採用課題
インタビュー
公開日: 2021/08/31  

【地方企業の経営と採用を考える#1】異業種からプロ人材を呼び込む採⽤戦略とは

【地方企業の経営と採用を考える#1】異業種からプロ人材を呼び込む採⽤戦略とは

2021年6月23日、株式会社ビズリーチは「異業種からプロ人材を呼び込む採⽤戦略とは」と題して、高知県に本社を置く廣瀬製紙株式会社の馬醫光明(ばい・みつあき)氏をゲストにお招きし、Webセミナーを開催しました。

前半では、馬醫氏に、同社の採用戦略の変遷やプロフェッショナル人材の採用成功の秘訣についてお話しいただき、後半では本セミナーのモデレーターを務めた株式会社ビズリーチ取締役副社長の酒井哲也が、セミナー参加者からの質問をピックアップし、対談形式で馬醫様に質問していきました。

地方に本社を置く企業がビズリーチを活用してどのようにプロフェッショナル人材を採用しているのか、詳しくお聞きしていきます。

■登壇者プロフィール

馬醫 光明 様

馬醫 光明 氏
廣瀬製紙株式会社 取締役・税理士

立命館大学大学院修了後、パナソニックに入社。その後、国内工場の経理責任者、台湾勤務を経て、マレーシア現地法人設立に管理担当役員として従事。現地法人のリストラも経験し日本に帰国。パナソニック退社後、廣瀬製紙に転職し、高知県へ移住。現在は、採用シニアエキスパートとしても活躍し、新卒・中途採用の前線に立つ。「違う結果を得たいなら、違う行動をする」が信条で、プロフェッショナル人材の採用をはじめITを活用した採用手法は、中途採用を実施している中小企業だけではなく、プロフェッショナル人材拠点やメディア等からも注目を集めている。また、著書として「社長、なぜプロフェッショナル人材を採用しないんですか!?」(日本橋出版)がある。

■モデレータープロフィール

酒井氏

酒井 哲也
株式会社ビズリーチ 取締役副社長
ビズリーチ事業部 事業部長

2003年、慶應義塾大学商学部卒業後、株式会社日本スポーツビジョンに入社。その後、株式会社リクルートキャリアで営業、事業開発を経て、中途採用領域の営業部門長などを務める。2015年11月、株式会社ビズリーチに入社し、ビズリーチ事業本部長、リクルーティングプラットフォーム統括本部長などを歴任。2020年2月、現職に就任。

1. ものづくりの現場を変えるために、採用も変革

廣瀬製紙は1958年創業、高知県土佐市に本社を置く企業で、売り上げは約37億円、従業員数は165人です。主力製品の一つが乾電池の絶縁紙・セパレータで、単3・単4型の国内シェアは6割、世界シェアは2割を誇ります。

また、最近では人口増加に伴い飲み水が不足する世界課題を解決するために開発した、海水を淡水化するフィルターの膜の生産量が伸びており、約3年前から開発していたナノファイバーマスクもコロナ禍の影響で売り上げが伸長しています。

廣瀬製紙について

私が廣瀬製紙に入社した2013年は、採用活動が思うように進んでいなかったり、入社した方が早期に離職してしまったりといった人事課題がありました。さらに、製造の要である工場のオペレーションやマネジメントもうまく機能しておらず、課題が山積していたのです。

そこで、ものづくりの改革と採用を2大ミッションとする「業務改革推進室」を新たに立ち上げ、改革を進めていくことにしました。

馬醫様_002

まず採用したかったのは、工場をまとめ上げられる工場長です。当初は経営幹部から紹介していただいた、高知県内にいる定年退職後の業界経験者とお会いしていました。しかし、工場のものづくりの体制やプロセスを大きく変えた経験のある候補者にもっと会ってみたいと感じて、2015年からビズリーチを活用した採用活動を行うことにしたのです。

高知県在住の製紙業経験者に限らず、対象エリアを広げ、異業種の人材も候補に含めてプロフェッショナル人材を探しました。

2. 異業種人材を受け入れた理由とは

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ビズリーチを活用したプロフェッショナル人材の採用が、最初から周りに受け入れられたわけではありません。特に「異業種人材を工場長として迎えること」を社内に提案した際には、「業界を知らない者に工場長は務まらない」という意見が大半でした。

そのような声に対する説得材料として私が社内でよく話していたのは、前職のメーカー時代のエピソードです。マレーシア工場を管掌していたときに、工場長のマネジメント力不足により、不良品の山が生まれ、人材育成が進まない時期がありました。

その工場長の方は、業界事情にも、ものづくりにも非常に詳しい優秀な方でしたが、マネジメント能力が不足していました。そこで、工場を変革するため、マネジメント能力を持った異業種の方を工場長に据えたところ、工場のオペレーションが劇的に変わり、人が育ち、業績も上がったのです。この経験から、「同様の改革が廣瀬製紙でも可能である」と経営陣を説得しました。

ただ、一番の説得材料はやはり「プロフェッショナル人材の方の経歴や人柄」です。面接までのプロセスをすべてお膳立てして、プロフェッショナル人材と経営陣を引き合わせたところ、「こんなに素晴らしい経歴をお持ちの優秀な方が、当社に応募してくれているのか」と驚かれ、即採用に至りました。

3. ペルソナの明確化によって採用が加速

最初はがむしゃらに会社のPR用コンテンツの充実に力を注いでいましたが、採用活動を重ねるなかでペルソナ(自社が求める人物像)に基づいた採用戦略を確立することができ、スムーズに採用が進むようになりました。

ペルソナを「マネジメント経験豊富な、大企業出身の55歳以上の人材」に定めたのは、ビズリーチ主催の省庁関連のイベントで登壇されていた、ある大手企業の方が、「海外勤務経験があり、役職定年を迎えた55歳以上の方が、日本に帰国してからの再就職先(キャリア)に困っている」と話していたのを聞いたのがきっかけです。

そういった方は、海外赴任経験があるので住む場所へのこだわりは薄いでしょうし、地方で働くことにも抵抗がないはず。それに、海外赴任されている方の多くは「慣れない土地で、言語の違う現場にも自ら積極的に入っていって改善を行い、周りの2~3倍の仕事量をこなして海外支社を支える」という経験をしているはず。彼らなら、地方に工場を構える当社にぴったりだと思ったのです。

実際に、ペルソナに該当するプロフェッショナル人材にお会いしてみると、多くの方が「役職定年を迎えたことで、ラインから離れ、部下もいなくなってしまった。もう一度現場に戻り、若手とともに汗水流して働きたい」という要望を持っていました。

また「報酬にはこだわらない。それよりも、自分の経験を若手に伝えていきたい」という社会貢献意欲の高い方が多かったのです。

結果的にこのペルソナを活用した採用活動では、工場長、開発責任者、営業企画責任者などの採用に成功しました。なかには、採用後にうまく現場に入り込めず、残念ながら退職された方もいますが、一つ一つの採用活動を振り返りつつ採用プロセスの改善を重ねている最中です。

採用に成功

おすすめ資料
関連情報(https://bizreach.biz/download/persona/?trcd=1HRRV0000168_PC_)

4. プロフェッショナル人材に響く魅力的なプレゼンテーションを準備

プロフェッショナル人材の方に当社を選んでもらうためには、魅力的なプレゼンテーションも必要です。

当社の場合はプレゼンテーション資料を新しく作り直したのですが、インパクトが残るように「2:2:2」をキーワードにしました。具体的には、以下のような内容です。

  • 「第二創業期」
  • 「売り上げ2倍を目指す」
  • 「営業利益2倍を目指す」

若手社長に世代交代する時期だったことから「第二創業期」、工場を新設し、生産量を増やすタイミングだったことから「売り上げ2倍」「営業利益2倍」といったキーワードを用いました。「2:2:2」のキーワードがあることで印象に残りやすいですし、ストーリー立てて会社のビジョンを伝えられたと思います。

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また、面接では「今は第二創業期であり、成長と衰退の分岐点であること」「V字回復と呼べるような事業成長を目指したいものの、社内はまだまだ未整備の状態」という状況を隠さずに伝えたうえで、「ぜひ、あなたの経験を生かして手伝っていただけないか」と呼び掛けました。

コミュニケーションも大事にしているので、面接パートとディスカッションパートをあわせて3時間ほどお時間をいただき、お昼は高知県名物のカツオを一緒に食べにいきました。また、工場で働く職種の方にはじっくりと工場を見学していただく機会を設けて、お互いの理解を深めていきました。

5. 企業側に欠かせない、プロフェッショナル人材を受け入れるための工夫

異業種のプロフェッショナル人材の入社には、「受け入れる」ための工夫も欠かせません。

まずは年収面です。給与テーブルは既存のものと分けて、年俸制の個別契約。金額は社内の部長クラスと同等にしています。見せ方で工夫したのは、「現在の年収ではなく、生涯年収をアピールすること」です。

私たちがターゲットにしている方は年収1,000万円以上の方ですが、役職定年を迎えると給与は下がりますし、大企業では60歳以上の方の給与が半額以下になる場合がほとんどです。そのため、「長い目で見れば、当社の方が生涯年収を上げられますよ」と伝えました。また、「報酬よりもやりがい」を重視されている方も多いため、希望年収の欄に「1,000万円以上」と書いている方にも積極的にスカウトを送った結果、採用に至ったケースもありました。

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次に、ご家族の説得です。たとえ、プロフェッショナル人材の方が住む場所にこだわりがなく地方勤務に前向きでも、ご家族が地方移住を不安に思われるケースもあります。そういった場合は、住む家は会社側で手配したり、ご家族の方にも高知に来ていただいて町の雰囲気を見ていただいたりといった機会を作りました。

そして最後に、現場の受け入れ体制です。優秀なプロフェッショナル人材が気持ちよく働ける環境を整備することも企業側の役割です。

たとえば工場長に関しては、当初「業界のことをわからない人が来て、何ができるのか」といった声が現場から出ていたため、いきなり部門の責任者として配属することはせず、入社後半年から1年は「社長付」という立場にしてフリーで動いてもらい、現場のことをじっくりと理解してもらいました。こうした助走期間を設けた後に部門の責任者に就任することで、プロフェッショナル人材の方も準備したうえで改革に移ることができたようです。

ただ、どんな企業や組織においても、改革を進めるときに起こる現場からの反発を完全に避けることは難しいと思います。

だからこそ、ある程度割り切って、採用側としては根気強く採用活動を続けながら「社内を良くする改革の種」をまいていくことに注力しました。なぜなら、現場が変革されて売り上げや利益が上がるなど、結果が出るにしたがって、反発の声は少なくなるからです。当社の場合3~4年、根気強く採用活動を続けるなかで、ようやく芽が出始めてきたように思います。

6. 質疑応答

本セミナーでは、視聴者から質問が多く寄せられました。モデレーターの酒井が、ピックアップした質問を馬醫様に伺っていきました。

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セミナー参加者からの質問

Q1. コロナ禍の状況下になり、採用市場の変化は実感していますか?

A. 4~5年前までは、地方企業に目を向けるのは、都心部での就職や転職が思い通りにいかないとき、というケースが多かったように思います。

ただ、最近はコロナ禍の影響もあり、働く場所の制約がなくなってきていると感じます。だからこそ、この流れを自社の採用活動にポジティブに生かせられるかが問われていると感じます。

セミナー参加者からの質問

Q2. 本日お話しいただいたこと以外でも、プロフェッショナル人材にアプローチする際に気を付けていることはありますか?

A. 内定から入社までの期間を最長3カ月に設定しています。

なかには、ご自身のキャリアプランに沿って「1年後に入社したい」と希望される方もいますが、やはり内定から入社までの期間が空くほど、心変わりされて内定辞退となる確率が高くなります。内定辞退となると採用活動が振り出しに戻ってしまうので、候補者の方に対しても「今の会社に、このように交渉することはできませんか?」などとお伝えしますが、どうしても3カ月以内の入社が難しいという方は残念ながらお断りしています。

また、候補者の方と本音で話し合うことも大切にしていて、「なぜ転職を考えているのか」という理由は必ず聞くようにしています。現状の不満を当社で解決できるのかどうかを率直にお伝えするためです。

セミナー参加者からの質問

Q3. 多くのプロフェッショナル人材に対して、どのように「自社に合うかどうか」を見極めていましたか?

A. プロフェッショナル人材の方には責任者の立場に就いていただくことが多いので、リーダーシップが必要です。

リーダーシップとは、周囲を巻き込んで物事を解決・改善していくこと。そのため、「周囲を巻き込む力をお持ちかどうか」は、これまでの経験や部下との接し方について問う質問を投げ掛けて見極めます。トップダウンではメンバーは付いてこないため、部下との定期的な面談を大事にしていた方など、メンバーと肩を並べて仕事ができる方を当社では評価しています。

セミナー参加者からの質問

Q4. プロフェッショナル人材の方の活躍例が他にもあれば教えていただきたいです。

A. 直近では、大手商社出身の方を営業企画責任者として採用し、海外の営業戦略立案をお任せしています。

また、2019年にドイツに販売会社を設立したのですが、その立ち上げもプロフェッショナル人材の方に率いていただきました。その方は現在もドイツに駐在しています。他には、アプリケーションに詳しい方を開発責任者として採用したり、博士号を持った開発の若手社員を数名採用したりしています。

セミナー参加者からの質問

Q5. 一方で、貴社で活躍できなかった方の事例があれば教えていただきたいです。

A. 活躍できなかったのは、やはり現場に入り込むことができなかった方です。

ただ、それを面接時に見極めることはできなかったので、採用活動のPDCAサイクルを回すなかで少しずつ学んでいくしかないと思っています。また、質問の内容とは少しそれますが、当社のように「55歳以上の方」をターゲットとする際には、ライフステージに伴うリスクも想定しておかなければなりません。具体的には、ご本人やご家族がご病気になられたり、ご両親の介護が必要になって退職されたりといった方が一定数いらっしゃいます。

セミナー参加者からの質問

Q6. 技術部門の方のペルソナ設定の方法を伺いたいです。昔から活躍されている技術部門のスタッフの方とすり合わせをしてペルソナを作られたのでしょうか?

A. 当社の場合、現場とはすり合わせをしていません。

社長が技術者で、社内で一番技術面に詳しいため、社長とすり合わせをして開発(技術)責任者のペルソナを設定しました。工場長は業界経験にかかわらずマネジメントが得意な方を採用していますが、開発(技術)責任者のような技術系の職種に関しては業界経験者を採用するようにしています。

セミナー参加者からの質問

Q7. 採用活動のなかでビズリーチのどんなサポートが役立ちましたか?

A. 弊社のプレゼン資料はすべてビズリーチの担当者にチェックしてもらいました。

「面談と面接は役割が異なるので分けましょう」とご提案いただいたり、面談や面接の内容もすべて共有し、フィードバックを受けて改善案を話し合いながら型を作っていったりしました。また、「他社の事例を教えてほしい」とお願いすると、地方企業のさまざまな事例を教えていただけました。たとえば、生涯年収の魅力を訴求することやご家族のケアや住む場所の手配の必要性などは、教えていただいた事例を参考に取り組んだことです。

セミナー参加者からの質問

Q8. 馬醫様自身が意識した、社内の巻き込み方を教えてください。

A. 入社して間もない頃、まずは工場の「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」整備から始めたのですが、地道に取り組んでいると職場環境の前向きな変化を実感するメンバーが1人、2人と出てきました。

そのため、まずは彼らに仕事を与えることで周囲を巻き込んでいったのです。すると徐々に仲間が増えてきて、気付けば「みんなで改善していこう」という空気感ができ上がりました。今は、工場長を中心としたメンバーが社内人材の育成と能力の底上げに注力してくれています。

酒井:本日、地方に本社を置く、馬醫様の企業が「どのようにプロフェッショナル人材を採用しているのか」というお話を伺って、プロフェッショナル人材を採用するためには、下記の3点が大切であると感じました。

  1. ペルソナを明確にしたうえで、「どのようなメッセージを伝えるのか」「どのような選考フローにするか」を考えること
  2. プロフェッショナル人材を受け入れるための体制を作り、ポジションの用意や処遇の方法などを検討すること
  3. 経営者を含めた全体で「絶対にこのような人材を採用するんだ」という意識を持つこと

ビズリーチも引き続き、皆様の採用のご支援をしていければと思っております。本日はご視聴ありがとうございました。

馬醫:中小企業の経営者様や人事責任者様向けに、「社長、なぜプロフェッショナル人材を採用しないんですか!?」(日本橋出版 2021年1月発売)という書籍を出版しました。

今日お話ししたトピックのより具体的な内容や、採用活動のなかでの成功と失敗を率直につづっています。「会社を魅力的に見せる方法」を考えるワークも付いているので、手に取って見ていただけると参考になると思います。ぜひ一読いただけますと幸いです。

酒井:馬醫様、本日はありがとうございました!

馬醫:こちらこそ、ありがとうございました!

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今回のセミナーの様子は動画でもご覧になれます。下記からご視聴ください。

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