上位の役職に就いている人が辞めても、課長が部長に、部長が事業部長に、事業部長が役員に……といった形で昇進が行われます。そうなると結果的に平社員のポジションに空席ができますが、そこに新卒入社した社員が収まることで人材の補充が完了します。

欧米企業では、同じようにポストが空席になった場合、社外から人材を探し中途採用するのが一般的です。なぜなら、欧米の雇用契約はポストや職務が限定されて結ばれるもので、本人の同意なしでは異動させられないためです。

ここまで説明したように、新卒一括採用と終身雇用制度はセットで機能する側面があり、新卒一括採用がなくなったり、企業が強い人事権を手放したりしない限り、終身雇用はなくならないとも指摘されています。

4. 終身雇用の今後

終身雇用制度の今後

終身雇用は、いますぐ完全に崩壊するというものではありませんが、今後も雇用の在り方の変化は続いていくでしょう。終身雇用制度の特性の一つとして「誰もが年功序列で昇進できる仕組み」がありましたが、これはなくなっていく、もしくは既にない仕組みといえそうです。

また、株式会社日本総合研究所の山田久氏は「これまでの長期雇用を前提とした日本の在り方と、欧米の流動的な在り方を組み合わせたハイブリッド形式が望ましいと考えている」と発言しており、ハイブリッド型の雇用システムを提唱しています。

長く続いてきた日本型の雇用慣行は、経済の変化や働き方改革などの流れと合わせて、今後も変化を続けていくでしょう。

参考:ハイブリッド型労働などが課題(金融ファクシミリ新聞)

 

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