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公開日: 2021/07/21  

部下・社員の成長を促す「評価」の仕組み・伝え方
~セミナー参加者から寄せられた10の質問を紹介~

部下・社員の成長を促す「評価」の仕組み・伝え方~セミナー参加者から寄せられた10の質問を紹介~

株式会社ビズリーチでは、2021年6月24日に「納得と成長を生む評価方法」をテーマとしたオンラインセミナーを開催しました。1時間の講演の後に設けた30分の質疑応答の時間では、多くの質問が寄せられました。
時間の関係上、セミナー当日お答えしきれなかった質問に対し、後日、株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役・伊達洋駆さんが丁寧に解説してくれました。本記事ではそのなかから、10の質問の回答をご紹介します。

伊達 洋駆(だて・ようく)氏
株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。修士(経営学)。同研究科在籍中、2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。2013年に神戸大学大学院服部泰宏研究室と共同で採用学研究所を設立し、同研究所の所長を務める。2017年に一般社団法人日本採用力検定協会の理事に就任。
ビジネスリサーチラボでは、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。近著に『オンライン採用 新時代と自社にフィットした人材の求め方』(日本能率協会マネジメントセンター)。

「自己評価が高い」被評価者への伝え方に関する質問

Q1. 自己評価が間違っていることに気付かない/認めようとしない社員へ、効果的なフィードバック方法はありますか?

Q. 評価結果に不満を抱いている社員については、フィードバックの場につくこと自体を拒否する場合も多いのではないかと思っています。
自己評価が間違っていることに気付かない、認めようとしない社員への効果的なフィードバック方法があれば教えてください。

A. 認めようとしないのは「自分を良い存在だと思いたい」「自己イメージを維持したい」から。フィードバックを受ける際の動機別にアプローチを変えてみましょう。

人がフィードバックを受ける際には、
1.「自己高揚動機」(自分を良い存在だと思いたい)
2.「自己改善動機」(自分をより高めていきたい)
3.「自己査定動機」(自分について正確に把握したい)
4.「自己確証動機」(自己イメージを維持したい)

という4つの動機を持つと言われています。

このうち、「自己評価が間違っていることに気付かない、認めようとしない」可能性が高いのは、自己高揚動機や自己確証動機が高い場合です。自己高揚動機が高いと、自分を肯定的にとらえたいために、自己評価の誤りを認めようとしません。自己確証動機が高いと、自分の信じる自分の姿以外は聞き入れようとしません。

受け手の自己高揚動機が高いときは、ネガティブなフィードバックだけではなく、ポジティブなフィードバックを併せて行いましょう。ポジティブなフィードバックは自己高揚動機を満たし、話を聞き入れてもらいやすくなります。

自己確証動機が高いときは、まず被評価者の持つ自己イメージを把握することに努めましょう。被評価者が維持したい自分の姿を理解しなければ、働きかけの方法は分かりません。そのうえで、評価結果のなかで、自己イメージと共通する部分と相違する部分を整理して伝えます。
自己イメージのすべてを否定するわけではないことを理解してもらうとよいでしょう。

Q2. 承認欲求が高い相手に対して、自己評価と他者評価の差をどのように気付かせたらよいのでしょうか?

Q. 自己評価と他者評価の差が発生するなかで、「自己評価者の承認要求」が含まれると思います。承認要求の差を埋めるには、または、それを気付かせる方法に悩んでいるのですがよい考え方はありますか?

A. まず「長所」を伝えてみましょう。長所の自己認識は、被評価者の自己評価を高めることになり、自己評価と他者評価の差を受け止める心理的な準備となります。

自己評価を高いものにしたいという欲求が、自己評価と他者評価の差を生み出しています。ただし、その欲求には、「他者から」認められたい側面だけではなく、「自分で自分を」認めたい側面が含まれています。個人的には、とりわけ後者の重要性が高いと考えています。
評価者は、被評価者が自身の「長所」を見つけることをサポートするようにしたいものです。人には必ず長所があり、それは環境によって異なります。

今、この職場や仕事の環境において、被評価者の何が長所になっているのかを伝えましょう。長所の自己認識は、被評価者の自己評価を高めることになり、自己評価と他者評価の差を受け止める心理的な準備となります。

また、自己評価と他者評価の差を伝える際にも、差があることが持つ「悪い面」だけではなく「良い面」にも言及しましょう。例えば、「周囲に意見を主張すること」について、自己評価より他者評価が低かったとします。これについて「自分が思っているよりも周囲に意見が伝わっていない」と解釈することが可能ですが、同時に、「周囲は自分の意見をもっと受け入れてくれる余地がある」と捉えることもできます。後者にも触れるようにしましょう。

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Q3. 他者評価が自己評価よりも低く、そのことを伝えると、モチベーションがダウンしてしまう部下に対し、有効な接し方はありますか?

Q. 「他者評価と自己評価の乖離は評価者にとってショック→しっかり解釈する時間をとる」に関して、部下がなかなか受け止められず、すねてしまったり、上司や組織への不満に転換してしまったりする場合、有効な接し方などはありますでしょうか。

A. マネージャーに必要なのは、普段から部下が自分自身を知るための支援を行うことです。

人が持つ基本的なバイアスとして、「自分の失敗は環境のせいにする」というものがあります。その意味で、「上司や組織に不満を転換すること」は誰でも起こる可能性のあることです。

このバイアスが生まれる理由は諸説あるのですが、「人は自分の周囲の情報は多く持っている一方で、自分自身の情報をあまり持っていない」ことが、一つの理由として挙げられます。
自分のことより環境に関する情報のほうが多いため、物事の原因を情報が多いところに求めがちなのです。評価の文脈でいえば、部下が自分自身のことをよく把握していないと、周囲に原因を帰する可能性が高くなります。

したがってマネージャーに必要なのは、普段から部下が自分自身を知るための支援を行うことです。例えば、仕事ぶりについて高頻度でフィードバックしたり、1on1などの本音で話し合える機会を定期的に設けたりするなどの対策があり得ます。

Q4. 自己評価よりも低いネガティブな(マイナスの)評価を伝える際、その「評価結果」を本人に納得してもらうためのポイントはありますか?

Q. 手続き的公正(※1)や相互作用的公正(※2)が高かったとしても、評価結果がネガティブ(マイナス評価)であれば、やはり評価の納得度は下がり、しかもそれが自己評価と評価者で乖離があれば評価の納得度はかなり下がります。そのときの、納得度を高めるフィードバックの仕方や手法、ポイントがあればご教示ください。

※1 手続き的公正:被評価者が“評価のプロセス・手続き”に対して公正だと感じること。
※2 相互作用的公正:被被評価者が“評価者とのやりとり”を公正だと感じること。
(詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。)

A. 被評価者との関係構築に努めるか、被評価者の成長志向を刺激するといった準備段階が欠かせません。

日本を含むアジア諸国は、お互いの調和を大事にするため、ネガティブなフィードバックよりポジティブなフィードバックのほうが受け入れられやすいという指摘があります。可能であれば、ポジティブなフィードバックを中心に実行したいところです。

しかし、ネガティブなフィードバックが有効に機能する状況もあります。それは、「評価者と被評価者の関係性の質が高いとき」および「被評価者の成長志向が高いとき」です。

評価者と被評価者の関係性が良質であれば、被評価者は進んでネガティブなフィードバックを求めます。被評価者としても、聞き入れる姿勢が整っているのでしょう。また、被評価者の成長志向が高いと、フィードバックはたとえネガティブなものであったとしても、自分が成長するための重要な情報になるため、積極的に摂取しようとします。

つまり、ネガティブなフィードバックの効果を引き上げるには、被評価者との関係構築に努めるか、被評価者の成長志向を刺激するといった準備段階が欠かせないのです。

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「相対評価」の結果を伝える際のポイントに関する質問

Q5. 相対評価において、評価結果を相手に高い納得度で説明する方法はあるでしょうか?

Q. 給与への連動のため、絶対評価ではなく、相対評価をせざるを得ない環境にある場合、評価のフィードバック、評価の理由説明が非常に難しいと感じています。
相対評価の場合の評価の理由説明をうまくする方法がありますでしょうか。

A. 実質的には相対的な評価であっても、部下に伝える際には、「他者との比較」を意識させないことが非常に重要です。

企業は原資が限られています。そのため、特に広義の報酬に関連する評価は、相対的なものにならざるを得ません。しかし、実質的に評価が相対的であることと、それをどのように被評価者に伝えるのかというのは、多少関連しつつも別の問題です。

実質的には相対的な評価であっても、部下に伝える際には、「他者との比較」を意識させないことが非常に重要になります。例えば、「あなたの評価は他の人と比べて高かった/低かった」という伝え方が含まれていると、その後、部下に絶対評価をしても、部下の満足感は低くなるという研究もあります。

評価においては、部下に「他者の存在をいかに意識させないか」に注意して説明をしてみてください。具体的には、比較を行う際に、部下の過去や目標と比べるなどの工夫が必要になるでしょう。
なお、学術研究においては、ほんの少し「他の人と比べて」という言葉が入るだけで、人は他者との比較を気にすることが分かっています。評価者の繊細な関わりが求められます。

Q6. 二次評価で相対配分を入れるため、一次評価と変わるケースがあります。相対配分を入れた二次評価の結果に対し、納得感を高めるポイントはあるでしょうか?

Q. 二次評価時に相対配分を入れている場合、一次評価での公正を進めていても、二次評価で評価が変わるケースがあります。その場合に、どのように納得感を高める工夫ができますか?

A. 評価のプロセスを被評価者に丁寧に説明すること、そして、被評価者からの質問を受け付けることが重要です。

これは、手続き的公正を高めるための方法を参考にするとよいでしょう。丁寧に評価を行っている企業でも、あるいは、そうした企業であるからこそ、途中で評価結果が変わる可能性はあります。

評価が変わること自体が悪ではありません。しかしもし、どのタイミングで、どのような理由で評価が変わったのかが被評価者にとって不透明であれば、被評価者は公正な手続きに基づく評価だと感じられないでしょう。

重要なのは、評価のプロセスを被評価者に丁寧に説明すること、そして、被評価者からの質問を受け付けることです。評価プロセスがブラックボックスになっており、なおかつ、その中身を知るための機会が一切与えられていないと、被評価者の納得感は高まりません。

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二次評価や複数評価者による「評価結果の違い・変化」に関する質問

Q7. 「上司」と「上司以外」それぞれの評価者による評価の公正性を両立させる方法はあるでしょうか?

Q. 上司の主観による評価も重視しているのですが、異なる評価者による評価の公正性と両立させる策があれば教えていただきたいです。

A. 評価者によって評価が異なっても、評価の差から意味を見いだし、被評価者の成長につなげることはできます。「多面評価」を行ってみてはいかがでしょうか。

上司からの評価に加えて、部下や同僚、顧客からの評価を併せて行う、「多面評価」を行ってみるのはいかがでしょうか。多面評価には一定のコストがかかりますが、それなりのリターンもあります。

多面評価の場合、評価者によって評価が異なっていても構いません。評価の差から意味を見いだし、被評価者の成長につなげることができるからです。

複数の評価者が特定の人に対して同じ評価を行うことを、専門的には「等質性」と呼びますが、等質性を確保しなくても、被評価者にとってプラスになることはあり得るのです。

Q8. 人によって評価をする際の視点やポイントは異なるという前提のもと、指標を合わせていくには、どのようにしたらよいのでしょうか?

Q. 上司によって評価が変わる可能性があると思います。その指標を合わすのが非常に難しいのですが説明していくしかないのでしょうか?

A. マネージャー同士で集まり、部下の評価についてすり合わせする機会を作ってみてはいかがでしょうか。他の部下の活躍だけでなく、自分の評価時のバイアスに気付く機会にもなるでしょう。

人はそれぞれ、評価に際したバイアスを持っています。バイアスは、研究で明らかにされているものだけでもたくさんあり、まだ命名されていないものを含めると、人による評価結果はバイアスの産物ではないかと思えるほどです。

こうしたことを踏まえると、マネージャーによって評価が異なるのは半ば仕方ないことかもしれません。ただし、事後的に対処する方法はあります。一度マネージャーが部下の評価を下した後に、マネージャー同士で集まり、部下の評価についてすり合わせする機会を作るという方法です。

手数のかかる方法ではありますが、部下を持つ他のマネージャーと話をすることによって、自分の知らない部下の活躍や、部下を評価する際の視点、さらには、自分の評価時のバイアスなどが学べます。

ホワイトペーパーへの遷移バナー

Q9. 評価にあたり細かい制度を運用していても、評価の「甘辛」が部署や人によって異なる場合、どのように是正していったらよいのでしょうか?

Q. ベンチャーの会社になります。細かい制度を運用しているのですが、甘辛が部署によってあり、是正されずうまく運用ができていない状況です。甘辛を是正していくにはどのような対応が有効でしょうか?

A. もし、リスク追求志向の高い人材に活躍してもらう必要があるのなら、手続き的公正が高い状態は退屈に感じられてしまいます。多少の甘辛には目をつぶっておいてもよいでしょう。

まず注意が必要なのは、手続き的公正は確かに一般には良い効果をもたらすのですが、特定の人にとってはマイナスに働くという点です。具体的には、リスクを冒して物事を進めることを好むような「リスク追求志向」が高い人にとって、手続き的公正が高い状態は退屈に感じられ、満足感が低下するという研究もあります。

新たなものへの挑戦を担う際には、リスク追求志向の高い人材も必要になります。ベンチャー企業と一口に言っても多種多様ですので、一概には言えませんが、もし新規性の高いアウトプットを求める環境であれば、手続き的公正を高めてリスク追求志向の高い人が寄り付かなくなってしまうのは問題でしょう。

リスク追求志向の高い人材に活躍してもらう必要があるのなら、多少の甘辛には目をつぶっておいたほうがよいとも考えられます。他方で、リスク追求志向の高い人材を求めていない場合は、マネージャー同士が評価の方法や結果などについて話し合う機会を設け、甘辛を是正していきましょう。

データでわかる即戦力人材の転職意識・仕事観

「手続き的公正」に関する質問

Q10. 事前に評価基準を伝えると、それに合わせようとして印象管理が進んでしまうのではないのでしょうか?

Q. 事前に評価基準を伝えると、それに合わせようとして印象管理が進んでしまうのではないのでしょうか?

A.採用においては、事前に評価基準を伝えたほうが、印象管理が減る傾向がみられています。「良く見られる」ことよりも、「自分に合っているか」を、候補者にしっかり考えてもらえるよう企業は場づくりをする必要があるでしょう。

採用の文脈に限って回答します。むしろ、学術研究では逆の結果が得られています。事前に評価基準を伝えないと、何を評価されているか分からず、候補者は身構えます。そして一般的に良いとされている行動をとるべく、多くの印象管理を行うのです。

対して、選考基準を伝えておけば、全方位で印象管理を行おうとする傾向が薄まります。その結果、選考基準を伝えた場合と伝えていない場合を比較すると、前者のほうが印象管理はいくぶん減る可能性があるのです。
しかしもちろん、選考基準を先に共有しても、候補者の印象管理がゼロになるわけではありません。そこで、「自分に合った企業に入らなければ、入社後に適応できず、企業も候補者も幸福にはならない」と候補者にしっかり説明することが重要になります。

企業にとっても候補者にとっても、必要なのは、たくさんの内定者、たくさんの内定先ではなく、自社に合った内定者、その人に合った内定先に出会うことです。こうした採用/就職・転職をめぐる基本原理を候補者に話すのは、企業側の重要な仕事の一つではないでしょうか。

編集:瀬戸 香菜子(HRreview編集部)

評価に対して、不満そうな部下・社員は、いませんか?

部下・社員の成長を促す「評価」の仕組み・伝え方

その原因は、「評価をめぐるバイアス」や「3つの公正感」が影響しているかもしれません。「納得と成長を生む評価方法」をテーマに、株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役の伊達洋駆さんが解説します。

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