インタビュー
2020/03/11

人事・採用戦略にマーケティングの視点を取り入れる/株式会社ニトリホールディングス|FUTURE of WORK

人事・採用戦略にマーケティングの視点を取り入れる/株式会社ニトリホールディングス|FUTURE of WORK

株式会社ニトリホールディングス様_ロゴ

株式会社ニトリホールディングス

組織開発室 室長

永島 寛之 様

「2032年に3,000店舗出店、売上高3兆円達成」という大きな目標を掲げ、世界規模でさらなる市場拡大を狙うニトリホールディングス。この目標を達成するには、採用や人材育成に関しても既存の枠組みにとらわれない視点が必要です。ニトリの組織開発室室長である永島寛之氏は、元々マーケターとして15年以上活躍されていました。そんな永島氏のマーケティングの視点が生かされたニトリの人事・採用戦略を、株式会社ビズリーチ取締役の多田洋祐が伺いました。

本記事は、株式会社ビズリーチの創業10年を記念して運営していたWebメディア「FUTURE of WORK」(2019年5月~2020年3月)に掲載された記事を転載したものです。所属・役職等は取材時点のものとなります。

アメリカの人事戦略に刺激を受け、人を中心とした人事へ

アメリカの人事戦略に刺激を受け、人を中心とした人事へ

──長年マーケティングを担当されていた永島さんが、御社で人事を担当することになった経緯をお聞かせください。

永島氏(以下、永島):前職でマイアミに駐在してプロダクトマーケティングに携わっていたとき、初めてアメリカの人事戦略のもとで働く経験をしました。アメリカでは個人の専門性を高めるジョブ型を主に採用しています。社員は自分の専門性を生かせないと感じると、活躍できる他の会社に転職してしまいます。そのため各企業の人事部は、社員が力を発揮できる環境を常に用意する必要があります。

そんな折、偶然ニトリがカリフォルニアに出店したことを知りました。それでニトリのことを調べたところ、「10年後に売り上げと利益を10倍にする」など、大きいビジョンを掲げていたので興味を持ちました。

私自身、ちょうど40歳という区切りの年でした。「20代は自分のため、30代からはチームのために仕事をしてきた。40代からは人の育成のために仕事をしてもいいかな」と考えていたんです。

多田:マーケティングから人事にキャリアチェンジするケースは珍しいですね。アメリカでは30年前から「採用はマーケティングだ」と言われてきました。候補者となる求職者のニーズに応え、求める情報を人事が発信し、今後の採用では求職者データべ―スも活用していく考え方です。また、人事だけでなく、社員の満足度を上げることで、社員が自社の情報を発信する。仮に社員が転職しても、元社員の口コミで新しい優秀な人が入社する。まさにマーケティングの手法です。

永島:アメリカのマーケティングでは生活者、つまり人をセンターに据えることが基本でした。一方、日本のマーケティングの中心は会社や製造者の事情です。アメリカの考え方を知り、「人事も人をセンターに据えるべきだ」と思いましたね。その意味では、マーケティングに携わった経験が、今の人事業務でも役立っています。

多田:マーケティング思考で人事を捉えることは日本企業にとって必要なことだと思いますし、今後さらに重要性が増すと思います。ちなみに御社はどのように採用活動を進められているのでしょうか。

永島:自分たちのポジショニングを変更することでターゲットを広げています。流通業の有効求人倍率は13倍もあり、選考したくともそもそも人が集まらない状態です。これが製造業になると有効求人倍率が2倍まで落ちます。ニトリは小売りの流通業のイメージが強いですが、ベッドは針金を仕入れてスプリングから作り、ウレタンも自社製造しているので、自分たちのポジショニングをメーカーと定義して採用活動を進めています。

多田:新たに興味を持ってくださった方にご入社いただくには、意思決定過程の面談や面接も重要ですね。面接はどのように取り組まれているのですか。

永島:ニトリに興味がなかった方にも興味を持っていただくために、面接では求職者の好奇心を探り、ニトリとつながる部分をうまくアピールする必要があります。ですので、選考の仕方も工夫しています。結果、優秀な方ほどニトリの意外性に惹かれて入社されます。

例えば、新卒採用の面接はグループディスカッションを実施せず、1対1でお互いの接点が見つかるまで話し合います。新卒採用部の部長をしていたときは、最終面接は全て私が担当しており、2018年は約1,500人の学生と会いました。

合否を決めるうえで学生の成績を重要視する企業もあるようですが、私はそれよりも、学校で何を学んできたかを重視します。そこから彼ら・彼女らの好奇心や学生生活を想像して、ニトリとつながる要素を導き出します。

そして、インターンシップで来てくれた方たちも大事にしています。彼らに真摯に向き合えば、たとえその方たちが入社に至らなくても、後輩を連れてきてくれることがあります。

多田:まさにマーケティングの視点ですね。扱うものがプロダクトやサービスでなく「人」であるだけで、人事は事業運営を行うのとなんら変わりないと私は思っています。その視点から考えると、マーケティングという人事と全く違う畑から、永島さんのような人事が生まれることも納得がいきます。

未来の人事は「人材獲得」と「育成」をセットで進めるべき

人事とトップの意識の変化が、企業の風土を変える

─社員のキャリアアップについてはいかがでしょうか。

永島:私は入社者の「将来、どんなニトリを作りたいか」「世の中をどう変えていきたいか」といった話に耳を傾けてきました。しかし、そうした夢が社員教育につながっていないのではないか、というジレンマがありました。

実際、入社前のイメージと違ったと辞めていく人もいましたが、夢をつなぎとめる仕組みを作っていたら、辞めるという選択をせず頑張ってくれていたかもしれません。とてももったいないことです。

それで、2018年夏に似鳥昭雄会長と白井俊之社長に「これでは駄目だ、夢をそのままつなげていくべきだ」と直訴し、採用教育部を作ってもらいました。

多田:さらりとお話しされていますが、採用担当者が社員教育にも進言するというのは勇気が必要ですし、革新的なことだと思います。似鳥会長と白井社長の決断力があってのことですね。

永島:多くの社員は夢を持ち、その夢の実現のためなら喜んで学びたいと考えています。「IoTを活用したベッドを作りたい」「今はまだ店舗展開をしていないインドや東南アジアに店舗をオープンしたい」「無人店舗を作りたい」など、かなえたい夢の内容はさまざまです。この後押しをしていきたいと思います。

多田:これまでは人材獲得と育成を分断して考える企業が多かったと思いますが、これからは「入社する人」と「どう活躍してもらうか」を一緒に考えるべきでしょう。

マーケティングでは、プロダクトやサービスを買ってくれたお客様が満足されているか確かめ、リピーターになっていただくまでを考えなくてはいけません。人事でも、同じ考え方が必要です。今後、この視点を取り入れられない企業は人材を獲得しづらくなっていくでしょう。ちなみに、御社で取り組まれている「ニトリ大学」と呼ばれる教育体系は、その過程で生まれたのですか?

永島:ニトリ大学は2006年からあり、チェーンストア論理を中心に独自の人材育成プログラムを構築してきました。今は、会社の変化に合わせて、グローバルとテクノロジーの内容を追加しています。

例えば、Amazon様のテクノロジー研修所で学ばせていただいたり、グロービス経営大学院大学を運営するグロービス様と教育カリキュラムの構築を進めたり、社外の力を借りてニトリ大学を強化しています。そうすることで、自分たちがOJTで学んできたことをロジックとして確立し、海外展開の際に自分たちの力を発揮できると考えています。また、Workday(ワークデイ)様にも協力いただき、今後はニトリ大学とタレントマネジメントシステムを連動させる予定です。

多田:社員が受けた研修内容を蓄積して、タレントマネジメントをしていくわけですね。

永島:そうです。そこから本人の希望も配慮して配属先を決定する、ということをやっていきたいです。2032年の壮大な目標達成を実現するためのわれわれの合言葉は「多数精鋭」「グローバリゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」です。この合言葉のもと、今後もニトリは成長し続けます。

多田:当社にも桜丘ユニバーシティという企業内大学がありますが、現在はマネージャーの能力開発やリーダー育成がメインです。当社にはITエンジニアをはじめとした専門性の高いプロダクト職能の社員が3割在籍しているのですが、専門性を向上させる教育をさらに推し進めることに加え、事業フェーズと連動して、教育のコンテンツは追加・改善し続けなければいけないと、刺激をいただきました。ニトリ様の姿勢から生き残る企業は変化し続けていることを学ばせていただきました。

永島:教育の部分でも、人材交流など、御社と協力し合えることがあるのではないかと思います。今の時代、「競争」ではなく「共創」が重要です。

多田:リーダー研修を企業合同で実施する、といったことも「共創」につながりそうですね。

社員全員がグローバルとデジタルに対応できる人材に

人事のエンパワーメントとサポートは、グローバル戦略に必要不可欠

─10年後のニトリの展望をお聞かせください。

永島:われわれは、グローバルとデジタルで戦える人材を増やす必要があります。そのため、限られた人への教育ではなく、全員がグローバルとデジタルに対応できるよう、これからの5年で全体の底上げを図りたいと考えています。

ニトリの社員5,000人のうち、プログラマーは約5%。まずはプログラマーを増やしていきたい。その一方でITを活用して商品を作れる人材を育成するのが、これからの5年におけるミッションです。

さらに次の5年でデータアナリストの専門家を増やしていきたいです。会社全体で、データを活用するビジネスを育てていく計画です。

われわれはお客様を真ん中に置き、配置転換を通じたさまざまな業務経験から、全社員が経営者の視点に立てるよう、スキルの底上げを行っていきたいと考えています。そのなかでグローバルとデジタルにも対応できる状態に持っていきたい。人事として「学ぶことは楽しい」という文化を作らないといけないと思っています。

そのため、アメリカ研修を行っており、年間約1,000人の社員を10日間、アメリカに連れていっています。シリコンバレーでのGAFA(※)などの企業訪問や、ホームステイで本当のアメリカを体験するなど時代の流れに合わせてカリキュラムを変えています。そうした経験をもとに社員に各自のロマンやビジョンを作ってもらう。これもわれわれ人事の大切な仕事のひとつです。

多田:社員の皆さんにとっては貴重な機会ですね。

永島:ただ、新卒採用は軌道に乗りつつありますが、中途採用がまだまだできていない、というのが正直なところです。これまでは人材紹介会社に依頼して中途採用を行ってきました。しかし、2019年からはダイレクトな採用を展開していこうと考えています。気軽に足を運んでいただける場として「ニトリナイト」というパーティーを企画し、「ビズリーチ・ダイレクト」を利用して参加者を募りました。

多田:中途採用でも主体的な活動をされているのですね。流通業と思われていた御社がポジショニングを改め、エンジニアの採用や育成を強化している。ビジネスモデルをどんどん転換していくなか、「競争相手ではない」と思っていた企業が採用競合になるという事態も加速していきますね。

お話を伺って、御社では「人を中心に置く経営を徹底している」と感じました。御社が人材への投資を実行されている限り、競合他社をますます脅かす存在となっていくでしょう。われわれビズリーチは、今後も御社と共創できるように邁進していきます。

(※)グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)の4社のこと。

ニトリ永島様×ビズリーチ多田

永島 寛之 様 略歴

1998年、東レ株式会社入社。電子情報材料部門で国内外のB2Bマーケティング、セールスを経験。2007年、ソニー株式会社に転職。ソニーマーケティング株式会社に出向し、B2Cマーケティングを実践、欧州市場のマーケティングを担当した。その後、アメリカ・マイアミのソニーラテンアメリカ駐在。ラテン10カ国のダイバーシティスタッフを部下に持ち、マーケティングダイレクターとして中南米各地に駐在する。2013年、株式会社ニトリに転職。2年半の店舗勤務で店長を経験。未来のニトリを作るため、人材採用部部長、採用教育部部長を歴任し、2019年3月より現職。「個の成長が企業の成長。そして、社会を変えていく力になる」という考えのもと、従業員のやる気・能力を高める施策を次々と打ち出す。

取材・文:大橋 博之
カメラマン:矢野 寿明
記事掲載:2019/5/30 

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