経営課題
公開日: 2021/07/13  

企業にケイパビリティが重要な理由とは? 向上させるためのポイントも解説

企業にケイパビリティが重要な理由とは? 向上させるためのポイントも解説

テクノロジーの発展や経済のグローバル化に伴い、環境が変化するスピードは加速しています。人々のニーズも多様化し、時代とともに移り変わっていくなかで、企業が生き残っていくためには変化に対応できる力を身につけなければなりません。

そこで重要な考え方となるのが、「ケイパビリティ」です。そもそもケイパビリティとは何なのか、なぜ企業にとってケイパビリティが必要なのか、ケイパビリティを向上させるために何が必要なのかも含めて詳しく解説します。

1. ビジネスにおける「ケイパビリティ」とは

ビジネスにおける「ケイパビリティ」とは

そもそもケイパビリティとはどのような意味を持つ言葉なのでしょうか。ビジネス業界で用いられるケイパビリティの意味を紹介するとともに、誤解されやすい「コアコンピタンス」との違いについても詳しく解説します。

1-1. ケイパビリティの意味

ケイパビリティとは、日本語に直訳すると「能力」や「強み」「特性」などの意味を持つ言葉です。ケイパビリティという言葉はさまざまな業界で使用されますが、ビジネス業界では、経営者や社員個人の能力や強みというよりも、「企業や組織全体における強み」という意味で使われることが多い傾向にあります。

1-2. コアコンピタンスとの違い

ケイパビリティと似た意味を持つ言葉として、コアコンピタンスがあります。
コンピタンスも「能力」や「適性」という意味をもちますが、コアコンピタンスは企業における中核事業、または中核となる技術そのもののことを指します。そのため、ケイパビリティとコアコンピタンスには明確な違いがあります。

1992年に発表された「Competing on Capabilities: The New Rules of Corporate Strategy」という論文の中で、両者は以下のように定義されています。

  • コアコンピタンス=バリューチェーン上における技術力や製造能力
  • ケイパビリティ=バリューチェーン全体に及ぶ組織能力

たとえば、大手家電メーカーにとってのコアコンピタンスは「家電製品そのものの開発力や技術力」を指し、ケイパビリティは「販売網や流通網なども含めた組織力」といえるでしょう。

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2. 企業が持つ2種類のケイパビリティ

企業が持つ2種類のケイパビリティ

企業が持つケイパビリティは、「オーディナリー・ケイパビリティ」と「ダイナミック・ケイパビリティ」の2種類に分けられます。それぞれのケイパビリティの定義と、両者の違いについて解説しましょう。

2-1. オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)とは

現在ある経営資源を効率的に活用し、利益を最大化する考え方を「オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)」といいます。

たとえば、効率的な生産プロセスを確立することはオーディナリー・ケイパビリティの典型的な例といえるでしょう。緻密な計画を立て、経営の効率性やコストコントロールを目的としてベストプラクティス(ある結果を得るのに最も効率のよい技法、手法、プロセス、活動)を求めることがオーディナリー・ケイパビリティの特徴です。

企業にとって、基本的な能力であるオーディナリー・ケイパビリティを高めることは、経営資源をフル活用するという意味でも重要といえるでしょう。
しかし、情報化社会のなかでグローバル化が進み変化の激しい時代においては、必ずしもオーディナリー・ケイパビリティだけで企業が生き残っていけるとは限らないのも事実です。
また、緻密な計画は完成されたプロセスであるがゆえに、その手法を他社に模倣された途端に競争力を失ってしまう可能性もあります。

2-2. ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)とは

時代や環境の変化に応じて、企業がとるべき行動を変革し続けていく能力のことを「ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)」といいます。

ダイナミック・ケイパビリティは、カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクール教授のデイヴィッド・J・ティース氏によって提唱された理論です。ティース氏は、オーディナリー・ケイパビリティとダイナミック・ケイパビリティの違いを、以下のように定義しました。

  • オーディナリー・ケイパビリティ…「ものごとを正しく行う」こと
  • ダイナミック・ケイパビリティ…「正しいことを行う」こと

オーディナリー・ケイパビリティは社内の経営資源を活用することが前提となりますが、ダイナミック・ケイパビリティでは社内だけではなく社外の資源を活用することもあります。

では、ダイナミック・ケイパビリティにおける「正しいことを行う」ためには、具体的にどのような能力が求められるのでしょうか。ティース氏は、ダイナミック・ケイパビリティを以下の3つの要素に分類しています。

  • 感知(センシング)…脅威や危機を感知する能力
  • 捕捉(シージング)…機会を捉え、既存の資産・知識・技術を再構成して競争力を獲得する能力
  • 変容(トランスフォーミング)…競争力を持続的なものにするために、組織全体を刷新し、変容する能力

出典:第2節 不確実性の高まる世界の現状と競争力強化 2020年版ものづくり白書|経済産業省

ただし、ダイナミック・ケイパビリティとオーディナリー・ケイパビリティは、相反する概念ではありません。ダイナミック・ケイパビリティを実践するためには、オーディナリー・ケイパビリティが前提として必要です。
すなわち、オーディナリー・ケイパビリティが備わっていない企業は、ダイナミック・ケイパビリティの能力を身につけることができないといえるでしょう。

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3. 企業経営にダイナミック・ケイパビリティが重要な理由

企業経営にダイナミック・ケイパビリティが重要な理由

企業経営においては、ダイナミック・ケイパビリティを備えることが極めて重要であり、昨今のビジネス業界においても注目されています。では、なぜダイナミック・ケイパビリティが注目されているのでしょうか?

情報化とグローバル化が進んだ現代は、以下の要素の頭文字をとって「VUCA(ブーカ)」時代とよばれています。

  • Volatility(変動性)
  • Uncertainty(不確実性)
  • Complexity(複雑性)
  • Ambiguity(曖昧性)

VUCAとは、一言で表すと「変化が激しく先が見通しづらい時代」といえるでしょう。このようなVUCA時代において、企業が生き残っていくことは決して簡単ではありません。なぜならば、顧客ニーズが多様化し、時代の変化するスピードが速く、オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)によって現時点では順調な経営ができていたとしても、それがいつまで続くか分からないためです。

環境や時代の変化、顧客ニーズの変化を見極め、企業として経営方針を柔軟に変化させていくために重要になるのが、ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)です。時代や環境の変化を「感知」し、チャンスを「捕捉」し、競争力を身につけ、経営を「変容」することで、VUCA時代に対応できる可能性が高まります。

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4. ダイナミック・ケイパビリティを向上させるためには

ダイナミック・ケイパビリティを向上させるためには

不確実なVUCA時代を生き残っていくためには、ダイナミック・ケイパビリティが重要であることをお伝えしました。では、ダイナミック・ケイパビリティを向上させるためにはどのようなことが求められるのでしょうか。

先述した「感知(センシング)能力」を起点に考えると、変化した環境と既存の資産利用状況とのズレをいかに感知し、そのズレを小さくするために必要な変革を実行できるか、ということが非常に重要となります。
これらの点を踏まえ、ダイナミック・ケイパビリティを高められる仕組みを構築するために特に重要な2つのポイントを解説します。

4-1. 経営資源の活用方法を見直す

最初に行うべきこととしては、変化する環境に対して経営資源が有効に活用されているかを確認することが重要です。

たとえば、レガシーシステム(古い情報システムや技術)が放置され、DX化(テクノロジーを駆使した改革)に向けた取り組みが先送りになっていないかを確認すること、などが挙げられます。
経済産業省がまとめた「DXレポート」では、2025年を境に企業のレガシーシステムが経営の足かせとなり、毎年最大12兆円もの経済損失が発生するリスクがあると報告されています。また、古いシステムを刷新しないことで情報セキュリティのリスクも増大し、サイバー攻撃による情報漏えいの危険性も高まります。

自社の経営資源の活用状況をチェックする際は、「現時点で業務に支障が出ていないから問題はない」と考えるのではなく、将来を見通したうえで必要な対策を講じていくことが求められます。また、過去の成功体験に固執していると、変化し続ける環境に適応できなくなり、企業として生き残っていくことが難しくなるでしょう。

経営資源を有効に活用するためには、環境の変化を機敏に察知できるプロセスや仕組みを構築することが求められます。具体的には、経営者が現場の意見を定期的にヒアリングしたり、社外からの意見にも耳を傾けたりすることが重要です。

また、経営資源である社員個人の能力や可能性を広げるために、幅広い知識を得るための学習支援を行うことも重要です。社員それぞれが学び続けることで、環境の変化のなかでも、ケイパビリティがつねにアップデートされた状態となります。
現在の競争に直接役立つものでなくても、将来の競争を視野に入れた場合に必要なことを社員に学習してもらうための研修や、文化づくりを取り入れることを検討しましょう。

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4-2. 改善し変革していくことを当たり前と捉える

これまでの時代は、ビジネスモデルや組織、会社そのものが変化していない状態を安定的と捉えるのが一般的でした。しかし、情報の伝達スピードが加速し、経済のグローバル化が進んだ現在、従来のような価値観ではなく、つねに変化し動いていることが当たり前の時代になりつつあります。
そのため、改善し変革していくことを特別視するのではなく、当然のこととして考える必要があります。
具体的には、社内でアイデアを出し合い、業務プロセスの改善やイノベーションの創出に向けてアクションを起こすことが求められます。仮に、思うような成果が出なかったとしても、それを失敗と捉えるのではなく、改善すべき点を見つけ出すためのプロセスと考えるようにしましょう。改善点を見つけ出し、それに対するアクションを繰り返していくことで、環境の変化に対応できる企業として成長していけるはずです。

なお、変革を試みる際に必ずといっていいほど発生するのが、社内における反発や抵抗勢力ですが、経営層が「抵抗勢力との取り引きコストが高い」と感じてしまうと、変革は進みません。
変革のためには、経営層がつねに「自己批判的」な姿勢であることが求められます。時代や環境の変化とともに現在の経営方針がマッチしなくなることがある、ということを認知し、今の経営のあり方で本当に問題がないかを自問自答しながら、新たな問題が見つかったらすぐに対処し解決していく姿勢が重要です。これにより、「センシング(脅威や危機を感知する)能力」の向上にもつながります。

ただし、個人では認知の限界があることから、仕組みとして認知の機会をつくり、センシング能力を高める工夫が必要です。

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5. ダイナミック・ケイパビリティが成功につながった事例

ダイナミック・ケイパビリティが成功につながった事例

ダイナミック・ケイパビリティに取り組んだことにより、事業の成功につながった企業の事例を2つ紹介します。

5-1. 富士フイルム株式会社

デジタルカメラの普及により、富士フイルム株式会社(以下、富士フイルム)の主力事業である写真フィルムの需要は低下し、2000年代に入ってから一時本業消失の危機に陥りました。
そこで、富士フイルムは既存の写真フィルム生産事業に特化するのではなく、フィルム生産過程において得たノウハウや知見を再利用・再配置し、事業を多角化する道を選択しました。その結果、液晶画面を保護するためのフィルムや、化粧品やサプリメントといった製品の開発に成功。写真フィルムの生産を本業としていた時代よりも高い利益を上げています。

ダイナミック・ケイパビリティの要素のうち、既存の資産・知識・技術を再構成して競争力を獲得する「シージング能力」と、組織全体を刷新し変容させる「トランスフォーミング能力」に秀でていたことで、成功につながった事例といえるでしょう。

参考:富士フイルムの強み│富士フイルムホールディングス

5-2. ソニー・コンピュータエンタテインメント株式会社(現 ソニー・インタラクティブエンタテインメント)

これまでに世界で累計5億台以上の販売台数を誇る「プレイステーション」シリーズですが、1990年代半ばに初代プレイステーションが登場する以前は任天堂がゲーム業界において圧倒的シェアを誇っていました。

そこで、ソニー・コンピュータエンタテインメント株式会社は自社だけで競争に挑むのではなく、ソフトメーカーや販売店なども取り込んだエコシステムを構築し、すべてのステークホルダーが利益を得る仕組みをつくりました。その結果、1996年には日本における任天堂の市場シェアを上回り、世界的にも成功しました。
自社の経営資源のみならず、他社の経営資源も相互に生かしたダイナミック・ケイパビリティの代表的な成功事例といえるでしょう。

参考:成功する日本企業には「共通の本質」がある|東レ P.11

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6. 不確実な時代において不可欠なケイパビリティ

不確実な時代において不可欠なケイパビリティ

先行きが不透明で変化が激しいVUCA時代において、企業がこの先も生き残っていくためには独自の強みや特性を打ち出し、他社との差別化を図ることが重要といえます。

企業にとっての強みにはさまざまな要素がありますが、どのような業種においても、時代や環境の変化に対応できることは最大の強みといえるでしょう。それこそがダイナミック・ケイパビリティであり、これからの企業が備えておくべき重要な指針のひとつでもあるのです。

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