人事課題
2020/02/20

今求められる人材戦略 ~働く人を尊重する人材マネジメントの時代~|FUTURE of WORK

今求められる人材戦略 ~働く人を尊重する人材マネジメントの時代~ 守島 基博 様(学習院大学 経済学部 経営学科 教授)
ビズリーチ FUTURE of WORK

学習院大学
経済学部 経営学科 教授
守島 基博 様

本記事は、株式会社ビズリーチの創業10年を記念して運営していたWebメディア「FUTURE of WORK」(2019年5月~2020年3月)に掲載された記事を転載したものです。所属・役職等は取材時点のものとなります。

「人革命」が起こっている

「人革命」が起こっている。現在、経営者や人事プロフェッショナルが、AIの進展等の技術革新やグローバル化などの経営環境の変化と並んで、細心の注意を払わないとならないのは、人の大きな変化である。人材マネジメントとは、いつの時代にも、企業経営のために必要な人材を確保し、活用することがその目的である。だが、対象となる人そのものが変化する時、これまでの考え方ややり方を変革することが必要である。実際欧米の企業はそうした動きに早くから対応し、人材マネジメントの根本思想や仕組みを変革している。

では、「人の変化」とは何なのか。具体的には意識や、価値観、行動などの変化である。デロイトミレニアル年次調査のグローバルレポート2017年版によると、ミレニアル世代(この調査では、1983~94年生まれの世代)に対して、「現在勤務する企業にどのぐらいの期間働くつもりか」を聞いたとき、世界30か国の平均では、38%が「2年以内」、24%が「2~5年間」と答えており、日本でも各々30%、23%と大きな違いはない。ちなみに、同調査の2018年版では「2年以内」が世界平均で43%、日本で37%に上昇している。様々な理由があるにせよ、組織への定着意識は確実に弱まっている。

また同調査の2016年版では、企業選択にあたって重視する要因としてミレニアル世代が挙げた要因の1位は、報酬を除いて、「適正なワークライフバランス」であり、2位の「昇進やリーダーになる機会」よりも上にくるという結果が報告されている。日本だけに限定すると、1位は同様にワークライフバランス重視であり、2位が「仕事に意義を感じること」がくる。また2018年版では、自分が働く企業を選択する際に重視する項目として、わが国では、50%が「健康増進のためのプログラムとインセンティブ」を挙げており、世界平均の33%を大きく上回っている。最後に2017年版では、「仮に選択肢があるとして、フリーランスという働き方を選択するか」という問いに対して、肯定的に答えたのは、世界平均で31%であり、日本では33%とさらに高かった。仕事選択において、自己のニーズや希望を優先させる価値観は強くなりつつある。

問題はこうした変化をどこまで真剣に捉えるかである。往々にして私たちは、こうした結果を、「今年の新入社員は〇〇タイプ」というような表現でかたづけてしまう傾向がある。だが、2025年にはわが国でミレニアル世代が労働力の半分を超えるのである。確かに年齢を重ねるにつれて、一定の変化もありえるだろうが、近い将来には、企業を評価する重要な基準として、自己のニーズや希望を優先させ、企業がそれに応えてくれない場合、他に移ったり、起業を選択したりする価値観をもった労働者が大半となる可能性があるという認識はもつべきだろう。

労働市場も変化している

そして、「人革命」に加えて、人材マネジメントの急速な改革を要請する労働市場内の要因も顕在化している。働く人の変化と同時に、労働市場にもいくつかの変化が起こっているのである。3点を挙げよう。第1に、AIなどの技術革新やその他の経営環境の変化が急速で、少し前の知識や経験などが役に立たなくなる「知識・経験の半減期」がどんどん短くなっていることである。結果として、企業内での育成や仕事経験の蓄積に基づいた技能形成という人材確保の考え方が通用しないタイプの仕事が急速に増え、企業にとって、新しい技術や知識をもった人材を継続的に外部から取り入れることが経営上極めて重要な課題となる。

第2に、転職のためのインフラが急速に整備されつつあることである。「ビズリーチ」等の転職サービスが進化してきたこともあり、働き手が労働市場内の自分の価値を認識し、潜在的転職先と比較できる環境が整ってきた。さらにリクルートワークス研究所の調査(2017年)によると、正社員の年収で、転職後1年目はアップした人がダウンした人を少し上回る程度だが、2年目になると10%アップが47%で10%ダウンが26%と、転職に際して年収がアップした人がダウンした人を大きく上回っている。若手を中心に、優秀で企業が必要とする知識・経験をもった人材にとって、転職という行為がキャリアアップ、労働条件アップの手段として認識され始めているのである。

そして第3が、わが国での顕著な人材不足である。背景としては、少子高齢化があるが、同時に経営者として考えなくてはならないのは、近年起こりつつある経営戦略の変化である。現在、企業の成長戦略が大きくかわるなか、新たなタイプの人材へのニーズが増えている。AI技術者や、企業変革やM&Aの専門家等、これまでわが国で育成されてこなかった種類の人材がひどく不足している。

採用とリテンションが人材マネジメントの中核

働く人の意識が大きく変わり、人材が、企業との関係における自己のニーズ充足を重視し始め、満たされない場合は他企業への転職もいとわないようになっているなかで、企業は新たな知識と経験をもった人材を確保しなければならない状況が常態化し、同時に、確保した人材が流出する可能性も高まっているのである。そして労働市場全体としては必要な人材は枯渇している。

こうしたなかで、冒頭で述べた「企業経営のために必要な人材を確保し、活用する」人材マネジメントにおいては、何が重要なのだろうか。当然、採用という機能はこれまでにも増して重要になる。また同時に重要になるのは、リテンションである。ただし、リテンションとは、採用した人材を単に繋ぎとめるだけではなく、戦略の達成に貢献してもらうことまでも含んだ概念である。アジアを含む、グローバルにタレントウォー(人材獲得競争)を戦っている企業では、採用とリテンションが人材マネジメントのすべてだと言い切るケースも出てきている。わが国の企業も採用とリテンションを中核とした人材マネジメントに大きく舵を切るべきだろう。

人中心の人材マネジメント

そして、ここでさらに重要なのは、人材マネジメントの根本的な見直しである。具体的には、これまでのような働く人を戦略達成のための単なる資源として捉えるのではなく、一人一人を尊重し、個のニーズや希望を把握し、それに可能な限り応える人材マネジメントへの転換である。これまで人材マネジメントというと経営戦略との連動が強調されてきた。必要な人材の能力スペックは戦略から導かれ、育成や配置転換は企業の経営上の必要性を第一に考えて実施される、という具合である。

だが、先にも述べたように、今後働く人は強い意思をもち、その企業で自分のニーズや希望が満たされないと考えたら、貢献を止めたり、また他の選択肢を選んだりする可能性が高くなる。逆に自分のニーズや求めていることが今の企業で満たされるという認識があるとき、その企業に雇われ続け、企業に残り大いに貢献をする可能性が高くなるのである。これまでにも増して、経営戦略と人材貢献を結びつける媒介変数としての「人のココロ」を重視する必要性が高まったのである。特に優秀で、企業が必要な経験とスキルをもった人材ほどそうである。

実は、こうしたことにいち早く気づいたのが米国西海岸のIT系企業である。よく報道されるのは、キャンパスと呼ばれる広い敷地内の福利厚生施設や働き方の柔軟性(テレワーク等)であり、働く人に極めて働きやすい環境を提供しているように思える。だが、これだけではない。着目すべきなのは、職務の自己選択やそれに伴う役割の明確化や成果評価など、働きがいの側面でも「働く人のココロ」を大切にする面である。

わが国でも、採用やリテンションに限らず、真の意味での「働く人のココロ」を大切にした人材マネジメントが必要な時期に来ている。ただ、その時に重視しなければならないのは、昨今の働き方改革で重視されるような働きやすさの面だけではなく、働きがいやエンゲージメントを高める施策を同時にいれることである。例を挙げれば、自己申告異動の真剣な運用や1 on 1による個別のフィードバックなどである。

米国西海岸の企業を真似しろとは言わない。働く人の求めるものを理解し、働きがいと働きやすさを総合的な面から提供し、価値ある人材(人財)となってもらうための人材マネジメントへと転換するべき時期なのである。

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