人事課題
公開日: 2021/06/17  

アサーションを身につけることのメリットとは? 企業が実践できるトレーニング方法も紹介

アサーションを身につけることのメリットとは? 企業が実践できるトレーニング方法も紹介

組織や社員の生産性を向上させるためには、社員同士のコミュニケーションを効率化し、コミュニケーションの質を上げていかなければなりません。しかし、価値観や考え方が異なる社員同士では、コミュニケーションがうまくとれないこともあります。そのような場合、アサーションと呼ばれるコミュニケーション方法を取り入れることで、良好なコミュニケーションを実現し、社内コミュニケーションの活性化やハラスメントの防止にもつながる効果が期待できます。

今回の記事では、アサーションとは何かを紹介するとともに、企業がアサーションを取り入れるメリット、社員にアサーションスキルを身につけてもらうためのトレーニング方法も紹介します。

1. アサーションとは

アサーションとは

アサーションとは、「人は誰でも自分の意思や要求を表明する権利がある」という立場に基づいた自己表現のことを指します。
アサーションを理解するうえで重要なのが、コミュニケーションにおける自己表現のタイプの違いです。他者とのコミュニケーションにおける自己表現には、「アグレッシブ」「ノン・アサーティブ」「アサーティブ」の3種類があるといわれています。これらの違いについて詳しく解説しましょう。

1.アグレッシブ(攻撃的)

アグレッシブとは、攻撃的で自分中心のコミュニケーションタイプです。
他者の意見や言い分を聞こうとせず、一方的に自分の意見を押し通すのが典型的な例といえるでしょう。相手に対して高圧的な態度で接することはもちろん、嫌味をいったり相手のことを無視したりといったこともアグレッシブタイプに含まれます。
また、相手に対して高圧的な態度を示さず、一見穏やかに見える自己表現であっても、自分の意見を押し通すために相手を操作するようなコミュニケーションをとる場合もアグレッシブと見なされます。

自己表現を大切にし、明確に意思表示できる点はアグレッシブタイプの良いところともいえますが、相手の表現を大切にしないため、周囲の人との間に軋轢が生じることも多いといえます。

2.ノン・アサーティブ(非主張的)

アグレッシブとは対照的なコミュニケーションタイプがノン・アサーティブです。
相手の心情を気にしたり、揉め事を起こさないように配慮したりするあまり、自分自身の感情を表現できず押し殺してしまったり、十分に自己表現できなかったりするのがノン・アサーティブタイプの特徴といえます。
ノン・アサーティブタイプに該当するのは、必ずしも内気で寡黙な人とは限りません。表面上は明るくコミュニケーションが得意そうに見えても、本心を決して見せない人もおり、このようなタイプもノン・アサーティブに該当します。

ノン・アサーティブタイプの人は、つねに自分を押し殺している状況から、職場における対人関係に悩みストレスを感じてしまうことも多いです。業務においては、「仕事で困っているときに相談できる相手がいない」といった悩みを一人で抱え込んでしまう場合があります。

3.アサーティブ

アグレッシブとノン・アサーティブの特性をバランス良く持ち合わせているのがアサーティブです。
自分自身の意見を表現しつつも、相手の表現も尊重できるのがアサーティブタイプの特徴といえます。
たとえば、自分とは異なる意見をもつ人がいた場合でも、自分の意見を押し通さず、かといって、相手に合わせることなく、対話を重ねてお互いが納得できる結論に導くのがアサーティブタイプです。このとき、仮に自身の考えや希望が通らなかったとしても、導き出した結論に責任をもち、納得することができるのもアサーティブタイプの大きな特徴です。

アサーティブタイプは、社員同士で意見が対立した場合においても、お互いを尊重し合いながら建設的な議論ができます。そのため、多様な意見や価値観を共有することができ、社員同士の相互理解が深まります。

なお、「アサーション」と「アサーティブ(形容詞)」は同じ意味を表しますが、以下、本記事では心理学において用いられる「アサーション」と表記します。

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1-1. アサーションの歴史

アサーションの考え方が登場したのは1950年代のアメリカで、心理療法のひとつとして生まれました。主に対人関係に悩む人に対し、対人不安を取り除くために「主張訓練法」が開発され、これがアサーションの始まりとされています。
その後、1950年代後半から60年代にかけて、アメリカでは人種・性別・民族などに対する差別撤廃の運動が高まったこともあり、正当な自己主張を実現するための考え方としてアサーションが広く注目されるようになりました。
1980年代には日本にもアサーションが伝わり、1990年代に入るとアサーション関連の書籍も数多く翻訳されました。現在では、アサーションを身につけるための「アサーション・トレーニング」が、教育・看護・企業研修などの現場を中心に取り入れられています。

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1-2. アサーションが注目される理由

アサーションが注目されている背景のひとつとしては、社会において多様性を尊重する姿勢が求められていることが挙げられます。企業が製品やサービスを開発するにあたっては、さまざまな価値観や考え方をもった消費者の意見を反映することが必要です。そのためにも、異なる考え方や価値観をもっている他者を排除するのではなく、受け入れることが求められているのです。

また、企業において多様性を尊重するには、社員同士が対等にコミュニケーションを図り、相手を尊重し合える環境を構築しなければなりません。このような環境を構築するためには、社員一人一人が適切な自己表現のスキルを身につける必要があることから、アサーションが注目されていると考えられます。

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2. 企業におけるアサーションのメリット

企業におけるアサーションのメリット

社員がアサーションスキルを身につけることによって、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。4つのポイントに分けて紹介します。

2-1. 社内コミュニケーションが活性化される

アサーションスキルが身についていない社員は、考え方や価値観が異なる他の社員との間に距離ができ、コミュニケーションの量が減ってしまったり、コミュニケーションの際に齟齬や軋轢が生じたりすることがあります。また、「批判や誤解されたことに対して感情的になってしまい、適切に対応できない」、「上司や同僚に対して助けを求められない」、「謝るタイミングを逃してしまい、人間関係が気まずくなってしまった」など、業務におけるコミュニケーションの課題が、生産性に影響を及ぼす可能性もあります。

社員にアサーションスキルが身についていれば、他者と異なる意見を述べるときや、批判や誤解に対して適切な自己表現ができます。その結果、立場や考え方、価値観が異なる人に対しても、量も質も維持したコミュニケーションが可能となります。また、他人に対して過度に高いプライドを持たないようになるため、必要な援助を他者に求めることや、謝るべきシーンにおいては速やかに謝ることができるなど、自己表現と相手を尊重するバランスのとれたコミュニケーションを通じて、社内コミュニケーションが活性化されます。
積極的な情報共有が実現されると、連絡漏れや連携ミスがなくなり、業務効率化や生産性の向上が期待できるでしょう。また、社員がもっている多様なアイデアや知見を積極的に共有することで、イノベーションの創出などにもつながっていきます。

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2-2. 社員のストレス減少につながる

たとえば、ノン・アサーティブタイプの社員が他の社員とコミュニケーションをとる場合、「自分の意見を聞き入れてくれない」、「意見があるのに主張しづらい」と感じることもあるでしょう。また、アグレッシブタイプの社員は他の社員に対して「何を言いたいのか分かりづらい」とストレスを感じることもあります。

社員がアサーションの考え方を身につけることにより、上記で挙げたような対人関係やコミュニケーションにおけるストレスを抱える社員が減ると考えられます。メンタルヘルス不調への対策や、社員にとって働きやすい職場環境の構築につながることから、社員の会社に対する満足度(従業員エンゲージメント)の向上や離職防止も期待できるでしょう。

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2-3. 取引先や顧客との対等な立場を維持できる

取引先や顧客と直接かかわる立場の場合、納期や価格などに関して厳しい条件を求められた際に、「NO」といえないケースもあるかもしれません。要望に対して「NO」と言えたとしても、相手への伝え方次第では今後の取引や関係性に悪影響を及ぼす可能性も考えられるでしょう。

社員がアサーションスキルを身につけることで、取引先や顧客と対等な立場でコミュニケーションができ、要望を適切に断ったり、お互いの条件を譲歩したりすることが期待できます。自社の都合だけでなく、相手の状況に理解を示したうえで対案を提示できるため、取引先や顧客との良好な関係を維持することにつながります。

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2-4. ハラスメント防止に役立つ

上司から部下へ、または先輩社員から後輩社員に対して業務上の指導を行う場合、伝え方を誤るとパワー・ハラスメントと捉えられることもあります。また、明らかなパワー・ハラスメントではなくても、相手を尊重する姿勢がなければ、指導を受ける立場の社員が不快に感じる可能性が高いでしょう。
指導を行う立場である上司や先輩社員にアサーションスキルを身につけてもらい、相手を尊重しながらコミュニケーションを図ることで、ハラスメントを未然に防止できます。

また、指導を受ける立場の社員にとっても、アサーションスキルを身につけることは有効です。上司や先輩社員からの指導内容に納得できなかったり、疑問を抱いたりした場合でも、アサーションスキルが身についていれば感情的にならずに落ち着いて意見を伝えることができます。

相手を尊重しながら自分の本音を伝えることは難しいものです。しかし、多くの社員にアサーションスキルが身についていれば、お互いを尊重し合うことで信頼関係が生まれ、ハラスメントのない職場の実現につながります。

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3. アサーションを身につけるトレーニング方法

アサーションを身につけるトレーニング方法

社員にアサーションスキルを身につけてもらうためには、どのようなトレーニングを推奨すればよいのでしょうか。今回は効果的な3つのトレーニング方法を解説します。

3-1. 「I(アイ)メッセージ」による表現

「I(アイ)メッセージ」とは、自分自身を主語とした表現方法です。
たとえば、相手の意見が間違っていると感じた場合、相手に対して「(あなたの考えは)間違っています」と伝えるのは、主語を「あなた(You)」とする「You(ユー)メッセージ」と呼ばれます。それに対して、「私は○○と考えます」と伝えるのが「I(アイ)メッセージ」です。

「あなたは間違っている」という表現で相手を否定するのではなく、「自分はこう考える」と伝えることで、お互いに意見は違っていても同じ立場として、建設的な合意形成を行うことにつながります。

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3-2. 「DESC法」によるコミュニケーション

「DESC(ディーイーエスシー)法」とは、他者に依頼するときや、いいにくいことを伝えるときに、率直かつポジティブに自分の気持ちを伝えるために活用できるコミュニケーション方法です。
「Describe(客観的な状況の説明)」「Explain(自分の気持ちの説明)」「Specify(具体的な提案)」「Choose(代案の提示・選択)」の4つの要素に分けて伝えます。
たとえば「業務効率化のために、上司や部署内のメンバーに業務フロー改善を提案したい」場合、DESC法を用いると以下のようなコミュニケーションが考えられます。

項目 コミュニケーションの例
D:客観的な状況の説明 「連日残業が続いていて、自分も含め多くのメンバーが長時間労働に陥っています」
E:自分の気持ちの説明 「会社としてもすぐに人員の増強をすることは難しいと思うので、業務フローを見直す必要があると感じています」
S:具体的な提案 「そこで、○○の業務を○○のツールで自動化できないでしょうか」
C:代案の提示・選択 「自動化のためのツールについては私も調べてみましたので、導入から運用までのプロセスはぜひ協力したいと思います」

このように話を進めることで、論理的に自分の意見を主張しつつ、建設的なコミュニケーションが可能になります。

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3-3. 頼み方・断り方のロールプレイ

上司や同僚、または取引先などから、対応が難しい依頼を相談されたとき、うまく断ったり、お互いが納得できるポイントを検討したりするためにロールプレイを行う方法です。
「依頼する人」「依頼される人」「観察する人」の3人1組でグループを構成し、依頼される人は「無理です」と断るのではなく、対案を出しながら合意点を探っていきます。ロールプレイが終了した後は、観察者も含めてロールプレイ中に感じたことを話し合います。

お互いが歩み寄ったり譲歩したりすることで、納得できる結論を導き出す方法やパターンをロールプレイによって発見できます。それによって、頼んだり断ったりすることに対して気後れしない、コミュニケーションの活性化につながります。

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4. アサーションは働きやすい職場づくりの第一歩

アサーションは働きやすい職場づくりの第一歩

職場の対人関係やコミュニケーションに悩む社員が多いと、仕事の進め方で分からないことがあっても相談しにくいと感じ、結果として業務効率や生産性の低下につながる恐れがあります。
しかし、アサーションスキルが身についている社員が増えれば、職場のなかの心理的安全性が高まることにもつながり、社内コミュニケーションが活性化されることはもちろん、ハラスメント防止にも役立つでしょう。結果的に、社員のストレスも減少し、離職防止につながる効果も期待できます。
働きやすい職場環境を構築するためにも、今回紹介したトレーニング方法を社員に伝えたり、研修に取り入れたりして、社員のアサーションスキルを高めていきましょう。

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