経営課題
インタビュー
公開日: 2021/12/21  

社員は「同志」。1,000名規模の組織を率いる、経営者の経営観や採用観とは

社員は「同志」。1,000名規模の組織を率いる、経営者の経営観や採用観とは

企業規模が大きくなればなるほど、経営者が採用に直接関わる機会は減少します。しかし、「どのような思いで事業を展開し、社員に向き合い、社員に何を期待しているか」をトップ自らが定期的に発信してこそ、そこに共感する仲間が集い、結束力が増して事業が加速するものです。

今回は「どのように経営と採用を接続し、事業を運営しているのか」を知るべく、佐賀県伊万里市から事業をスタートさせ、ブライダル事業をメインに九州で結婚式場を展開する、アイ・ケイ・ケイホールディングス株式会社の金子和斗志代表取締役会長兼社長CEOにお話を伺いました。株式会社ビズリーチ代表取締役社長の多田洋祐が聞き手となり、金子会長の経営観や社員採用、育成への向き合い方に迫ります。

※連載企画「地方企業の経営と採用を考える」第1回目の記事はこちらから、第2回目の記事はこちらからどうぞ。

■インタビュイープロフィール

金子 和斗志 氏

金子 和斗志 氏
アイ・ケイ・ケイホールディングス株式会社 代表取締役会長兼社長CEO

2000年、九州初となるゲストハウス型ウエディング施設を開業。2013年には東京証券取引所市場第1部銘柄に指定。その後ASEANを中心とした世界への事業展開を見据え、2017年にインドネシア共和国の首都ジャカルタに現地法人を設立。著書に「サービスの精神はありがとうから生まれる」(コスモ教育出版)がある。

■インタビュアープロフィール

多田 洋祐

多田 洋祐
株式会社ビズリーチ 代表取締役社長

2006年、中央大学法学部卒業後、エグゼクティブ層に特化したヘッドハンティングファームを創業。2012年、株式会社ビズリーチに参画し、その後ビズリーチ事業部長を務める。2015年より取締役として、人事本部長、スタンバイ事業本部長、HR Techカンパニー長等を歴任。2020年2月、現職に就任。

1. 家族のために打ち込んだ仕事。徐々に「お客様の役に立ちたい」という思いが原動力に

多田:もともとは、家業として佐賀県伊万里市でビジネスホテルを運営されていたんですよね?

金子氏:はい。私は勉強嫌い、努力嫌いの学生だったんですが、両親や兄が家業に温かく迎え入れてくれました。だから、最初は家族のために一生懸命仕事をしていましたね。「自分のため」という動機では火がつかず勉強をしなかった私も、家族のためと思うと仕事に打ち込むことができました。一生懸命働いていたら、お客様がたくさん来てくれるようになって、家族だけでは仕事を回せなくなったためスタッフを採用したのです。そこからまた一生懸命に仕事をしていたら、さらに繁盛するようになりました。

アイ・ケイ・ケイホールディングス株式会社の金子和斗志代表取締役会長兼社長CEO

多田:ブライダル事業に転換したのは、どのようなきっかけからだったのですか?

金子氏:1981年に私自身が結婚式を挙げたのですが、同時期に父親が「5億の投資をしてホテルを作る」と言い出しました。当時は年間の売り上げが数千万円だったのに、5億を投資するとはかなり思い切った決断ですよね。もちろん金融機関からお金を借りますし、普通のホテルの売り上げだけでは5億の借金は返せないだろうと思っていたら、母親が「ウエディングをやるのがいいんじゃない?」とふと口にしたのです。お客様に感動を提供する事業であるとともに、収益性が高く将来性もある事業だと判断して、ブライダル事業に参入しました。

多田:当時、ホテル内の式場で結婚式を挙げる文化は世の中にあったのでしょうか?

金子氏:都会にはあったでしょうが、地方かつ人口6万人の伊万里市にはそういった文化がなく、農協会館や割烹旅館で式を挙げるのが主流でした。1982年10月にオープンしたのですが、翌年にライバル施設が地元にオープンしたため、より難しい状況となったように見えたようで、皆から「つぶれるぞ」と言われました。ですが、もう「ブライダル事業なしに当社の未来はない」と覚悟は決まっていました。

多田:覚悟を持ってブライダル事業を展開されるなかで、事業のどんなところに魅力を感じられていましたか?

結婚式場

金子氏:やはりこの事業の魅力は、一生に一度の「晴れの日」のお手伝いができることです。ブライダル事業をしていると、新郎新婦や両家のご両親が、亡くなるまで私たちの顔と名前を覚えてくださっています。「●●さんに任せてよかった」と思い出していただける場面もたくさんあります。それが大きな魅力ではないでしょうか。私が直接お客様の結婚式をプロデュースしていたときは「一組一組のお客様と、どれだけ思い出作りができるか」を大切にしていましたが、そうした価値観に共感して、サービスに満足してくださったお客様が、次のお客様を紹介してくださることも多々ありました。

多田:「金子さんにお願いしてよかった」と思った方が、まるで営業担当者のように周りに広めてくださったのですね。それほど、お客様の心を動かす事業ということでしょうか。

金子氏:はい。当時、常に意識していたのは「お客様を好きになり、お客様の役に立ち、約束を守る」ことです。この姿勢で仕事をしていたことで、お客様にご満足いただき、これまで事業を継続できたと思っています。

2. コロナ禍の影響で半年間売り上げゼロ。逆境のなかで、経営への情熱が増した

ビズリーチ多田

多田:2020年、新型コロナウイルスの感染が拡大しました。ブライダル業界には、大きな影響があったかと思います。

金子氏:ええ、大変でした。半年間売り上げゼロという期間もありました。けれど、事業や会社の存続を心配してはいませんでした。自己資本比率が40%超ということもあり、金融機関からの借り入れも最小限で済みました。また、これまでもステークホルダーの皆様、お客様、スタッフ、取引先、地域社会の皆さんに貢献したいという思いで経営をしてきたので、それがぶれずに、かつ「お客様を好きになり、お客様の役に立ち、約束を守る」という姿勢を大事にしていれば、会社がつぶれることはないと確信していたのです。まだ「回復した」とはいえない状態ですが、経営幹部と現場のスタッフが一体となって立ち向かっています。

多田:予測できなかった外部環境に影響を受けたなかで、経営や事業に対する感覚の変化はありましたか?

金子氏:私は現在69歳ですが、2年前に社長を交代して会長職に就いて以降、少し気の緩みがあったように思います。しかし、コロナ禍を機に経営への情熱が再び湧き上がってきて「原点に返り、もっと真剣に、仕事や人生に取り組みたい」「まだまだこれから、人生を懸けてこの事業に取り組んでいきたい」と思うようになりました。そのため、アグレッシブに事業を展開していこうと、11月から持ち株会社体制へ移行し、アイ・ケイ・ケイの社長を兼務することを決めています。

多田:逆境になったことで、経営や会社に対する情熱が増したのですね。ブライダル事業に対する考え方で、変化したことはありますか?

金子氏:少子高齢化や晩婚化によって、ブライダル業界の市場規模は縮小傾向です。こうした社会の変化や多様化に対応しながら、ウエディングの川上から川下まで幅広い事業を展開していこうと考えています。現在行っているブライダル事業は川中にあたりますが、川上にある婚活事業にも進出します。既存事業と相乗効果のあるビジネスを今後展開していく予定です。

新しい事業を展開していくにあたって、一番のポイントは一緒に働く人財です。課題発見力と課題解決力を持った方をどんどん仲間に迎え入れながら、市場を切り開いていきたいと考えています。

多田:キーワードは「課題発見」と「課題解決」なのですね。

金子氏:私自身、上場を目指していたときは、まず課題を洗い出すことから始めました。「優秀な人財の確保」と「ビジネスモデル」に課題があると気付いたことで、解決するための思考や行動ができるようになって、結果的に優秀な人財に出会い、最適なビジネスモデルを構築して上場できました。ビジネスにおいては、課題発見と課題解決の繰り返しが大切だと思っているからこそ、そうした能力をお持ちの方とともに、自社や世の中の課題解決に取り組んでいきたいです。

3. 社員は同じ時代を生きる「同志」。ご縁ある人の笑顔と幸せに貢献したい

地壇の様子

多田:金子会長にとって、自社の人財、つまり社員の皆様はどのような存在ですか?

金子氏:「同志」です。

多田:「同志」ですか…! その言葉には、どのような思いが込められていますか?

金子氏:たった一度の人生のなかで同じ時代を生きて出会えた、これだけでもう「同志」ではないでしょうか。せっかくなら、この出会いを一生の出会いにしたいと思っています。

多田:ご両親と一緒に働いていた頃から徐々に仲間が増えていったと思いますが、最初から「同志」という感覚をお持ちだったのですか?

金子氏:いえ、全然そんなことはありません。社員との関わり方こそ変わっていないものの、「同志」と思うようになったのは、正直なところ60歳を過ぎてからです。

60歳にもなると、体力も落ちてきて、自分ひとりではできないことが増えてくるものです。そのときに、社員を「同志」だと捉えて、信頼してどんどん任せていかなければならないと感じました。そう思うようになってから使命も変わり、「ご縁ある人々の笑顔と幸せのために」が、今やグループ共通の使命になっています。

アイ・ケイ・ケイホールディングス株式会社の金子和斗志代表取締役会長兼社長CEO

多田:なるほど。年齢を重ねるなかで、社員の方への思いも、使命も変化していったのですね。

金子氏:もともと、自分の考えや思いは「言わなくても伝わるだろう」と思っていました。しかし、モノやカネが動くのは分かりますが、ヒトの心の動きは目に見えないからこそ、「言わないと伝わらない、伝えていこう」とスタンスも変化しました。スタッフやその家族、取引先や株主などを含めると、5万人以上の方とのご縁があります。そういった方たちの笑顔と幸せに貢献できないだろうか、ということは常に考えています。全員に対して貢献するのは難しくても、私が1人や2人の笑顔と幸せに貢献することで、今度はその人たちが周りの1人や2人の笑顔と幸せに貢献する…、というような循環が生まれたらいいなと思っていますね。

多田:金子会長自身も、社員の皆様もそう考え実践することで、結果として同志の結束が増すのだろうと思います。

金子氏:同じ価値観を共有することは非常に大切ですよね。同じ価値観や考え方を持てなければ、お客様に「生涯顧客」になっていただくことはできません。これは社員も同じで、一緒に仕事をする以上、価値観の共有は不可欠だと思っています。

多田:価値観を共有した同志が成長するためのフィールドを提供すべく、金子会長はどんなことを大事にされていますか?

金子氏:理念に共感していただける方を採用したうえで「理念に沿ったことであれば、何をしてもいい」と伝えています。

4. 経営者に信念があるかどうか、候補者に見透かされる。信念を持ち、理想を体現せよ

対談の様子

多田:金子会長は、現在どのように採用活動に携わっていますか?

金子氏:昔は最前線に出て、採用全般に関わっていました。今は採用担当者と役割を分担しています。基本的には彼らに任せていますが、数百名規模の会社説明会でメッセージを伝える役割は今も担っていますね。

多田:エネルギーの強い経営者が、会社説明会のように大勢が集う場でメッセージを発するのは非常に効果がありますよね。採用活動は1人ではできないからこそ、各自で得意領域を担っていく、役割分担はとても大切だと思います。ちなみに、今まで数え切れないほど多くの候補者と出会ってきたことと思いますが、採用の場面で経営者にはどんなスタンスや心得が求められるとお考えですか?

金子氏:信念を持ち、理想を体現することですね。思いや考えは表情に出ます。そして、一定の時間を過ごすなかで、候補者の方にも見透かされてしまいます。だからこそ、信念を持って、正々堂々としていることが大切ではないでしょうか。「うちはこんな会社で、こんな人を求めています。一緒にやりませんか」と、真っすぐに伝えられなければなりません。

アイ・ケイ・ケイホールディングス株式会社の金子和斗志代表取締役会長兼社長CEO

多田:哲学を持っていないと、見破られるということですね。非常に考えさせられる言葉です。

金子氏:それに共感してもらえなければ、同志は集まりませんからね。そして、そのような姿勢で採用に臨んだうえで、最後は「ご縁」だと思います。当社の新卒採用の場合、数千名もの学生の方との面接を経て、採用するのはたった100名程度です。だからこそ「その方が良い、悪い」というものではなくご縁の世界だと思っていますし、ご縁のなかった方々には当社以上にその方が輝けるフィールドで頑張ってほしいと願っています。こうした考えやスタンスは、採用活動における役割が変わっても揺るぎません。

5. 人には無限の可能性がある。必要なのは、覚悟と当事者意識

多田:最後に改めて、金子会長が大切にされている社員の皆様との向き合い方を教えてください。

金子氏:人は、誰もが無限の可能性を持っています。ただ、そのことに気付かず「これくらいでいいや」と思って、素晴らしい人生を歩むことを選ばずにいる人もまだまだ多くて、それは非常にもったいないことだと思っています。当社にも、過去の失敗や挫折を乗り越えて活躍している社員がたくさんいますが、まず「自分には無限の可能性がある」と気付くこと、そして覚悟と当事者意識を持って挑戦することで、人はいつからでも変わることができると信じています。

多田:非常に素敵な言葉です。今後、持ち株会社体制へ移行しても、引き続き覚悟と当事者意識を持った同志を集めていかれるのでしょうか。

金子氏:はい。課題発見力と課題解決力を持ち合わせた方を仲間に迎えたいのはもちろんですが、どんなに素晴らしいスキルを持っていても「これくらい見過ごしてもいいや」「この問題を解決するのは、人に任せよう」といった、当事者意識がない状態ではいけませんからね。私もまだまだ向き合っている途中ですが「たった一度の人生をどう生きたいか」を真剣に考えたうえで仕事に臨みたいですし、同じ思いを持った同志とともに働きたいと思っています。

対談の様子

【編集後記】

取材後、金子氏は多田に、採用についていくつか質問をされていて、どのような機会も自己研鑽につなげようとするその姿勢に驚きました。
取材に同席した関係者が「とある人物を採用する際、採用へスイッチが入ったときはその姿勢が時間の使い方に表れていた」と話していましたが、思いを行動に表す、そんな様子を垣間見ることができました。

勉強嫌い、努力嫌いとは対極にある現在の金子氏。
そんな金子氏が率いるアイ・ケイ・ケイだからこそ、これまでも、そしてこれからも素晴らしい同志が数多く集まるのだと思います。

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