ハロー効果は採用活動や人事評価にどのような影響をもたらす? 効果的な対策も紹介

ハロー効果は採用活動や人事評価にどのような影響をもたらす? 効果的な対策も紹介

採用活動や人事評価において公平な視点をもつことは基本であり、極めて重要なポイントです。しかし、さまざまな要因によって公平な評価に結びつかないケースもあります。なかでも大きな要因として挙げられるのが「ハロー効果」とよばれるものです。

今回の記事では、ハロー効果とは何なのか、採用活動や人事評価にどのような影響を及ぼすのかを解説するとともに、ハロー効果の影響をとどめるために有効な対策についても紹介します。

部下・社員の成長を促す「評価」の仕組み・伝え方

成長を加速するモチベーションや成長を促すカギとなる、重要な存在の「評価」。しかし、少なからず「評価制度に対して不満を持つ」「評価内容に納得していない」部下や社員もいると、感じたことはありませんか?

本資料では、人事評価や採用面接での評価の際に気を付けていただきたい「評価をめぐるバイアス」や「納得・満足するための3つの公正感」などについて、株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役・採用学研究所所長の伊達洋駆さんに解説していただきました。

ハロー効果とは

ハロー効果とは

ハロー効果とはどのような意味をもつ言葉なのでしょうか。ハロー効果の意味や定義を紹介するとともに、混同されやすい「ピグマリオン効果」との違いについても解説します。

ハロー効果の意味

ハロー効果とは「ある方面でプラスまたはマイナスの特質をもっている人について、他の点における評価にも影響を及ぼし、評価がゆがめられること」を意味します。ちなみに、ハロー効果の「ハロー(Halo)」とは「後光」や「光背」「光輪」といった意味に直訳されることから、「後光効果」や「光背効果」ともよばれることがあります。

また、ハロー効果は心理学では、自分自身の思い込みなどにより、合理的ではない誤った判断を下してしまう「認知バイアス」の一種ともされています。

ピグマリオン効果との違い

ハロー効果と混同され、影響を与える現象として使われる言葉に、ピグマリオン効果がありますが、どちらも認知バイアスの一種である点は共通しています。しかし、ハロー効果は評価される側が発する「ある強い印象」を評価者が受けることで、他の部分の印象にもその影響(誤認)が出てしまう現象であるのに対し、ピグマリオン効果は「評価される側が評価者から求められる理想や期待に応えようと行動を変え、成果が上がる現象」のことを指します。

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ポジティブ・ハロー効果とネガティブ・ハロー効果

ポジティブ・ハロー効果とネガティブ・ハロー効果

ハロー効果には「ポジティブ・ハロー効果」と「ネガティブ・ハロー効果」の2種類が存在します。両者にはどのような違いがあるのか詳しく見ていきます。

ポジティブ・ハロー効果とは

ポジティブ・ハロー効果とは、ある項目についての評価が高い場合に、それとは関係のない別の項目まで、評価者がかたよって高く評価をしてしまう現象のことを指します。

たとえば「明るく挨拶できる人は、コミュニケーションスキルも高いだろう」「数学が得意な人は、理科も得意だろう」と考えることはポジティブ・ハロー効果の一例といえるでしょう。

ネガティブ・ハロー効果とは

ネガティブ・ハロー効果とは、ポジティブ・ハロー効果とは反対に、ある項目についてのネガティブな評価が他の項目にまで影響を及ぼすことを指します。

たとえば「走るのが遅い人は、スポーツ全般が苦手だろう」「PCの操作が苦手な人は、スマートフォンも使いこなすのが難しいだろう」などはネガティブ・ハロー効果の一例といえます。

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ビジネスシーンにおけるハロー効果の例

ビジネスシーンにおけるハロー効果の例

ハロー効果はビジネスの場面でさまざまな影響を及ぼすことがあります。ハロー効果が起こりやすい採用活動・人事評価・マーケティング活動の場面において、どのような影響を及ぼす可能性があるかを紹介します。

採用活動への影響

たとえば、新卒採用では「○○大学の卒業生だから優秀に違いない」、中途採用では「○○株式会社での勤務経験があるから優秀な人材に違いない」など、応募者の経歴が認知バイアスを生むケースがあります。

また、経歴だけではなく、「○○の資格をもっているから即戦力になるに違いない」というのもポジティブ・ハロー効果の一例といえるでしょう。資格を保有していたとしても、実務経験がなかったり、長期間にわたって現場を離れていたりすると即戦力にならないケースもあるため、採用活動においてはハロー効果に影響されないよう、公平な判断が求められます。

採用活動ではポジティブ・ハロー効果の影響がある一方で「前職を短期間で辞めているので、優秀な人材ではない」などと決めつけてしまうネガティブ・ハロー効果もあります。

採用面接では「自己PRを聞くことでバイアスがかかってしまうこと」に注意しましょう。自己PRでは、応募者は自分のよい面ばかりを特徴づけようとするため、はじめの段階で自己PRを聞いてしまうと、その時点で評価者に対して確証バイアスがかかってしまいます。

確証バイアスとは認知バイアスの一種で、自分にとって都合のよい情報ばかりを集めてしまうことを指し、ポジティブ・ハロー効果とも高い関連性があります。

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人事評価への影響

人事評価では「○○のプロジェクトに携わっていたからスキルが高いはずだ」「海外留学経験があるからコミュニケーション能力が高いはずだ」など、スキルの過剰な評価や社内におけるポジション・経験などが認知バイアスを生むケースがあります。

しかし、特定のスキルが高いからといってビジネススキル全般が高いとはかぎりません。

また、上記のようなポジティブ・ハロー効果とは反対に「エンジニア出身だけど資格をもっていないからスキルが低いに違いない」といったネガティブ・ハロー効果もあります。

ハロー効果によって正当な評価ができないと、評価者である上司に対する不満が増大し、信頼関係が崩れたり、人事制度そのものへの不信感につながったりすることが考えられます。その結果、従業員の労働意欲が低下し、生産性が悪化する懸念も生じます。

マーケティングに活用できる場合も

採用や評価といった人事部門の業務には適正に判断できない可能性が生じやすいハロー効果ですが、その特長を生かしてマーケティング活動へ生かす例もあります。

たとえば「CMに有名人を起用し企業のイメージアップを狙う」「サプリメントのCMにスポーツ選手を起用し商品の効果について説得力をもたせる」といったことは、ハロー効果の有効的な活用方法といえるでしょう。

企業にとってハロー効果は必ずしも悪いものではなく、ポジティブ・ハロー効果をうまく活用することで、消費者の購買意欲を向上させたり、自社に対するイメージ向上を図ったりすることができます。

このように、ハロー効果は私たちの日常生活において、さまざまな場面で役立てられている側面もあるのです。

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的確な採用や人事評価のための具体策

的確な採用や人事評価のための具体策

正当な採用活動や人事評価を行うためには、ハロー効果の影響を受けることなく公平な視点をもち続けることが重要です。しかし、そのためにはどのような行動や取り組みをすればよいのか分からないという方も多いでしょう。

そこで、ハロー効果の影響を受けることなく、的確な採用や人事評価を行うために効果的な対策を紹介します。

評価者は無意識に生じる「認知の癖」を認識する

採用活動や人事評価などにおいて、ハロー効果の影響を回避するためには、先入観や思い込みにとらわれず公平に評価することが重要です。しかし、評価者は無意識のうちにハロー効果による確証バイアスの影響を受けていることがあります。

ある研究によると、第三者が評価者のハロー効果の程度を測定したうえで「ハロー効果の影響が出ている」旨のフィードバックを行った結果、評価者本人のハロー効果の影響の低減につながったという例もあります。この研究からハロー効果という現象を認識することに効果があるといえるでしょう。

ただし、この研究結果のなかでは、もともとハロー効果の影響が出ていない評価者にまで余分な情報を提供してしまうと、悪い評価をつけてしまう傾向が見られたことも分かっています。

そのため、評価者に対してハロー効果を認識させる際には、あくまでもハロー効果の影響が出ている評価者だけに対象を絞り込む必要があります。

評価基準を明確化する

採用活動において明確な評価基準がない企業や、正しく評価基準を理解していない採用担当者も存在します。株式会社ADKホールディングスの調査によると、新卒採用の面接を担当した6割の担当者が自身の会社に必要な人材像について「なんとなく理解」もしくは「あまり理解していない」と回答しています。

この背景には、日本の多くの企業では新卒一括採用を基本としていることが大きな要因として考えられます。採用活動が本格化する時期には多くの応募者に対して面接を行わなくてはならず、人事部に在籍している採用担当者だけでは人材不足に陥ってしまうことから、現場の管理職やリーダーが面接を行うケースが少なくありません。

その結果、現場の担当者に採用基準を委ねることも多いため、たとえば「一緒に働きたいと感じた学生」や「会社の雰囲気になじみそうな学生」など、属人的な評価基準となるケースがあります。

しかし、このような現場任せの採用活動のままでは、評価者がハロー効果の影響を受け、採用のミスマッチが起こる可能性も考えられます。そこで、誰が面接官でも、誰が評価者であっても公平な評価ができるよう、評価基準を明確にすることが重要です。

職種や担当業務によっても求められるスキルや適性は異なるため、職種ごとに評価基準を明確化することにより、現場担当者の先入観や思い込みを抑制でき、属人的な評価による採用のミスマッチを防ぐことができます。

引用:新卒採用選考官経験者の大半が「採用基準が曖昧」なまま選考を行っていることが判明!自社にとって、本当に必要な人材を見極められていないことが大きな課題に|株式会社ADKホールディングスのプレスリリース

意見ではなく事実をもとに評価する

面接において応募者が回答する内容のなかには「本人の意見」と「事実」があるため、このふたつを混同しないように注意しなければなりません。

たとえば、自己紹介や自己PRのなかで応募者から「将来一流の建築家になるために、建築士の資格を取得しました」という発言があったとします。

このうち「将来は一流の建築家になりたい」というのは本人の意見であるのに対し「そのために建築士の資格を取得した」というのは事実です。

応募者本人の意見や気持ち、希望などは自由に表現できるため、仮に建設業界に全く興味がなかったとしても「将来は一流の建築家になりたい」など言葉で伝えることは可能です。

しかし、実際に「建築士の資格を取得した」という事実はゆるぎないもので、応募者が本気で建築家になろうとしていなければ行動に移すことはないでしょう。

もちろん、本人の意見の多くは事実であり、面接で事実ではないことを伝える応募者は極めて少ないでしょう。しかし、本人の意見ばかりを重視してしまうと、ハロー効果の影響によって過大な評価につながることも考えられます。

面接の際には本人の意見だけではなく、事実の評価に重点を置くことでハロー効果の影響を受けにくくできます。

複数の担当者による面接を行う

採用活動において1対1の面接を行う場合、1人の面接官に判断基準が委ねられてしまいます。万が一、その面接官がハロー効果による確証バイアスの影響を受けていた場合、正当な評価につながらず、採用すべきではない応募者を採用したり、採用すべき応募者を不採用としてしまったりする可能性もあるでしょう。

そこで、応募者1人に対して1人の面接官ではなく、複数の担当者が面接を行うことにより、客観的な評価基準を担保できます。また、副次的な効果として、応募者の納得感を高めたり、採用後や評価後の配置・育成に生かしたりすることにもつながります。

これは採用活動だけではなく人事評価を目的とした面接を行う際にも、同様の方法を採り入れることが可能です。

応募者の選社基準を聞く

採用面接において、応募者のなかには自社を第一志望として応募してくる人以外にも「少し興味がある」程度の段階で応募してくる人も存在します。そういった応募者に志望動機を聞いても率直な返答が得られず、曖昧で抽象的な返答となることは少なくありません。その時点で、多くの採用担当者はよい印象を抱かず、不採用と判断してしまうこともあるでしょう。

しかしそのような応募者のなかにも、優秀で自社の求める人物像にマッチした人も存在する可能性はあるため、採用面接での質問の仕方を変えてみましょう。具体的には、志望動機を聞くのではなく、何を基準に応募する会社を選んでいるかという「選社基準」を聞きます。

たとえば、応募者のなかには「将来は一流の建築士になりたいので、建築の実務経験が積める会社を探している」という人もいるでしょう。このように、志望動機ではなく選社基準を聞くことで、応募者が考えているキャリア観や仕事に対する考え方を把握でき、自社にマッチする人材であるかを判断する材料になります。

評価者向けの訓練やトレーニングを行う

ハロー効果による確証バイアスを受けないようにするには、評価者が客観性を高めることが重要といえます。

そのために具体的な方法として有効なのが、評価者向けのトレーニングを行うことです。採用活動や人事評価を行う評価者向けのトレーニング手法の一例としては、以下のようなものがあります。

講義

そもそもハロー効果というものが何なのかを理解できていない評価者も少なくありません。そこで、ハロー効果に関する基礎的な知識を身につけてもらうために講義形式の研修を行います。

講義のなかでは、採用面接や人事評価においてどのような場面でハロー効果による影響が出やすいかをレクチャーすることで、ハロー効果に関する正しい知識を得ることが可能です。

ロールプレーイング形式

ロールプレーイング形式は、評価者役・被評価者役・オブザーバー(観察者)の3人一組となって行うトレーニングです。評価者役が被評価者役と面談をして評価を行い、オブザーバーはその様子を観察します。評価者役が下した評価結果と面談でのやり取りをもとに、オブザーバーが評価者役へフィードバックを行います。

参加者全員がフィードバックを受けられるよう、評価者役・被評価者役・オブザーバーをローテーションしながらロールプレーイングを実施しましょう。

オブザーバー形式

オブザーバー形式はロールプレーイングでの面談後、評価を下すタイミングでオブザーバーが参加し、評価者役とオブザーバーの2者で評価を決めるトレーニング方法です。

評価を終えた後にフィードバックを受けるロールプレーイング形式とは異なり、オブザーバーから評価方法や評価点に対する意見をもらいながら評価を行うため、より客観的な視点を養えるトレーニング方法です。

グループワーク

グループワークは、評価者役で構成されるグループ内で、それぞれの評価者役が評価方法や判断基準に対する意見を出し合うトレーニングです。自分以外の評価者役がどのような視点で評価を行っているのか、情報や意見を共有することで視野が広がるほか、自身の評価方法や判断基準について客観的に見直す機会にもつながるでしょう。

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ハロー効果を理解することは採用や人事評価の質の向上につながる

ハロー効果を理解することは採用や人事評価の質の向上につながる

企業にとってハロー効果は、マーケティング活動などに有効活用できる一方で、採用活動や人事評価ではネガティブな影響を及ぼすことがあるのも事実です。

ハロー効果の影響を受けてしまうと、採用活動では人材のミスマッチが発生し、人事評価では不当な評価によって従業員のモチベーション低下や従業員満足度の低下につながることも考えられます。

人事担当者や管理職などの評価を行う機会がある人は、ハロー効果を正しく理解することはもちろん、評価基準の明確化や評価者を対象としたトレーニングの実践によって、採用活動や人事評価における質の向上が期待できます。

候補者を公平に見極める。「面接」の手法を見直そう

面接のトリセツ1

採用活動における課題の一つが、面接官による評価のばらつき。「面接手法」を改めて見直し、判断基準を標準化しましょう。

本資料では「構造化面接法」と「インシデントプロセス面接」をご紹介します。

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