人事課題
公開日: 2021/05/10  

就業規則の重要性を解説。働き方改革にも対応できる運用のポイントを紹介

就業規則の重要性を解説。働き方改革にも対応できる運用のポイントを紹介

就業規則とは、会社のルールや労働条件などをまとめたものです。一度作ればそれで終わりではなく、法改正や社会情勢の変化に合わせて変更していくことも必要です。特に近年は、働き方改革をはじめ労働法制の改正・施行が相次いでいるため、定期的な見直しが欠かせません。そこで今回は、就業規則の重要性や運用のポイントを紹介します。

1. 就業規則とは

就業規則とは

職場全体のルールブックといえる就業規則。その内容は労働時間や賃金、服務規程など多岐にわたり、従業員にとっても、会社にとっても、非常に大切なものといえます。

2. 就業規則の必要性や意義

就業規則の必要性や意義

就業規則はその内容によって、従業員が気持ちよく働けることもあれば、労使トラブルの元になってしまうこともあります。まずは、就業規則の必要性や意義を確認しましょう。

2-1. 多くの会社に作成義務がある

労働基準法は、常時10人以上を使用する事業者に対し、就業規則の作成、労働基準監督署への届け出を義務づけています。「10人以上」には、正規雇用従業員だけではなく、パートやアルバイトも含みます。そのため、多くの会社に作成義務が生じるのです。またスタートアップなどで10人未満の場合でも、職場の規律を保つためや、将来的なトラブルを避けるためにも、作成することをおすすめします。

2-2. 不備があれば行政指導の恐れも

就業規則に定めれば、どのような内容でも効力を持つわけではありません。例えば、最低賃金を下回る給料といった違法な場合はもちろん、合理性を欠く内容も認められず、行政指導となります。労働裁判に至ったケースもあるので、不備がないようにきちんと確認することが大事です。

2-3. 労使トラブルを予防できる

就業規則を定めておくことにより、会社側が従業員に不当な状態の労働をさせたり、処遇したりすることを防ぐことができます。また、従業員が不正を働いたり、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントを行ったりした場合の対応を定めておくことで、問題がある従業員を懲罰の対象とすることもできます。就業規則は労使トラブルの予防につながり、会社を守ることになる場合もあれば、従業員を守ることになる場合もあるのです。

2-4. 従業員が気持ちよく働けるようになる

ルールがない状態だと、従業員は何かあった際によりどころにできるものがなく、不安を抱きながら日々の仕事をすることもあるでしょう。上司が代わった場合に、職場のルールが変わる恐れも拭えません。就業規則があることで、何か起こっても適切に対処して会社の秩序を保つことができ、従業員は安心して気持ちよく働けるようになります。

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3. 就業規則制定の流れ

就業規則制定の流れ

3-1. 作成する

まずは作成です。社内の人事部や総務部などが作成してもいいですし、社会保険労務士や弁護士など人事労務の専門家に依頼する方法もあります。自社で作成する場合、厚生労働省がホームページで「モデル就業規則」を公開していますので、参考にすると作業を進めやすいでしょう(「モデル就業規則」は、この記事の最後に紹介します)。

3-2. 社内に周知する

作成後は社内に周知し、従業員がその内容をいつでも確認できる状態にしておくことが労働基準法で定められています。なお、周知しなければ無効になります。

3-3. 労働基準監督署に届け出る

就業規則は、管轄地域の労働基準監督署に届け出る必要があります。届け出を怠ると、労働基準法違反として罰則が適用されます。また内容に不備があれば、先にも触れたように行政指導となる場合もあります。

4. 就業規則に必ず記載すべき項目

就業規則に必ず記載すべき項目

ここからは、就業規則に記載する内容について説明していきます。まずは、どの事業者も必ず盛り込まなくてはならない項目です。「絶対的必要記載事項」と呼ばれており、労働時間、賃金、退職に関する内容です。

4-1. 労働時間

各事業者は、法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)の範囲内で、所定労働時間を定めることができます。就業規則には、始業時刻と終業時刻、休憩時間を明記しましょう。フレックスタイムなどの変形労働時間制を導入している場合は、その内容や対象者なども記載してください。

4-2. 賃金について

賃金に関して、基本給や手当などの規定や計算方法、支払方法、支払日などを明記する必要があります。また昇給の時期、方法なども記載しなければなりません。財形貯蓄や組合費などの制度がある場合は、それも盛り込むことになります。賃金に関しては記載しなければならない項目が多いうえ、従業員の関心が高い部分なので、より丁寧に記載する必要があります。

4-3. 退職について

退職には、定年退職や雇用期間の満了、自己都合、休職期間満了など多くのケースがあります。自己都合であれば退職を申し出る時期などの記載が必要です。また解雇についても、従業員が納得できるような事由をきちんと示しておくことが求められます。

5. 社内制度によっては就業規則に記載しなければならない項目

社内制度によっては就業規則に記載しなければならない項目

次に、「相対的必要記載事項」と呼ばれる、会社の制度によっては就業規則に書く必要がある主な項目を紹介します。

5-1. 賞与や退職手当

臨時的に支払われる賞与、退職手当などがある場合、計算方法や支払基準などの詳細を明記する必要が生じます。

5-2. 安全衛生に関する事項

災害が発生した際の指揮系統、定期健康診断実施や受動喫煙防止など労働安全衛生に関する事項も、事業所によっては盛り込む必要があります。特に災害時の対応は近年、重要度や関心が高まっていますので、会社として精査したうえで記載した方がいいでしょう。

5-3. 災害時の補償

業務災害によって従業員が傷病などをした場合、使用者は補償をしなければなりません。その内容や、補償する期間なども定めておくことが大切です。

5-4. 表彰制度

多くの企業が、顕著な業績を上げた従業員を表彰しています。表彰制度は実施も、就業規則への記載も、義務づけられているものではありませんが、独自の表彰制度を設けて周知することで、従業員のモチベーションアップや帰属意識の向上が見込めます。

6. 就業規則への記載が任意の項目

就業規則への記載が任意の項目

このほか、「任意の記載事項」と呼ばれ、就業規則への記載が任意である項目もあります。主な項目を紹介します。

6-1. 社訓や会社の理念

社訓や会社の理念を記載することで、会社として目指すところを明確にできます。従業員への周知機会を増やすため、盛り込んでおくのもいいでしょう。

6-2. 人事異動に関する内容

人事異動には、昇進、降格、転勤、出向や転籍など、従業員が歓迎するものもあれば、難色を示される場合があるものもあります。企業規模が大きくなればなるほど、人事異動は不可欠です。従業員の異動をスムーズに実施できるようにするため、就業規則であらかじめ規定しておくことをおすすめします。

6-3. 服務規律

服務規律は、従業員として最低限守るべきルールで、違反した場合は処罰の対象となります。代表的なものに

  • 出退勤時刻の遵守
  • 備品や機械の取り扱い注意
  • 備品や機械の持ち出し禁止
  • 職務を通じて知り得た秘密の漏洩禁止
  • セクシャルハラスメント、パワーハラスメントの禁止

などがあります。「社会人として常識」と思われる内容でも、トラブルに備えるためにも明文化しておくことが望ましいです。

6-4. 職務上の発明発見の取り扱いについて

職務上の研究開発で、歴史的な大発見、特許を取得するような発明をした場合、その取り扱いや対価などはあらかじめ就業規則で定めておくことをおすすめします。過去には、対価を巡って元従業員と会社で裁判に至った事例もあるので、労使で話し合っておくことも大切です。

7. 就業規則は時代や法に合わせた対応が必要

就業規則は時代や法に合わせた対応が必要

就業規則は、時代の流れや法律に合わせて内容を修正していく必要があります。特に近年は、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」をはじめ、労働法の改正・施行が相次いでいます(年表参照)。その内容や目的は主に、労働者の権利の保護、より働きやすい環境の整備なので、就業規則への反映が必要な項目も少なくありません。そのため、例えば1年に1回など、定期的に見直すといいでしょう。顧問弁護士などに相談するのもおすすめです。

施行年月 法律名 就業規則で
見直すべき主な項目
2015年4月 改正パート労働法
(2020年4月に「パートタイム・有期雇用労働法」に改正され施行)
労働時間、賃金
2019年4月から段階的に 働き方改革を推進するための
関係法律の整備に関する法律
労働時間、賃金、休暇、副業の可否
2021年1月 改正育児・介護休業法 休暇、休業、労働時間

参考:岡田良則著『就業規則を作るならこの1冊』自由国民社刊

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8. 就業規則に反映すべき「働き方改革」の項目

就業規則に反映すべき「働き方改革」の項目

近年、施行・改正された労働法の中で、最も重視すべきが働き方改革関連法です。内容は多岐にわたり、2024年4月までに段階的に各項目が施行され、企業はそれぞれに対応する必要があります。主な内容を紹介します。

施行日 法律名 就業規則で
見直すべき主な項目
2019年4月 <大企業>時間外労働の上限規制強化 労働時間
フレックスタイム制の拡充 労働時間
年次有給休暇の5日以上取得
(年10日以上付与された労働者が対象)
休暇
産業医・産業保健機能の強化 労働安全衛生
2019年4月 <中小企業>時間外労働の上限規制強化 労働時間
<大企業>同一労働同一賃金 賃金
2021年4月 <中小企業>同一労働同一賃金 賃金
2023年4月 <中小企業>割増賃金率引き上げ猶予措置の廃止 賃金
2024年4月 時間外労働の上限規制強化 労働時間

参考:岡田良則著『就業規則を作るならこの1冊』自由国民社刊

8-1. 同一労働同一賃金

従来は、たとえ同じ労働をしていても、正規雇用従業員と非正規雇用従業員では賃金に差をつけている事業者が少なくありませんでした。しかし、2021年4月からは全事業者で同一労働同一賃金が義務づけられました。就業規則では、正規雇用従業員と非正規雇用従業員などの勤務形態ごとに、就業時間や賃金、賞与、昇給などを定めているため、賃金などを改定する際には就業規則の改定も必要となります。

8-2. 時間外労働の制限

労働基準法では原則として、法定労働時間を超える勤務、法定休日の労働を課してはならないとしています。ただ、日本企業は伝統的に、長時間労働が常態化してきたのが現実です。バブル期には、「24時間タタカエマスカ」というテレビCMのフレーズが新語・流行語大賞にノミネートされました。

働き方改革では長時間労働を抑制するため、時間外労働の規制を段階的に強化しています。この流れに合わせ、就業規則の労働時間に関する項目全般を見直す必要があるでしょう。

8-3. 中小企業への割増賃金率引き上げ猶予措置の廃止

事業者は、法定の労働時間を超えたり、休日や深夜に働いたりした従業員に対し、割増賃金を払わなければなりません。その割合は以下の通りです。

  • 法定時間労働:25%以上
  • 法定休日労働:35%以上
  • 深夜労働:25%以上

時間外労働については従来、上記「法廷時間労働」の「25%以上」でしたが、2010年の労働基準法改正によって月60時間以上の場合は「50%以上」となりました。ただこれは、中小企業は猶予されていましたが、働き方改革によって猶予は2023年3月末日に終了することが決まりました。そのため対象企業は、賃金改定や就業規則の改定が求められます。

参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「働き方改革関連法のあらまし (改正労働基準法編)」

9. モデル就業規則

モデル就業規則

最後に、厚生労働省が公開している「モデル就業規則」を紹介します。以下の14章にわたり、68条で構成されています。自社の就業規則を作成・更新する際の参考にしてみてください。

第1章 総則
第2章 採用、異動等
第3章 服務規律
第4章 労働時間、休憩及び休日
第5章 休暇等
第6章 賃金
第7章 定年、退職及び解雇
第8章 退職金
第9章 無期労働契約への転換
第10章 安全衛生及び災害補償
第11章 職業訓練
第12章 表彰及び制裁
第13章 公益通報者保護
第14章 副業・兼業

参考:厚生労働省「モデル就業規則について」

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