人事課題
公開日: 2021/05/13  

レジリエンスが求められている理由とは? 困難な状況から立ち直る力「レジリエンス」の高め方

レジリエンスが求められている理由とは? 困難な状況から立ち直る力「レジリエンス」の高め方

人は困難にぶつかったとき、逃げたくなることもあるでしょう。また、企業や組織においても、技術の進化や人々の価値観・ニーズの変化とともに、大きな危機・困難を迎えることがあります。

そのような状況に陥ったとき、そこから立ち直る力を指す「レジリエンス」が昨今注目されています。

今回の記事では、レジリエンスの意味、レジリエンスが高い社員や企業の特徴、さらにはレジリエンスを高めるために有効な方法についても詳しく解説します。

1. レジリエンスとは

レジリエンスとは

そもそもレジリエンスとはどのような意味をもつ言葉なのでしょうか。レジリエンスの定義について紹介するとともに、混同されがちな言葉との違いについても解説します。

1-1. レジリエンスの意味

「レジリエンス(resilience)」は、一般的に「復元力、回復力、弾力」などと訳される言葉で、困難な状況や危機的な状況、ストレスなどから立ち直る力を指す言葉です。組織における人材育成では、心理的な強さや回復力を意味する言葉として使われますが、これ以外にも災害やテロなどの有事から復旧・復興する力といった意味も含まれます。

本記事では、人材育成の観点と、企業や組織の持続的成長という観点の双方から、レジリエンスについて詳しく解説していきます。

1-2. メンタルヘルスとの違い

心理的な問題を扱うという意味では「メンタルヘルス」と「レジリエンス」は混同されやすい言葉です。しかし、「心の健康」を意味するメンタルヘルスは、精神医学的な観点から心理的な負担を軽減したり、精神疾患にならないよう予防したりするものであるのに対し、レジリエンスは困難に直面したときに、本人の力でいかに回復するか、または適応できるかを意味する言葉として使われます。

一方で、レジリエンスとメンタルヘルスは全く無関係というものでもありません。レジリエンスを高めるためのトレーニングやさまざまな施策を行うことによって、結果的にメンタルヘルスも向上するというエビデンスもあることから、両者には相関性があると考えられます。

1-3. ハーディネスとの違い

ハーディネスとは、ストレスに直面したときにストレスを跳ね返す力を指します。「精神的な強さ」という意味でもたびたび使われる言葉です。これに対してレジリエンスは、ストレスを受けた後に回復する力を表します。

ハーディネスはメンタル的な防御力、レジリエンスは回復力のような意味をもち、両者は異なる概念であることが分かります。

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1-4. レジリエンスが注目を集めたきっかけ

レジリエンスという言葉が注目されるようになったのは、世界中の超一流の機関投資家や、世界経済を文字通り支え、牽引する先進諸国の政府首脳が集う2013年の「世界経済フォーラム」(通称「ダボス会議」)がきっかけです。

メインテーマは「レジリエント・ダイナミズム」。「レジリエンス」の形容詞である「レジリエント」という言葉は、「強靭な」という意味であり、言い換えれば、「しなやかで、強い」を意味します。 一方で、ダイナミズムとは、力強さや活力という意味であり、このときのダボス会議では、「経済におけるしなやかな力強さ」が包括的に議論されました。

この背景には、災害やテロ、感染症など実にさまざまな「危機」に晒されているなかで、そのような「危機」に満たされた時代のなかで「成長」し続けるためには、どんな危機にも負けないレジリエントで「しなやかな活力」が必要不可欠なのだ、という共通認識があったためです。

さらにダボス会議では、国際競争力が強いアメリカやドイツ、イギリスなどの先進国はレジリエンスも高い傾向があることが報告されました。しかし、日本は経済的な競争力こそ高いものの、他国に比べてレジリエンスは著しく低いことが指摘されたのです。これをきっかけに、レジリエンスに注目する企業が増えていきました。

現在では、企業や組織としてレジリエンスを高めることはもちろん、そこで働く社員一人一人のレジリエンスを高めていくことも企業にとって重要であると考えられています。

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2. レジリエンスが企業に求められている理由

レジリエンスが企業に求められている理由

レジリエンスが企業に求められている背景には、どのような理由があるのでしょうか。今回は3つのポイントを中心に解説します。

2-1. 企業が環境の変化に適応するため

顧客ニーズの多様化やテクノロジーの進化など、ビジネス業界をとりまく状況は激変しており、今後さらに変化のスピードは加速していくと考えられます。未来を予測することが困難な現代においては、「現状を維持するための努力」ではなく、「変化によって受けるダメージを吸収し、成長につなげられるような努力」が必要でしょう。

これまで成功していたビジネスモデルが必ずしもこの先続いていくとは限らないため、企業はつねに変化する環境に合わせて対応していくことが求められます。短期的な目標や計画が達成できなかったとしても、最終的な目的を達成するためには、逆境や困難を克服することを繰り返し、持続的な成長につなげていかなくてはなりません。

レジリエンスの高い企業や組織は、たとえ不利な状況や困難な課題に直面しても、それを踏み台にして、飛躍の機会にすることができるでしょう。環境の変化に対応しながら成果を出していくためには、レジリエンスを高めることが不可欠といえます。

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2-2. 社員が自身のストレスとうまく付き合うため

企業や組織のなかでさまざまな人と一緒になって働く以上、価値観や考えの違いからストレスを感じることもあります。

実際に、厚生労働省が2018年に調査した「平成 30 年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」では、「現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある」と回答した労働者の割合は 58.0%にものぼることが分かりました。

2013年には52.3%、2015年には55.7%であったことと比較すると、職場でストレスを感じる人の割合が高い傾向にあることが分かります。ストレスや不安が大きいと、仕事に対する集中力が低下し、生産性の低下につながることも考えられるでしょう。

レジリエンスが高く、ストレスとうまく付き合っていける社員は、逆境のなかにあってもポジティブに物事を考えることができ、達成が困難な目標に対しても諦めることなく成果を出そうとする特徴があります。また、ストレスを必ずしもネガティブなものと考えて避けようとするのではなく、「自身の成長に必要なものである」というように、前向きに捉えることで、仕事のパフォーマンスが向上するという研究結果も報告されています。

対人ストレスや仕事上のストレスがあまりにも大きいと、社員の退職につながるおそれもあるでしょう。しかし、組織のなかで働く以上、ストレスを完全になくすことは極めて難しいものです。そのため、社員がストレスを受け入れ、うまく付き合っていくために、レジリエンスの向上が重要といえます。

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2-3. ダイバーシティ・マネジメントに対応するため

顧客ニーズの多様化に対応するために、ダイバーシティ経営に取り組む企業が増えています。多様な人材に活躍してもらうことは、多様なニーズに対応したビジネスモデルを実現するための第一歩となるためです。

異なる価値観や考え方の人材を受け入れ、同じチームとしてまとめ上げていくためにはダイバーシティに対応したマネジメントも不可欠です。しかし、自分と異なる考え方や価値観をもつ社員と一緒に働き、成果を出すことは簡単ではなく、時に強いストレスを感じることもあるでしょう。自分の考えを押し通すのではなく、他者を受け入れ、互いに尊重し合う組織を実現するためには、社員のレジリエンスを高めることが大前提といえます。

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3. レジリエンスが高い人材 10の特徴

レジリエンスが高い人材 10の特徴

レジリエンスの高さは個人がもともともっている考え方や価値観、性格によっても異なります。では、レジリエンスが高い人材にはどのような特徴・傾向があるのでしょうか。研究では10の特徴が明らかになっています。

  1. 楽観主義
  2. 利他主義
  3. 確固とした道徳的基盤をもつ
  4. 信仰心やスピリチュアリティを持つ
  5. ユーモアがある
  6. 自分の役割のモデルを持っている
  7. 他人の社会的なサポートを受けられる環境を持つ
  8. 恐怖を直視できる
  9. 使命感が強い
  10. メンタルトレーニングを受けている

引用:脳科学が教える、逆境で心折れる人と平常心を保てる人の決定的な違いとは|PRESIDENT WOMAN Online

4. レジリエンスが高い組織の特徴

レジリエンスが高い組織の特徴

個人だけではなく会社や組織単位で見たとき、「レジリエンスの高い組織」にはどのような特徴があるのでしょうか。

4-1. 失敗を許容し何度も挑戦できる風土がある

ビジネスモデルの変革や新規事業の創出など、新しいことに挑戦する際には失敗がつきものです。むしろ成功する確率のほうが低く、長期的な目線で考え、継続的な取り組みを行っていくことが求められます。

失敗したからといって責任者や担当者を責める風土があると、組織全体が萎縮してしまい、新たなことに挑戦できなくなります。レジリエンスの高い組織ほど、失敗を許容しつつも、改善点を見つけ出し何度も挑戦できる風土が醸成されている傾向が見られます。

4-2. 所属や役職を超えたコミュニケーションが活発

互いを認め合い、価値観や考えが異なる人の意見も積極的に受け入れるためには、できるだけ多くの人とのコミュニケーションが欠かせません。同じ部署やチーム内のメンバーとのコミュニケーションはもちろん重要ですが、それ以外にも部署や役職を問わずあらゆる人との交流が活発な企業はレジリエンスが高い傾向にあります。また、社内の人間だけではなく、取引先や顧客などの関係先とのコミュニケーション・交流を活発に行っている企業もレジリエンスが高い傾向が見られます。

4-3. 問題が起こったときに組織全体で助け合える体制がある

社員同士の横のつながりができていれば、困難や問題に直面したとき、社内の関係部署にコンタクトを取ることで、早期解決に向けたアクションが取りやすくなります。また、現場の担当者レベルだけではなく、管理職やリーダー同士が連携し、部署の垣根を越えて一丸となり問題解決に向けて迅速に対処できる体制が構築されている企業も、レジリエンスが高い傾向にあります。

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5. 個人がレジリエンスを高める方法 10項目

個人がレジリエンスを高める方法

社員一人一人がレジリエンスを高めるには、どのようにしたらよいのでしょうか。米国心理学会は、レジリエンスを高める方法として以下の10項目を挙げています。

  1. 家族や友人・他人と良い関係をつくること
  2. 克服できない問題と捉えてしまわないこと
  3. 変化を生活上での一部分としてきちんと受け入れること
  4. 何かしらの目標に向かって進むこと
  5. (流されず)断固とした行動を取ること
  6. 自己発見のための機会を探すこと
  7. 自分に対する肯定的な見方(自己効力感)をもつこと
  8. 物事の捉え方についての展望をもつこと
  9. 希望に満ちた見方をもつこと
  10. 自分自身を大切にすること

参照:脳科学が教える、逆境で心折れる人と平常心を保てる人の決定的な違いとは|PRESIDENT WOMAN Online

6. 組織のレジリエンスを高める方法

組織のレジリエンスを高める方法

一人一人がレジリエンスを高めることも重要ですが、組織である以上、レジリエンスを高めやすい「風土づくり」も大切です。ここでは、組織のレジリエンスを高めるうえで有効な4つのポイントについて詳しく解説します。

6-1. ABCDE理論を導入する

ネガティブ思考を改善する方法として「ABCDE理論」があります。これは発生した出来事や事象に対して社員がどう感じたのかを整理し、ポジティブな考え方に置き換えるための手法です。

A=Activating Event(発生した出来事・事象を振り返る)
B=Belief(どう受け止め、どう感じたのかを整理する)
 RB=Rational Belief(合理的な思考)
 IB=Irrational Belief(非合理的な思考)
C=Consequence(結果)
D=Dispute(IBに対する反論)
E=Effect(効果・影響)

上記のプロセスにおいて特に重要なのが「Belief=受け止め方」です。発生した事象に対する受け止め方や考え方として、合理的でポジティブな思考と、非合理的でネガティブな思考が存在します。社員によっては非合理的でネガティブな思考に偏りがちなケースも多いでしょう。そこで、レジリエンスを高めるためには、非合理的でネガティブな思考を修正し、合理的でポジティブな思考に置き換えるために「Dispute=IB(非合理的な思考)に対する反論」を行います。

たとえば「顧客から接客態度に関するもっともな苦情をいただいた」という事象が発生した場合、苦情を真摯に受け止め、「自身が成長するチャンスだ」と捉える社員もいれば、「言いがかりをつけられた」と捉える社員もいるでしょう。このとき、前者は「RB(合理的な思考)」、後者は「IB(非合理的な思考)」と捉えることができます。

もし、後者のように考える社員がいた場合、上司やマネージャーは「本当に社員側に一切の非がないか」を振り返って考えさせることが重要です。これにより、苦情は自身の成長のチャンスになりうると社員に気付かせることにつながります。

苦情を受けるということは、社員にとっては自分を否定された気持ちになるものです。また、苦情が原因で自身の評価が悪くなると考える社員もいるでしょう。最悪の場合、「自分はこの仕事に向いていないのではないか」と考え、退職につながるリスクもあります。しかし、上司やマネージャーは社員を否定するのではなく、今以上に高いレベルの仕事につなげるためのチャンスであることを理解させ、そのうえで具体的な改善策を一緒に考える必要があります。

上記の例のように、ネガティブな思考に対する反論によって考え方や受け止め方を変えることにより、生み出される結果が変わってくることを社員に理解させるのがABCDE理論です。社員が仕事で失敗したときの対処はもちろんですが、社内でレジリエンス研修を実施する際にも、ABCDE理論を取り入れることを検討するとよいでしょう。

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6-2. 小さな成功体験を積み重ねる

部署やチームのメンバーに対して仕事を割り当てる場合、経験やスキルに応じて現実的な目標を設定することを心がけましょう。たとえ小さな目標であったとしても、成功体験を積み重ねていくことで自己肯定感が得られ、自信につながります。仕事に対する自信が身につくと、たとえ小さな失敗を犯したとしても早急に立ち直ることができ、次に取るべき行動に移しやすくなります。

レジリエンスを高めるために不可欠な自信や自尊心を身につけるうえで、小さな成功体験の積み重ねは極めて重要な要素といえるのです。

6-3. 成功事例を共有する

適切な仕事を割り当てたとしても、必ずしも目標を達成でき成功体験が得られるとは限らないものです。そのような場合、仕事の進め方や方法が誤っていたり、効率的ではなかったりするケースが少なくありません。

そこで、社内や同じチーム内で成功した事例を共有してみましょう。どのような行動を起こせば効果が上がるのかが具体的に分かり、成功への道筋が見えてきます。このような方法は「代理体験」ともよばれ、自信や自己肯定感を身につけるうえで有効な方法の一つとされています。

一度でも成功した体験を得られると、困難な状況に陥ったとしても、過去に乗り越えてきた経験が糧となり成長の原動力とすることができます。

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6-4. 言葉に出して褒める

他人から認めてもらうことで自己肯定感が増し、自信につながることも多いものです。わずかなことでもマネージャーはメンバーに対して言葉に出して褒めることを心がけましょう。特に新入社員や新たな部署に配属されて間もない社員は、すぐに目に見える成果を出すことが難しいものです。そこで、社員の仕事への取り組みや姿勢を評価することで、早いうちからレジリエンスを高めていくことが求められます。

また、言葉に出して褒めることはメンバーとの信頼関係の構築にもつながります。日頃から部下と上司の信頼関係が構築できていれば、万が一部下が仕事上のミスや失敗を犯した場合でも的確なフォローができるため、部署やチームのメンバーはミスを恐れることなく新たな事業や課題解決に挑戦できるでしょう。

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7. 激変する環境下で、未来を切り開くために不可欠なレジリエンス

激変する環境下で、未来を切り開くために不可欠なレジリエンス

顧客ニーズの変化やテクノロジーの進化によって、さまざまな業種においてビジネスモデルの変革が求められています。たとえ困難な状況にあってもビジネスの成功に向けて行動しなければなりません。激変の時代において、レジリエンスは企業の存続や存在価値に直結してくるのではないでしょうか。

企業や組織全体のレジリエンスを向上させるためには、そこで働く社員一人一人のレジリエンスを高めることが第一歩です。ビジネスだけでなく、家庭や友人関係などさまざまなシーンでその効力を発揮するレジリエンス。ぜひ、社員のレジリエンスを向上させる取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。

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