採用課題
2020/07/13

対面でもオンラインでも「信頼構築」の原理は同じ|人材採用のニューノーマル vol.1

対面でもオンラインでも「信頼構築」の原理は同じ|人材採用のニューノーマル vol.1

オンラインでの採用活動が急速に広まっています。

一方で、すぐには慣れず、対面での採用活動との違いに戸惑う採用担当者の方も、少なくないのではないでしょうか。

株式会社ビズリーチでは、2020年6月26日にビズリーチ導入企業を対象としたオンライン勉強会を開催。「人材採用のニューノーマル『オンライン採用』の基本と実践」と題し、株式会社人材研究所代表の曽和利光氏、オンラインコミュニケーションについてアカデミックな知見を持つ採用学研究所所長で株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役の伊達洋駆氏を講師にお迎えしました。

全4回の勉強会のなかで、オンライン採用についての知見の共有やディスカッションが展開されます。

Vol.1のテーマは「オンラインコミュニケーションの特徴」。オンライン採用を考える際の前提として、主に伊達氏から、オンライン・非対面のコミュニケーションの特性についての講義が展開されました。

講師プロフィール

曽和 利光 氏
2011年に株式会社人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。
伊達 洋駆 氏
株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役。採用学研究所所長。神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、データ分析や組織サーベイのサービスを提供している。

対面とオンラインで、コミュニケーションはどう異なる?

はじめに話題にのぼったのは、オンラインでのコミュニケーションに対する漠然とした「イメージ」について。伊達氏からは「オンラインコミュニケーションを整理する2つの軸」が紹介されました。

伊達:オンラインでのコミュニケーションについて、皆さんはどのようなイメージを持っているでしょうか。曽和さんはいかがですか。

曽和:私は「オンライン面接は、対面面接よりもやりにくくなるだけ。何らかのやむを得ない理由を背景に選択する手段」と思っていました。しかし、伊達さんのお話を事前にうかがったり、新型コロナウイルス感染症拡大を機にオンラインでのコミュニケーションを実践したりするなかで「オンラインコミュニケーションは決してリアル(対面)に劣るものではない。むしろオンラインコミュニケーションのほうがよい場合もある」と、メリットも感じるようになりました。今日は伊達さんからオンラインコミュニケーションの研究結果についてもご紹介いただきながら、実務での生かし方や注意点についてお話しできればと思います。

伊達:オンラインコミュニケーションの研究領域は、Computer Mediated Communication(CMC)と呼ばれますが、CMCのなかでは対面のコミュニケーションとオンラインコミュニケーションはどのように異なるのか研究がされています。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けてZoomをはじめとした「ビデオ会議」が話題にのぼりがちですが、以前から私たち人間は対面以外のコミュニケーションをさまざまな方法で行っているのです。

曽和:確かに、電話やチャットツールも、非対面のコミュニケーション手段ですよね。

伊達:おっしゃる通りです。CMCにおいては「非言語的手がかり」と「同期性」という2軸を用いてコミュニケーションの特性が整理されています。

CMCにおける2つの性質

「非言語的手がかり」と「同期性」で考える

「非言語的手がかり」とは「言葉以外の情報」のこと。例えばジェスチャーやアイコンタクト、会話中のアクセントなど、コミュニケーションにおける言葉以外の要素を指します。服装や髪型、表情、物理的距離なども非言語情報だといいます。オンラインのコミュニケーションと対面のコミュニケーションを比べると、オンラインコミュニケーションでは、非言語的手がかりが減少する傾向にあると伊達氏は話しました。

伊達:例えば本日の勉強会はWeb会議サービスの一つである「Zoom」で行っていますが、上半身だけが映っているので、私がどんなズボンをはいているか、どのくらいの背丈であるか、皆さんにはわかりませんよね。今、見えている情報だけで自然と判断しようとします。

曽和:オンラインコミュニケーションにおいて「非言語的手がかりが減少する」とは、そもそも情報を受ける側からは非言語的手がかりが「見えなくなる」という点がありますが、発信側が「出さなくなる」という点もありますよね。

伊達:確かに、対面コミュニケーションでは表情豊かに話を聞いていた人が、オンラインになると表情が乏しくなるといった意味での非言語的手がかりの減少もありえます。特に複数名で参加するミーティングだとありがちではないでしょうか。

そしてコミュニケーションの性質を捉える軸の2つ目は「同期性」です。「リアルタイム性」とも表現できます。

例えばZoomで開催されているこの勉強会は、リアルタイムで私たちの話を参加者の皆さんが聞いている状態。同期性は高い状態にあります。ところがこれを「メールでやりとりしましょう」としたとします。すると、参加者がいつメールを開封するかは自由であり、どんなに意識しても多少のタイムラグは発生します。つまり同期性は低下するでしょう。このように「リアルタイム性がどれくらいあるのか」を、同期性が高い・低いと表現します。

コミュニケーションの整理

非言語的手がかりと同期性がともに高いのは「対面」のコミュニケーション。「face to face」ともいいますね。私たちになじみのあるコミュニケーション手段です。そして、その対極にあるのは「メモ・手紙」。手紙は送ってから届くまでに非常に時間がかかりますし、非言語的手がかりを込めるのにも限界があるのが特徴です。

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対面は「合意形成」、テキストチャットは「発散」に向く

多くの学術研究において比較されているのが「テキストチャットと対面」だと伊達氏は話します。テキストチャットと対面を比較した研究論文27本を総合的に分析した論文(Baltes et al., 2002)においては、グループ作業におけるテキストチャットのパフォーマンスは低いとされてきました。一方で、テキストチャットはアイデアの発散に向いており、それはプロセス・ロス(※後述)が減少するためだといいます。

伊達:例えば「郵便事業についてグループで議論して各グループ1本のレポートを作成する」といった問題解決型の作業を、テキストチャットと対面でそれぞれしてもらった結果、テキストチャットのグループは「成果(正解数、専門家による評定)」「満足(作業の満足感)」「時間(意思決定にかかる時間)」の観点全てで「対面に劣る」という結果が出ました。

曽和:IT企業を中心に、「Slack」などのビジネスチャットツールでコミュニケーションをとる企業が増えているように思いますが、この研究結果だけを見ると、テキストチャットは対面に比べて劣ってしまうのでしょうか。

伊達:いえ、テキストチャットが対面に勝る面もあるんです。リアルタイムでコミュニケーションができなかったり、非言語的手がかりが減少したりすることが、良い働きをする場合です。具体的には、テキストチャットのほうがアイデアをたくさん出せることを示した研究があります。

対面よりもテキストチャットのほうがアイデアをたくさん出せる

曽和:テキストチャットは、合意形成が苦手な一方、アイデア出しなど「発散」は得意ということですね。この結果は、どのように説明できるのでしょうか。

伊達:いくつか説明されているなかで有力な説は、プロセス・ロスが減るからというものです。プロセス・ロスとは、複数人が集まった際に、協調できずにかえって非効率が生じるときの損失のことです。

例えばこういう経験はないでしょうか。「曽和さんが話している最中に、伊達が何かを思いついた。話そうかなと思いつつ、曽和さんの話を聞かなければならない。発言の機会を待っているうちに、そもそも話したいことを忘れてしまった」みたいなことです。

曽和:わかります。複数人の会議などでよくありますよね。リアルだと「こんなこと言ったら、あの人の機嫌を損ねるかな」とか相手の反応が気になることも。

伊達:相手の発言中にはアイデアを出せなかったり、相手の存在を意識することで言い出しにくくなったりすることがあるでしょう。そのように「対面」では、本来なら出せていたはずのアイデアが出せなくなってしまう。これを「プロセスにロスが生じる」ということで、「プロセス・ロス」と呼びます。対面の状況はプロセス・ロスが生じやすく、アイデアを自由に発散するときには不向きな傾向があるんです。

「非言語的手がかり」が減少することで、何が起きるか?

続いて展開されたのは、ビデオコミュニケーションと対面コミュニケーションの比較。「Zoom」などのビデオツールが台頭していますが、「ビデオ」と「対面」にはどのような違いがあるのでしょうか。

伊達:ビデオコミュニケーションは、非言語的手がかりと同期性が少しずつ低下するため、「チャットと対面の間」くらいに位置しますね。

ビデオの場合は非言語的手がかりが減ることで、対面に比べて円滑に会話するのが難しくなります。経験がある方も多いかと思いますが、ビデオコミュニケーションでは発言タイミングが重なってしまいますよね。それはなぜかというと、アイコンタクトといった非言語的手がかりが減ることによる影響だといわれています。

曽和:ビデオコミュニケーションでは、原理的に相手とは目が合わないですよね。今私は画面越しに伊達さんの顔を見ていますが、伊達さんは、「伊達さんの映像を見ている私」を見ている。カメラや画面を介している以上、アイコンタクトをすることは物理的に不可能ですよね。

伊達:人は、アイコンタクトによってさまざまな手がかりを得ています。相手の目を見ることで、「次は相手が話す番だ」と察したり、相手の感情を読み取ったり。ビデオコミュニケーションでは、そのような非言語的手がかりが減少することで、円滑な会話が阻害されてしまうのです。

曽和:統計的な話ではありませんが、私は最近よく「採用のオンライン化が始まってから、面接の採用成功率が下がった」と聞くんです。さまざまな理由があるかと思いますが、その背景には「候補者の志望度の強さ」を採用基準の一つとする企業が多いなかで、候補者の感情や熱量が、対面と比較して読み取りづらくなっていること、そのために採用の判断がしづらくなっていることもあるのではないかと思います。

関連情報(https://bizreach.biz/media/15393)

伊達:対面と比べると、感情は伝わりにくいと考えられますね。逆に、会社に対する社員のコミットメントや愛社精神のようなものも、対面よりは伝わらないことがあるでしょう。会社に強い思いをもつ情熱的な社員にオンライン面接の面接官を担当してもらったとしても、なかなか熱意が伝わらない場合があります。

というのも、人は非言語的手がかりによって感情を伝えたり、読み取ったりする部分が大きいのです。例えば「うれしいです」と言葉で伝えるよりも、笑顔一つのほうが感情が伝わる。また、「情動感染」といって、相手の非言語的手がかりを、自分のなかで模倣するうちに、相手と似た感情を味わいます。

採用においては「熱意のある社員のほうが、候補者へのアプローチがうまい」ということがいわれますが、その理由は情動感染によって説明できます。

ただし、非言語的手がかりは感情を伝えやすい一方で、オンラインコミュニケーションでは、その減少によって「言語的情報」がむしろ伝わりやすくなります。

例えば対面で打ち合わせしたときよりも、メールのテキスト情報のほうが、情報の「伝達『度』」は大きいでしょう。今回の勉強会も、ビデオでももちろん理解できますが、記事として読むほうがより内容を理解しやすい、みたいなことがありえます。ただ、ここで面白いのは「伝達『感』」は非言語的手がかりが多いほう、つまり対面のほうが得られるんです。対面が最も「理解できたな」「伝わったな」と感じられます。

曽和:なるほど、それは興味深く、少し切ない現象ですね。オンラインコミュニケーションによって非言語的手がかりが減少することによって「相手に関する情報収集」はできているのに、実際に「理解できた感」や「伝わった感」は得づらいということですね。

関連情報(https://bizreach.biz/media/saiyo-newnormal2)

「慣れ」の効果。オンラインコミュニケーションにおける信頼構築

ここまで取り上げられた研究は、対面において1回限りで行ったものや、チャットにおいて1回行ったきりのものが中心です。一方で、同じメンバーが何度かオンラインでコミュニケーションすることでどのような変化が表れるのかの研究もあるといいます。
まだまだ不慣れな人も多いオンラインコミュニケーションですが、「慣れ」の要素が非常に大きいと伊達氏は話します。

伊達:オンラインコミュニケーションやオンライン採用を考えていくうえで非常に大事な観点になるのは「慣れ」による効果です。

「オンラインや対面において、何度か同じメンバーでグループ課題を行うと、どうパフォーマンスが変わるか」についての研究があります。1回目は対面のほうがパフォーマンスは良い結果でしたが、2回目以降は対面とオンラインのパフォーマンスに有意な差は見られなくなる。統計的に意味のある差が出ていない、ということです。

曽和:オンラインコミュニケーションにおける「慣れ」の効果は、私も非常に実感していますね。今回のようなオンライン勉強会の登壇もそうなのですが、最初はパソコンに向かって一人で話をするという行為に慣れず、ぎこちなかったんです。しかし回数を重ねることで、身振りや手振りを加えられるようになったり、画面の向こう側にいる参加者の皆さんを想像して話せるようになったりしています。

伊達:曽和さんの場合は「個人」における慣れの効果ですね。研究では、慣れによって「メンバー同士の信頼が構築できるか」という観点のものもあります。その研究結果によると、1回目のオンラインコミュニケーションでは、対面より信頼関係が築けません。ところが回数を重ねると慣れてきて、対面とオンラインで信頼度の差は縮まってくる。ある程度回数をこなすことで人間はわかり合えてくることが、オンラインコミュニケーションにおいてもいえるということです。この原理は、オンライン採用を考えるうえで重視したいポイントですね。

曽和:オンラインにおける説明会や選考などで、候補者に接する社員が毎回変わってしまうと、信頼構築が難しいと考えたほうがいいのでしょうか。

伊達:そのような可能性がある、ということですね。オンラインと対面では、1回目に信頼度の開きがある。毎回接する社員が異なると、常に「最も難しい方法」で候補者と信頼構築をすることになってしまいます。

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オンラインの環境が「追い風」になる人

オンラインコミュニケーションにおいては一定の「慣れの効果」があるものの、対面と比較すると言語情報や感情の伝わり方や捉え方が異なるということがわかりました。さらに、非言語的手がかりが得られにくいと「緊張感が薄れる」という影響もあるといいます。

曽和:例えば、対面の採用面接の場面では、緊張してしまうことが悩みの人も多いですよね。そういう人にとって「面接のオンライン化」は朗報なのではないでしょうか。

伊達:そうですね。日本人はアイコンタクトをするのが苦手とよくいわれます。しかし、オンライン面接だと「目を合わせる」といったことがしにくいため、緊張することなくコミュニケーションがとれます。緊張しやすい人にとっては朗報です。

曽和:面接において「緊張しやすい」というファクターが取り除かれることによって、能力を発揮しやすく、フラットに能力を評価してもらいやすくなるということですよね。

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今回の勉強会では、コミュニケーションは非言語的手がかりと同期性という2つの軸によって捉えることができ、その高低によって、どのような変化が起こるかについて学ぶことができました。

オンラインコミュニケーションは、非言語的手がかりが減少するものの、「言語的情報はむしろ伝わりやすい」「アイデアの発散に向く」といったメリットがあること、また「オンラインでも、回数を重ねることで信頼関係の構築が可能」ということもわかりました。これらはオンライン採用活動においても、生かしていきたいポイントでしょう。

今回の内容を踏まえてVol.2以降のレポートでは、オンラインでの選考、動機づけ、オンボーディングを、オンラインでどのように行っていくか、具体的なノウハウをお伝えしていきます。

関連情報(https://bizreach.biz/media/saiyo-newnormal2)


▼ 本勉強会の内容を、動画でご覧いただくことができます ▼
(記事にはない資料・解説も視聴いただけます)

執筆:佐藤 由佳、編集:瀬戸 香菜子(HRreview編集部)

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