経営課題
公開日: 2021/07/28  

コアコンピタンスはどのように見極める? 参考にしておきたい企業事例も紹介

コアコンピタンスはどのように見極める? 参考にしておきたい企業事例も紹介

変化の激しい現代において、企業は厳しい競争環境を迫られることがあるでしょう。顧客の顕在化したニーズのみならず、潜在的なニーズに対してもさまざまな価値を提供できなければ、将来的に企業の経営は厳しい状況になりかねません。

そこで注目されるのが、企業が「コアコンピタンス」を確立する重要性です。今回の記事では、コアコンピタンスとは何か、なぜ多くの企業にとってコアコンピタンスが重要なのか、コアコンピタンスを確立するためのポイントも含めて詳しく解説します。

1. コアコンピタンスとは

コアコンピタンスとは

コアコンピタンスとはどのような意味を持つ言葉なのか、その定義を解説するとともに、誤解されがちな言葉との違いについても紹介します。

1-1. コアコンピタンスの意味・定義

そもそも「コンピタンス」とは、能力や適性、権限といった意味です。「成果を出す行動特性や思考」を意味する「コンピテンシー」も、コンピタンスの派生語です。そして「コア」には物の中心部、中核、核心などの意味があるため、これらを踏まえて「コアコンピタンス」を直訳すると、日本語で「核となる能力・得意分野」という意味になります。

1990年、ハーバード・ビジネスレビューVol.68に掲載された「The Core Competence of the Corporation」において、コアコンピタンスは「顧客に対して、他社には提供できないような利益をもたらすことのできる、企業内部に秘められた独自のスキルや技術の集合体」と紹介されました。

つまり企業の「競合他社と比較して優位性のある中核事業」や「独自の技術や開発力」などが、コアコンピタンスに当たります。分かりやすい例としては、本田技研工業(ホンダ)が誇る優れたエンジン技術などが挙げられます。コアコンピタンスはあくまでも企業が持つ能力やノウハウのことを指し、特定の製品やサービスは含まれません。

自社のコアコンピタンスを的確に分析し、効果的な経営戦略に生かすことは「コアコンピタンス経営」とも呼ばれます。

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1-2. ケイパビリティとの違い

コアコンピタンスと似た意味の言葉に、ケイパビリティがあります。ケイパビリティとは「組織的な強み・能力」を意味する言葉で、コアコンピタンスが指す特定の技術や事業とは異なる概念です。

1992年に発表された「Competing on Capabilities: The New Rules of Corporate Strategy」という論文では、ケイパビリティは「バリューチェーン(※)全体に及ぶ組織能力」と定義されているのに対し、コアコンピタンスは「バリューチェーン上における技術力や製造能力」と定義されています。ケイパビリティは「組織力」、コアコンピタンスは「技術力」と、両者は異なる概念であることが分かります。

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2. コアコンピタンスが企業にとって重要な理由

コアコンピタンスが企業にとって重要な理由

コアコンピタンスとなる得意分野を把握し、経営資源を集約することによって、他社ではまねできないオリジナリティのある製品の開発につなげたり、経営効率を高めたりすることが期待できます。自社にしかない揺るぎない技術力や開発力を持ち、それを顧客の求める形で生かし、提供することが、競合他社を引き離す勝因に結び付くため、コアコンピタンスの確立は企業にとって重要な経営ノウハウの一つと言えるでしょう。

経営課題の一つとして、市場での価格競争に悩んでいる企業も多いと思います。経済のグローバル化が進む現在、日本のメーカー製品と同等の品質で安価な製品も存在するでしょう。しかし、過度な価格競争に加わり、他社との差別化を図る方法として価格にこだわり続けると、結果的に企業の利益を圧迫してしまうことも懸念されます。これはグローバル企業だけではなく、国内の競合企業との競争においても同じことが言えるはずです。

厳しい競争環境の中で企業が生き残っていくためには、他社がまねできない技術力や開発力を身に付け、顧客に対して価値を提供することが求められます。

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3. コアコンピタンスの3つの条件

コアコンピタンスの3つの条件

コアコンピタンスは、以下の3つの条件を満たす技術であることが必要です。

3-1. 顧客に利益をもたらす技術

1つ目の条件は、高い技術や自社オリジナルの技術によって生み出した製品やサービスが「顧客に対して利益をもたらしているか」という点です。

革新的、先進的な技術であったとしても、それが顧客に対して利益や価値を提供できないのであれば、他社との競争に打ち勝つことは難しいでしょう。技術力を生かし、顧客に対して利益や価値を提供できるアイデアと開発力があって、初めてコアコンピタンスの条件を満たすこととなります。

3-2. 競合他社がまねできない技術

2つ目の条件は、「オリジナル性が高く、競合他社にはまねできない技術であるか」という点です。

競合との差別化を図るために、コアコンピタンスを求めている企業は自社だけではありません。競合他社も技術開発に取り組んでおり、自社と同様のアイデアや技術をすでに開発している可能性があります。

また、自社がいち早く技術開発に成功したとしても、他社が容易にまねできるようなものならば、長いスパンで見たときに競争力を失う可能性が高いでしょう。そのため、コアコンピタンスとなり得る技術は競合他社が容易にまねできないものが条件となります。

3-3. 複数の製品に応用できる技術

3つ目の条件は「幅広く多様な製品開発に応用できる技術であるか」という点です。

ある製品やサービスのためだけに開発された技術では、その製品の需要がなくなったときに技術の価値もなくなってしまいます。しかし、異なる製品やサービスにも応用できて幅広い分野に活用できる技術があれば、企業としての競争力が維持できるでしょう。

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4. 自社のコアコンピタンス分析に役立つ5つの要素

自社のコアコンピタンス分析に役立つ5つの要素

コアコンピタンスに必要な3つの条件はいずれもハードルが高く、自社にそのような技術はないと感じてしまうかもしれません。

しかし、以下の5つの要素を照らし合わせることで、自社のコアコンピタンスが見えてくる可能性があります。

4-1. 模倣可能性(Imitability)

模倣可能性とは、自社の持つ技術を他社がまねできる可能性のことです。

長年にわたって蓄積してきたデータやノウハウがあるからこそ開発に成功した技術などは、競合他社が模倣できない可能性が高いため、コアコンピタンスとなり得る技術といえるでしょう。

4-2. 移動可能性(Transferability)

移動可能性とは、特定の製品やサービス以外にも、その技術を応用できる可能性のことです。幅広い用途に対する技術の応用という意味では、汎用(はんよう)性の高さとも表現できるでしょう。

移動可能性を考えるうえでは、それまで自社が携わってきた分野とは全く異なる分野への応用が発見されるケースもあります。移動可能性がある技術は、さらなる事業拡大が実現できる可能性を秘めています。

4-3. 希少性(Scarcity)

希少性とは、その名の通り自社の技術に希少価値があるかを表す指標です。

希少性が低い技術は他社でも活用できるため、必ずしも自社の市場価値を高められるとはいえません。希少性の高い技術は、事業の持続的な成長につながります。

4-4. 代替可能性(Substitutability)

代替可能性とは、自社の持っている技術が、他社の技術で代替できる可能性のことです。

代替可能性が低い技術にはオリジナル性があり、優れた競争力を持っていることを意味します。また、顧客にとっても他社では補えない唯一無二のものとなることから、市場全体から見ても価値の高い技術といえるでしょう。

4-5. 耐久性(Durability)

耐久性とは、自社の優位性や競争力をいかに長期にわたって維持できるかを表す指標です。

自社の持っている技術の模倣可能性や代替可能性が小さくても、やがて競合他社が自社よりも優れた技術を開発する可能性も考えられます。特に技術革新のスピードが速い現代では、自社の技術が早い段階で陳腐化する可能性も否定できないことから、コアコンピタンス分析において耐久性は重要な指標です。

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5. コアコンピタンスの企業事例

コアコンピタンスの企業事例

実際にコアコンピタンスを確立した事例には、どのようなものがあるのでしょうか。今回は3社の事例を紹介します。

5-1. ソニーエンジニアリング株式会社

ソニーエンジニアリングは、ソニー製品の設計開発を担う企業です。革新的な製品を生み出し続けている電機メーカーとして有名なソニー。そのアイデアや技術力を支えているのがソニーエンジニアリングといっても過言ではありません。

ソニーエンジニアリングでは、「あらゆる電化製品の開発に不可欠な技術」をコアコンピタンスとして位置付けています。製品によって求められる技術は異なるものの、大きく分けると「電気設計」「機構・駆動・外装設計」「ソフトウェア設計」の3つに分類され、それぞれの分野でコアコンピタンスを確立しています。

ソニーエンジニアリングの社員は9割がエンジニア職です。特定の製品、ジャンルに特化するのではなく、多様なカテゴリを横断的に手掛ける点が大きな特徴です。この特徴により、社内で蓄積した技術を異なるジャンルの製品開発にも積極的に活用しやすくなり、移動可能性の高い技術開発につなげています。

参考:コアコンピタンス | ソニーエンジニアリング株式会社

5-2. 本田技研工業株式会社

自動車やバイクの世界的なメーカーであるホンダのコアコンピタンスは、冒頭でも紹介したとおり「高性能エンジンの製造技術」です。

もともとホンダはバイクの製造を手掛けていたメーカーでしたが、やがてエンジン開発のノウハウを生かし自動車業界へ参入します。1970年代初頭、ホンダはCO・炭化水素濃度が従来の10分の1以下という厳しい排ガス規制基準をクリアしたエンジンを開発し、アメリカ当局からの認定を取得しました。

これを機に、世界的な自動車メーカーとしての地位を確立することに成功したホンダは、その後、バイクや自動車以外にも、草刈り機や除雪機を開発。さらには、船外機や航空機など陸海空、あらゆるフィールドに進出しています。模倣可能性の低いホンダの高品質なエンジン開発技術は、自動車などにも応用が可能な移動可能性の高い技術であったともいえます。

参考:デザイン・マネジメントと経営戦略|jstage

5-3. Apple

iPhoneやiPadの開発を手掛けるAppleのコアコンピタンスは、製品の外観およびユーザーインターフェースも含むデザイン性の高さといえるでしょう。

スマートフォン黎明(れいめい)期の2010年代初頭、Appleはサムスン電子の「GALAXY」がiPhoneのデザインに似ているという理由で提訴しました。しかし、判決は「GALAXYはiPhoneほどクールなデザインではない」と結論付け、Appleの提訴は退けられました。

つまり「Apple製品のようなデザインは、他社にはまねできない」と解釈できることから、Apple製品の模倣可能性や代替可能性が極めて低いことが証明されたのです。

では、なぜApple製品のデザインは他社にまねできないほど質が高く、多くの人々に評価されるのでしょうか。

Apple製品のデザインは、Appleという組織の中で長い年月をかけて積み重ねてきた暗黙知や形式知が根底にあります。これらは言語化・データ化することが困難で、他社が容易にまねできないほど計算し尽くされたものです。模倣可能性や移動可能性、代替可能性、希少性、耐久性の5つの要素が全て備わっているからこそ、技術革新が目まぐるしいIT業界でもAppleの製品は支持されているといえるでしょう。

参考:アップルのデザインはなぜ真似できないのか|diamondOnline

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6. 自社のコアコンピタンスを確立するためのポイント

自社のコアコンピタンスを確立するためのポイント

自社のコアコンピタンスを確立するためには、どのようなポイントを押さえておく必要があるのでしょうか。

6-1. ビジョンを立てる

コアコンピタンスは数年の中期的な戦略によって確立できるものではなく、10年、20年といった長期で考えることが重要です。そのためには、企業としてのビジョンを立てることから始めなくてはなりません。

ビジョンとは企業が描く自社の理想の未来図です。ビジョンを立てる際には「顧客や社会に対してどのような価値を提供し貢献していくのか」をベースに考える必要があります。

たとえば、自動車の修理業を経営する企業の場合、将来を見据えて「ハイブリッド車や電気自動車の修理で地域ナンバーワンの企業になる」というビジョンも考えられるでしょう。

ビジョンを描き、それに向けてハイブリッド車や電気自動車の修理に関するノウハウや技術力を蓄積していくことで、時間をかけてコアコンピタンスとして確立されます。

描いたビジョンを実現するために行動していくなかで、地域住民がハイブリッド車・電気自動車に関するさまざまな困り事を自社に気軽に相談してくれるようになれば、顧客や社会に対して価値を提供できる企業として競争力を維持できます。

6-2. ビジョンを実現するために必要な技術や能力を洗い出す

ビジョンを実現するためには、現時点で自社が持つノウハウや知見、技術だけでは難しい場合もあります。そこで、具体的にどのような技術や能力を身に付けるべきなのかを検討しましょう。

例えば、上記の自動車修理業の例では、ハイブリッド車や電気自動車に関する修理の知見が必須といえます。

6-3. 技術や能力を上げるための学習計画を立てる

自社にとって必要な技術や能力を洗い出したら、どのような方法でそれを習得するかを考えましょう。

例えば、社員に専門的な資格の取得や社外研修の受講を促して、スキルアップを図ることも一つの方法といえます。

自動車修理業の例でいえば、ハイブリッド車や電気自動車の修理経験が豊富なエンジニアを新たに採用し、社内でノウハウを共有していく方法も考えられます。

6-4. 独自の技術やノウハウを研究・開発する

しかしながら、技術や能力を身に付けただけでは、他社との差別化につながるとは限らないため、コアコンピタンスが確立できるとはいえないでしょう。

例えば、自動車修理業の場合、ハイブリッド車や電気自動車に関するノウハウは、他社でも容易に習得することが可能です。そのため、模倣可能性や希少性、耐久性の面では不安要素が大きいといえます。

これらを克服するためには、さまざまな要素技術を応用し、自社独自の技術やノウハウを研究し続けることが最も重要なポイントといえます。特定の部門やエンジニア、研究者だけで独自技術の開発は難しいため、社内の各部門が連携し、アイデアや知見を出し合いながら開発する組織力も求められます。

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7. コアコンピタンスが未来の成功の原動力となる

コアコンピタンスが未来の成功の原動力となる

企業独自の技術や開発力を表すコアコンピタンスは、競争において優位性を保つために極めて重要な要素ですが「自社にはそのような技術・ノウハウはない」と諦めてしまう経営者や担当者もいるかもしれません。

しかし、今回紹介したコアコンピタンスを見極める条件や要素を参考にすることで、自社の技術やノウハウがコアコンピタンスになる可能性もあります。いま一度、自社の事業や業務フローを見直したうえで、コアコンピタンスに該当する要素の有無を見極め、強みを伸ばしていく心掛けが重要です。

これからコアコンピタンスを確立しようと考えている場合には、長期的なビジョンを策定したうえで、求められる技術やそれを習得するための方法について検討しましょう。

漠然と自社の強みを捉えるだけでなく、「競争に勝つための武器」としてのコアコンピタンスを確立できた企業は、変化の激しい現代においても、未来に向けて挑戦し続け、持続的な成長が実現できるはずです。

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