経営課題
公開日: 2021/08/25  

労働生産性とは? 基本知識を身に付けて労働生産性の向上をめざそう

労働生産性とは? 基本知識を身に付けて労働生産性の向上をめざそう

「労働生産性」とは従業員1人当たり、または1時間当たりに、どのくらい成果を生み出したかを測る指標です。ニュースや業務上で耳にしたことのあるビジネスパーソンも多いかと思いますが、その定義や計算方法を正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。

本記事では労働生産性の定義、見方の注意点のほか、労働生産性向上の取り組みについても紹介します。

コストを抑えながら優秀人材を採用する「助成制度活用」

労働力人口の減少および地方から東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)に人材が流入する「東京圏一極集中」の傾向に、なかなか⻭止めがかかりません。地方企業の人手不足は深刻さを増しています。この流れを是正するために、国、地方自治体ではさまざまな施策を講じています。

本資料では、地方企業の人材採用に役立つ、国からの各種助成制度に関する情報を、内閣府と厚生労働省への取材を通じてまとめました。制度を利用する際のポイントなども解説しています。

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1. 労働生産性の定義

労働生産性の定義

まず生産性とはどのように定義されるのでしょうか。ヨーロッパ生産性本部(※)によると「生産性とは生産諸要素の有効利用の度合いである」とされています。

生産の際に必要とする原材料・機械設備・人などを「生産要素」といい、実際に生み出された「生産」と「生産要素」の割合が生産性です。生産諸要素をどれだけ効果的に使っているのかを示す指標です。

生産要素のうち「人」に注目するのが労働生産性で、少ない労働量で多くの生産成果を得るほど労働生産性が高いことになります。

※ヨーロッパ生産性本部…生産性を向上させる組織的な活動が必要であるとの考えから、1953年に発足した組織。1959年にはローマ会議において生産性の概念について定義した。

1-1. 労働力ベースの物的労働生産性と付加価値労働生産性

生産性の基本の計算式は「産出(output)÷投入(input)」ですが、生産性には「労働力」や「資本」など複数の切り口があります。ここでは「労働力」を切り口にした労働生産性を2種類紹介していきます。

1:物的労働生産性

物的労働生産性=生産量÷労働者数(もしくは労働者数×労働時間)

生産量とは物理的に作りだされた産出量。大きさや重さ、個数などが該当します。

2:付加価値労働生産性

付加価値労働生産性=付加価値額÷労働者数(もしくは労働者数×労働時間)

付加価値額とは新しく生み出したものの価値を金銭的に算出したもので、次の計算式で表されます。

【加算法】
付加価値額=経営利益+人件費+賃借料+減価償却費+租税公課

【控除法】
付加価値額=売上高-外部購入価値※

※外部購入価値…原材料費、購入部品費、運送費、外注加工費など

物的労働生産性と付加価値労働生産性どちらにおいても「労働者数」を「労働者数×労働時間」とすることがあります。「労働者数」で計算した場合は1人当たりの生産性が算出でき、「労働者数×労働時間」で計算した場合は1時間当たりの生産性を算出できます。

物的労働生産性は「量」を、付加価値労働生産性は「質(利益)」を測ります。どちらに注目するのかは、その産業の特徴や量と質、インプットとアウトプットのプロセスのうち、労働者をどこに位置づけるのかによっても変わるため、企業によってどちらの生産性に注目していくかは異なります。

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2. 労働生産性を見るときの注意点

労働生産性を見るときの注意点

「生産性」に関する指標には複数の種類があるため、違いをしっかり理解しておきましょう。また、労働生産性を国際比較する場合は、その見方に注意が必要です。

2-1. 多様な生産性の指標

労働生産性以外にも次のような生産性の指標があります。

1:資本生産性

「生産量、もしくは付加価値額」を資本ベースで割るものです。

資本生産性=生産量(もしくは付加価値額)÷資本ストック量

2:全要素生産性

「生産量、もしくは付加価値額」を労働、資本、原材料などのすべての生産要素で割るものです。

全要素生産性=生産量(もしくは付加価値額)÷すべての生産要素(労働・資本・原材料など)

自社の生産性を検証するために統計資料の生産性を参考にすることがあるでしょう。そのような場合には、どの「生産性」が使われているのか意識することが必要といえます。

なお、国全体の生産性を測る場合は、付加価値額を「GDP(国内総生産)」に置き換えて計算します。その場合の計算式は「GDP※÷就業者数(もしくは就業者数×労働時間)」です。

※国際比較の際は物価水準などを考慮した「購買力平価GDP」を使用

2-2. 日本の労働生産性の見方

労働生産性を諸外国と比較する場合に注意すべき点について述べます。

公益財団法人日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2020」によると、OECD(経済協力開発機構)加盟諸国の1人当たりの労働生産性(GDPベースの労働生産性)を比較した場合、日本は37カ国中、26番目(2019年)です。決して高い順位ではありません。1990年には15位でしたが、その後徐々に順位を落としています。また成長率も、他国の成長率と比べて横ばいです。

ただし、これは単純に就業者1人当たりで見た労働生産性を測っており、正規・非正規雇用の区別がされているわけではありません。また、短時間労働者も含まれており、正確に1人当たりの労働生産性を表しているわけではないといえます。

日本では1990年代後半から非正規雇用が増加してきていますし、正規・非正規雇用の構成が国によって異なることを踏まえて、1人当たりの労働生産性を見るべきだといえます。

参考:労働生産性の国際比較2020 (p4~7)│公益財団法人日本生産性本部

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3. 日本における労働生産性の現状と課題について

日本における労働生産性の現状と課題について

日本の労働生産性の状況を、課題も含めて見ていきます。

3-1. 労働生産性の産業格差がある

日本生産性本部の「日本の労働生産性の動向 2020」を見ると、就業1時間当たり付加価値額で算出する名目労働生産性は2019年度で4,927 円となっています。1995年は4,177円、2009年では4,490円と徐々に高くなっていることもわかります。同時に労働時間は緩やかな減少傾向になっており、国際的に見ても長時間労働の部類ではなくなってきています。

参考:日本の労働生産性の動向 2020(p7)│公益財団法人日本生産性本部

一方で産業別に見ると、労働生産性格差が生じています。

例えば、厚生労働省の「平成28年版 労働経済の分析」によると、製造業と飲食サービス業を比較した場合の格差が大きく、2013年の飲食サービス業の労働生産性を「1」とした場合の製造業の割合は「3.83」です。主要国の中で見た場合も、ドイツに次いで格差が大きくなっています。

参考:「平成28年版 労働経済の分析」 第2章 労働生産性の向上に向けた我が国の現状と課題 (p73.74)│厚生労働省

さらに、日本生産性本部の「日本の労働生産性の動向2020」から、2020年4~6月期の労働生産性を前年同期と比較したときの伸び率を紹介します。

物品賃貸業の「+5.7%」や金融業・保険業の「+2.0%」など労働生産性が伸びた産業がある一方で、宿泊業「-61.7%」、生活関連サービス「-36.0%」、飲食店「-35.8%」と労働生産性が落ち込んだ産業もあります。

参考:日本の労働生産性の動向 2020(p15)│公益財団法人日本生産性本部

労働生産性が落ち込んだ産業については、新型コロナウイルスにより人々が外出や人との接触を避けたことや、外国人観光客などのインバウンド需要が消失した影響と推測されます。

このように見ていくと、産業構造によって労働生産性の水準が異なることがわかります。

また、リーマン・ショックやコロナ禍のように、経済全体に影響を与える出来事が発生したとしても、それがどの程度労働生産性に影響するかは産業ごとに差があります。そのため、労働生産性を自社運営に活用する場合、同じ産業で比較をするなら単純比較も可能ですが、他の産業と比べて比較する場合は産業構造の違いも踏まえて考えなければなりません。

3-2. 人的資本への投資が伸び悩んでいる

厚生労働省の「平成28年度版 労働経済の分析」によると製造業、卸売業、小売業、飲食サービス業など、複数の産業において1人当たりの能力開発費は伸び悩んでいます。

日本の少子高齢化などを踏まえると、一人一人が生み出す付加価値を向上させることが非常に重要です。そのため、人的資本への投資を増加させることが課題であるといえるでしょう。

また労働生産性の課題は「社会構造」と「企業における仕組み」の両方から解決を図る必要もあります。そこで企業が取り組める「企業の課題解決」について、次の項で触れていきます。

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4. 労働生産性を向上させるための取り組み

労働生産性を向上させるための取り組み

従業員個々の労働生産性を向上させるために、企業が取り組める施策を紹介します。

4-1. 業務の可視化

労働生産性を向上させるためには、業務を可視化して現状を把握することが重要なプロセスとなります。

まず「コストがかかっている工程はどこか」「人員が足りていない部署の発見」など、自社における労働生産性の課題を見つけます。課題が見えたら解決のために工程のスリム化や組織内の業務分配の見直しなど、必要な対策を行います。無駄を発見して取り除いていく作業を繰り返し、労働生産性における本来のポテンシャルを取り戻していきましょう。

4-2. コア業務に集中した人材配置

自社の強みである領域や中核業務(コア業務)を選び、そこに人材を集中的に投入します。これは、ノンコア業務の負担が大きい場合に、特に有効な手法です。

ノンコア業務についてはアウトソーシングを行い、投入していた人材や時間をコア業務へ集中させるのも一つの方法ですが、委託コストがかかることに注意しましょう。

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4-3. 適切なマネジメントと人材育成

個々の従業員の適性や能力を知り、特性や能力に応じた人員配置をすることも重要です。そのためには、丁寧なマネジメントと、能力やステージごとの研修を行うといった人材育成が必要です。従業員が成長する仕組みをつくりあげていくことで従業員一人一人の生産性向上につながるでしょう。

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4-4. テクノロジーの活用

AIや機械学習などの認知技術を活用したソフトウエア型のロボットである、RPA(Robotic Process Automation)を取り入れることで業務自動化が図れます。またグループウエアの活用は情報共有を容易にすることで作業効率を向上させます。

特に互いに離れた場所で働くリモート環境では、業務の共有やコミュニケーションを取るのにテクノロジーの活用が重要です。

経済産業省、 厚生労働省、文部科学省による「2020年版 ものづくり白書」ではデジタル技術を導入したほうが人材の定着状況が「よい」との調査が出ています。

また「デジタル技術を活用したことによる、ものづくり人材の配置や異動における変化」の質問に対しては「そのままの人員配置で、業務効率が上がったり、成果が拡大した」と回答した企業が約半数で、かつ最多でした。テクノロジーの活用によって作業効率が上がるだけでなく、従業員の業務負担を軽減することで人材定着の効果も得られるとも考えられます。

参考:2020年版 ものづくり白書(p21)|経済産業省 厚生労働省 文部科学省

4-5. 労働環境の改善

従業員が働きやすい環境を整えることで仕事への意欲が高まり、労働生産性の向上につながるといえます。

環境改善の手法はさまざまですが、例えば以下のようなものが考えられます。

残業の削減

業務の可視化で作業の無駄を省くことや、従業員間で互いに業務サポートを行います。可視化や業務サポートがうまくいくよう、上司のマネジメントも徹底しなければなりません。職場全体で定時に業務を終わらせる仕組みをつくり、労働環境の改善につなげます。

福利厚生の充実

健康診断・人間ドック・各種予防接種などを実施することで従業員やその家族の健康面に対するサポートを行います。それにより日々安心して働くことができるでしょう。

有給休暇の取得

プライベートも充実できるよう、必要に応じて有給休暇が取得できることも重要です。働き方改革に伴い2019年から年5日の年次有給休暇の取得が義務付けられています。従業員のリフレッシュを図るだけでなく、仕事への意欲向上やイノベーションの創出を促し生産性の向上が期待できます。

参考:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説 2019年4月施行│厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

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5. 労働生産性を向上させる取り組みでは人材育成に注目

労働生産性を向上させる取り組みでは人材育成に注目

労働生産性の向上のためには人材育成によって一人一人のスキルを高めることも重要です。その際、現場レベルではなく明確な経営方針をもって人材育成を行うことで、安定した育成が行えます。また、従業員と企業側の施策に隔たりが生じないよう、経営方針を丁寧に説明することも重要です。

さらに、独立行政法人労働政策研究・研修機構の「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」によると、従業員の能力が向上すると、仕事への意欲も高まるとされています。

現場に時間的余裕がない場合はOFF-JT(職場外研修)や、自己啓発支援など、職場以外での育成方法も検討するといいでしょう。先の労働政策研究・研修機構の調査では、OFF-JTの効果を認めた企業は91.1%に上ります。

また、従業員を育成するほかにも、優秀な人材を採用することも選択肢の一つでしょう。

参考:「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」(p9)|独立行政法人 労働政策研究・研修機構

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6. 労働生産性向上における注意点

労働生産性向上における注意点

企業が労働環境の改善や人材育成の取り組みを進めても、結果が伴わない場合もあります。例えば、テレビ会議やチャットなどを取り入れたことで、むしろ長時間労働が助長されてしまうケースがあります。

これは会議の行いやすさからテレビ会議の機会が増え、通常業務の時間が圧迫されることや、深夜や休日にもチャットでのやりとりが発生してしまうなど、従業員にとっての負担が増えることが原因です。

ツールの導入には価値がありますが、導入する目的を忘れてはなりません。労働生産性を向上するために従業員の働きやすさをサポートするのであれば、従業員本位でツールの有効性を判断することが必要です。

組織を構成するのは人である以上、人が企業の原動力といえます。従業員一人一人が「効率がいい」「働きやすい」と思える組織をつくることで、長期的に労働生産性の向上を実現していきましょう。

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7. 労働生産性向上のポイントは、従業員本位の付加価値向上にあり

労働生産性向上のポイントは、従業員本位の付加価値向上にあり

少子高齢化が進むなか、従業員一人一人が生み出す付加価値を向上させることは、会社運営にとって非常に有益なことであるはずです。そのためには、効果的な投資を行っていくことが必要でしょう。また、労働生産性向上のためにテクノロジーやツールを取り入れることも重要ですが、最終的にそれらを運用していく従業員の視点に立って、導入を進める必要があります。

従業員にとって働きやすい組織づくりによって、労働生産性の高い企業へと成長していきましょう。

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