インタビュー
2020/03/19

多様性を推進し、「グループ一体経営」を進化させる/東京海上ホールディングス株式会社|FUTURE of WORK

多様性を推進し、「グループ一体経営」を進化させる/東京海上ホールディングス株式会社|FUTURE of WORK

東京海上ホールディングス株式会社

東京海上ホールディングス株式会社

人事部長

鍋嶋 美佳 様

日本初の保険会社として1879年に創業し、2019年に140周年を迎えた東京海上グループ。東京海上ホールディングスならびに世界に展開する子会社241社および関連会社25社より構成されており、45の国と地域で幅広く事業を展開しています。2000年以降は、アジア等新興市場でのM&Aを通じたローカルビジネスや高格付けを活用した再保険ビジネスの拡大、さらには、欧米における大型買収を実施。海外事業は今やグループ収益の50%に迫る中核の事業となりました。東京海上グループの経営戦略につながるグローバル化を推進していく東京海上ホールディングス株式会社の人事部長である鍋嶋美佳様に、2019年からスタートした「新たな人事制度」による社内変革や多様性推進の必要性について、株式会社ビズリーチ代表取締役社長の南壮一郎が話を伺いました。

本記事は、株式会社ビズリーチの創業10年を記念して運営していたWebメディア「FUTURE of WORK」(2019年5月~2020年3月)に掲載された記事を転載したものです。所属・役職等は取材時点のものとなります。

世界の隅々まで 「あんしん」 を届ける「グローバル化」

世界の隅々まで 「あんしん」 を届ける「グローバル化」(東京海上ホールディングス)

南:グループの事業別利益の推移を拝見すると、2002年度は3%だった海外事業利益の割合が、現在では50%に迫るところまで拡大しています。海外事業展開に力を入れて取り組まれてきた背景について、お聞かせください。

鍋嶋様(以下、鍋嶋):東京海上グループは創業以来、戦争や大震災といった幾多の難局をグループの総力を挙げて乗り越えてきました。しかしながら、少子高齢化に伴う人口動態の変化、自然災害の頻発などにより「日本国内だけでリスクをマネジメントするのは難しい」との経営判断から、2008年以降、M&Aによるグローバル化を加速してまいりました。保険会社は「お客様や社会の『いざ』という時を支える」企業です。「世界の隅々まで『あんしん』 をお届けする」ためにも、海外事業の拡大によるリスク分散は重要だと考えています。

南:M&Aによる海外展開が加速するなかで、事業構造も大きく変わった10年だったと思いますが、その変革のなかで働く「社員」にはどのような変化を感じましたか。

鍋嶋:2019年にニューヨークから帰国して感じたことは、日本の若い方の「働くことに対する価値観の変化」です。今の20~30代にとって、「生涯一つの会社で勤め上げる」という考え方よりも、一つの会社でキャリアを積み、そのスキルや経験を生かしてその他の会社や環境に挑戦することがトレンドになりつつあると感じています。また、そのような考え方の広まりとともに、これまで人材活用の前提にあった「新卒を一括採用し、会社で育成していく」という企業の人材戦略のあり方も変化していく必要を実感しています。既に東京海上日動ではキャリア採用を積極的に実施しており、専門性の高い人材だけでなく、業界経験不問で、現場の第一線でご活躍いただく人材の採用にも注力しています。

南:歴史を振り返ると、実は1980年代までは、アメリカでも「終身雇用」「年功序列」という働き方が一般的でした。しかし、1980年代半ばから製造業の国際競争力が低下していき、成長分野であったサービス産業へシフトしていくなかで、終身雇用や年功序列という働き方が見直され、雇用の流動化が生まれたのです。

当社がサービスを開始した2009年、日本において「雇用の流動化」という考えはまだ一般的ではありませんでした。日本の転職市場は可視化されておらず、多くの企業はハイクラスの採用を人材紹介会社に任せるしかなく、主体的に活動しにくい状況にありました。また、ハイクラスの求職者は、限られた選択肢からしか次のキャリアを見つけられませんでした。そんななか、その当時、アメリカにおいては、ビジネスプロフェッショナルの職務経歴をインターネット上に公開し、企業からのスカウトを直接受け取ることによって、人々が転職する姿を見て、とても驚きました。

「新しい時代の働き方や経営のあり方を支えるインターネットサービスを作れないか」と考えていた私は、「働くうえでの選択肢や可能性を可視化できたら、企業と求職者どちらも、もっと主体的に動くだろう」と確信。その結果が、「企業自身が採れる手段を主体的に考え、能動的に実行する採用活動『ダイレクトリクルーティング』」という新しいコンセプトにつながったのです。

外部から安定的にグローバル人材を採用するための仕組みとして、「新たな人事制度」を導入

外部から安定的にグローバル人材を採用するための仕組みとして、「新たな人事制度」を導入

南:鍋嶋さんはこれからの10年、東京海上グループの経営においてどのようなキーワードが重要だと思われますか。

鍋嶋:「人材のグローバル化」と「グループ一体経営」です。保険は各国・地域の規制があるため、現地に根ざしたローカルビジネスとして取り組む必要があります。そのうえで、グループとしての一体感を向上させグローバルベースでシナジーをさらに発揮していくことが重要です。事業のグローバル化に比べ、人材のグローバル化は難度が高いものではありますが、「グループ一体経営」実現のためには、グループ横断の研修やグローバルな人材の育成や交流が重要になると考えています。

南:2019年4月から導入された「新たな人事制度」も、経営戦略実現のための仕組みの一つなのですね。

鍋嶋:はい。保険サービスにおいては「人」とその人がつくり上げる信頼こそが競争力の源泉であるとの考えに基づき、国内外問わず多様な人材の計画的な育成を重視して取り組み、順調に事業を拡大してきました。

一方、テクノロジーの進化やグローバル化、人口動態の変化などの、グループを取り巻く環境は急速に変化しており、こうした不確実性の高い外的環境の変化を確実に捉え、経営に反映させていく重要性が高まっています。経営戦略実現のためには、高度な専門性およびマネジメント力をグローバルに発揮できる経営人材を「外部からも安定的に採用する」必要性が出てきたのです。その一つの仕組みとして、東京海上ホールディングス独自の新たな人事制度を導入することにしました。

外部人材の採用を目的として導入した制度ではありますが、さらに、東京海上日動からの転籍も可能な仕組み作りも進めています。今後は、人材の流動化が激しく進むことを前提に、人材マネジメントや人材育成を考える必要があります。若い方のキャリアアップの選択肢も、社内にとどまらず、転職や独立などますます多様化していくでしょう。今回のような新たな人事制度の導入によって、当社で専門性を高め、実力を磨いてキャリアを築きたいと考える人材に活躍してもらいたいです。

南:「採用」も重要ですが、個々のパフォーマンスを最大限に発揮してもらうためには、入社後の「マネジメント」と「育成」をセットで考える必要がありますね。人材育成や組織開発において、今後注力したいことは何でしょうか。

鍋嶋:多様な人材がいるなかで、グループのコアバリューである 「Good Company」 を共有し、いかにローカルのビジネスに根付かせるかが重要と考えています。当グループは、新卒で入社した若手社員もいれば、中途入社した社員もおり、国籍・年齢・社歴などさまざまな人材が集まっています。そこで、世界の全社員4万人を対象に、ジュニア層・シニア層などに分け、研修を実施しています。各国で行われている取り組みを共有し、グローバルな企業の一部であることを体感してもらう機会にもなります。

保険は、人々の暮らしや社会活動を支えるインフラであり、その理念は世界共通です。ビジネスを展開する各地域社会のなかでお客様から支持される会社であり続けることが、グループ全体の目指す姿なのです。

多様性を推進し、誰もがフェアに「一個人として」評価される組織へ

多様性を推進し、誰もがフェアに「一個人として」評価される組織へ

南:グローバル化を進めるうえで、必ず出てくるキーワードが「ダイバーシティー&インクルージョン」だと思います。組織における多様性について、鍋嶋さんのお考えや、会社として大事にしていきたいことがあればお聞かせいただけますか。

鍋嶋:一人一人の才能や個性、働きがいを大事にする組織でありたいですね。日本では、ダイバーシティーというと「女性活躍推進」がクローズアップされがちであると感じます。しかし本来の多様性とは、宗教や肌の色、年齢、LGBT(性的少数者)など、多岐にわたるものです。私自身、1991年に当時の総合職として東京海上火災保険に入社し、いわゆる男女雇用機会均等法の第一世代として、さまざまな場面で「女性だから」といわれる経験をしてきました。昨今ではこの風潮も変化したとは感じていますが、もっと誰もが「一個人として」フェアに評価される時代になってほしいですね。

南:「女性活躍」を体現してこられた鍋嶋さんだからこそ、その言葉に説得力を感じます。鍋嶋さんは、企業として多様性を推進すべきなのはなぜだと思いますか。

鍋嶋:「人が成長するために必要な土壌」だからです。性別や社歴などに関係なく、一個人として働きがいをもって輝けて、活躍できる土壌を作ることがインクルージョンではないでしょうか。会社は「人」の集合体です。そして、企業の成長は「人の成長」が源泉になります。ですから、多様性の推進は、会社の成長戦略の一つだと捉えています。しかしながら、まだ世の中の実態としては、「労働力人口が減ったから、女性も社会参画するべき」という文脈で「多様性」というキーワードが使われているケースも少なくないですね。

南:「働くことに対する価値観の変化」と同様、日本での「多様性」への理解・浸透にはまだ時間がかかるかもしれないですね。しかし、女性活躍推進の流れから、働き方改革や労働時間規制が進みつつあることは、一つの成果です。私は、スポーツのようにルールを明確にしたうえで、そのルールのなかで誰もが活躍できるフィールドを用意する、それがこれからの働き方だと思います。

鍋嶋:当社も退社時間や会議時間などのルール作りや業務の効率化には力を入れています。リモートワークも浸透してきていますが、アメリカと比べると、まだまだ効率化できる余地があると感じます。アメリカとは社会構造やメンタリティーの面で異なる部分もありますが、今後、日本も「ワークとライフのバランスは、自分でとる」という考えが広がるよう、取り組んでいきたいと思います。

私からも南さんに質問なのですが、冒頭に申し上げた「働くことに対する価値観」は、なぜこの数年で大きく変化したのだと思われますか。

ワークとライフのバランスは、自分でとる

南:一つには、2008年のリーマン・ショックと2011年の東日本大震災は、働き方に関して大きなインパクトを与えたと思います。「会社とはなくなるものである」と改めて気付かされたり、さらには「働くことの意味とは」という問いを突きつけられたりするなど、働きがいや幸せの定義についてみんなが考えさせられました。

また、「人生100年時代」という現実が社会全体に浸透してきたことによって、多くの方が自身のキャリアを逆算して考えるようになりました。例えば、私が就職したころは「60歳定年」といわれた時代でした。

しかし、われわれの世代は、人生100年時代において80歳まで働くと予想している方もいます。これがどのようなことを意味するか。私が新入社員のとき、当時23歳でしたが、60歳まで働くとなると合計で37年間働けば定年までたどり着きました。ちなみに、私は今年で社会人になってからちょうど20年が経過しまして、現在43歳です。ここから、もし80歳まで働くとすると、実は、まだ37年も残っていることになります。これまで20年働いたにもかかわらず、まるで新卒時代の振り出しに戻ったようなものです(笑)。

そして、恐ろしいことに、私の個人的な予想では、現在の20代の若い世代は、85歳まで働くことになるでしょう。労働寿命は確実に延びています。一方で、情報技術の発達によって、企業やビジネスモデルの寿命は、逆に短くなってきている。そうすると、必然的に「どうすれば社会で活躍し続けていけるのか」を考えざるを得なくなります。その漠然とした不安が、働き方を再考する最大のトリガーになったと考えています。

定年後のプランがある程度見えている今の50代、60代の方々と、働き方や社会保障などの将来が見えない20代とでは、働くことに対する価値観が根本的に異なります。働くことへの認識の世代間ギャップは、今後ますます広がっていくといえるでしょう。

鍋嶋:そうですね。「多様性」というと性別や人種などにフォーカスしがちですが、世代間の違いこそが、日本の企業が直視すべき一番の課題かもしれません。

南:世代間のギャップを見据えたうえで、人材の活用や育成ができれば、多様な価値観・経験が尊重される強い組織になっていくはずです。

鍋嶋:保険サービスが「ピープルズ・ビジネス」といわれるように、当社の財産は「人材」だと考えています。その人材が働きがいを感じモチベーションを高く保ちながら、「一緒に働いていこう」というカルチャーが、事業の成長に欠かせません。「日本で一番『人』が育つ会社」を目指し、社員一人一人の「成長したい」という発意に応えるため、自助をサポートする仕組みや制度を構築していきたいと思います。

南:鍋嶋さんのように多様なバックグラウンドを持った経営人材は、まだまだ日本社会では少数です。多様性を生かすことが求められるこれからの社会で、さらなるご活躍を祈念しております。

東京海上ホールディングス鍋嶋様×ビズリーチ南

鍋嶋 美佳 様 略歴

1991年に米国デビッドソン・カレッジを卒業。同年に東京海上火災保険株式会社(現・東京海上日動火災保険株式会社)入社、企業損害部に配属。1995年には東京損害サービス第一部に異動し、2000年に神戸に転勤、2003年にニューヨーク、2006年にはロサンゼルスと7年間アメリカに駐在。2010年に帰国しコマーシャル損害部、2014年には埼玉損害サービス部に配属。一貫して損害サービス畑で企業や個人の事故の事案解決や訴訟対応の他、災害対策室の運営をリード。2017年には東京海上日動の米国現地法人「Tokio Marine America」のシニア・バイス・プレジデントに就任。2019年4月、東京海上ホールディングス人事部長に就任し、グループの人事戦略、グローバル化、ダイバーシティやウェルネスを推進。

取材・文:田中 瑠子
カメラマン:中川 文作
記事掲載:2019/12/18

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