人事課題
インタビュー
公開日: 2021/04/12  

1年で離職率が67%から9%に劇的改善! VoicyのEXチームが目指す「気付かれないほど滑らかな」オンボーディング施策とは

1年で離職率が67%から9%に劇的改善! VoicyのEXチームが目指す「気付かれないほど滑らかな」オンボーディング施策とは

2020年2月よりオンボーディング施策の企画・運用をスタートさせた株式会社Voicy(以下、Voicy)。

2019年には離職率が67%と組織崩壊の危機を迎えていたところから、選考中の段階でミスマッチゼロを目指す「エントリーマネジメント」や、内定承諾後~入社後までの選考フェーズごとでの「オンボーディング施策」により、わずか約1年で9%まで下がりました。

オンボーディング施策をゼロから立ち上げたのは、2020年1月に人事担当として入社した勝村泰久様。入社直後には新型コロナウイルス感染症の影響により働き方やコミュニケーション方法が激変するなか、取り組まれた具体的な内容とその成果について、お話を聞きました。

株式会社Voicy
「音声×テクノロジーでワクワクする社会をつくる」をビジョンに掲げる株式会社Voicy。専門家や著名人の声のブログやニュースが聴ける音声のメディアを運営する「ボイスメディア事業」、音声による企業のコミュニケーション課題の解決や、音声で社会に新しい価値を生む「音声ソリューション事業」、さまざまなIoT機器に音声を配信するインフラを構築し、未来の社会を担う「音声インフラ事業」を展開しています。

https://corp.voicy.jp/
設立:2016年2月
事業概要:ボイスメディア事業/音声ソリューション事業/音声インフラ事業
従業員数:40名 ※2021年2月末現在
2020年の採用実績:26名

1. 組織崩壊寸前。「離職率67%」からのスタート

株式会社Voicy 勝村 泰久 様

勝村 泰久 様 プロフィール
東証一部上場 総合人材サービス企業の株式会社クイックにて営業部長や新規事業開発を経験後、HR divisionの責任者として採用や組織開発、制度設計などに携わる。2020年にVoicyに参画した後はVPoHRとして総務人事領域を管掌しつつ、アライアンスや事業開発も担当。2021年2月より執行役員に就任。キャリア教育やHRに関する学会公演・イベント登壇、大手企業の人事顧問や自治体の戦略顧問など、幅広く社会活動も行っている。

1-1. 入社したその月に、退職予定者と面談をし、組織課題を把握

私が2020年1月に入社したとき、離職率は67%。Voicyは組織崩壊の危機にありました。2019年に採用活動を本格的に始め30人まで増えた社員が、その年の終わりには15人にまで半減。経営陣と現場との間に溝ができてしまい、コミュニケーションもうまくいかず、社内の空気ははっきりいって「悪い」状態でした。もともといた社員が新しいメンバーをフォローする余裕はなかったですし、そもそも「オンボーディング」という概念自体が社内に存在しませんでした。

私自身の入社初日も、パソコンを渡されて設定を一人で行っただけ。さらにその日の午後には早速採用面接を担当していました。それほど人が不足している危機的状態だったと察することもできますが、入社1日目の社員が面接をするとは、今思ってもめちゃくちゃです。

社内に「オンボーディング」という概念や風土がないなか、入社してすぐに行ったのは、既に退職が決まっていた社員に話を聞くことでした。彼ら、彼女らが感じていた不安や不満から組織課題を把握しようと思ったんです。

ヒアリングの結果出てきたのは「職務内容が思っていたものと違った」「会社の方向性が見えてこない」「待遇面に不満がある」といった声。よくよく聞いていくと、応募から入社までのすり合わせを徹底してコミュニケーションをとっていれば、入社・採用前に解消できたことが多く含まれていました。

そこで、入社翌月の2月には、採用を通じた組織開発である「エントリーマネジメント」を強化。「人がほしい」という現場のメンバーと、「なぜほしいのか」「人が入らないとどんな影響があるのか」「採用以外に方法はあるのか」を徹底的に議論しました。そのうえで、求人情報には、募集する理由から具体的な職務範囲、給与・待遇、チームの組織構成、上長の性格・特性まで、かなり詳細な情報を掲載するようにしました。

1-2. 「声の力」によりマッチング精度を向上

採用における大きな特徴は、求人情報に「声の求人票」を貼っているところです。募集したいチームのメンバーが、仕事内容や組織風土、これから何を目指したいのかを10分ほどの音声にまとめて発信し、一緒に働く人をよりイメージしやすいように設計しています。

採用なう

(Voicy採用チャンネル「採用なう」へリンクします)

これは持論ですが、「文字情報」は、読み手(受け取る側)の解釈や想像力によって受け取られ方に幅があると思います。そして「映像情報」というのは、送り手(発信する側)の伝えたい情報は正確に伝わりますが、情報そのものが持つ情報量が多く、受け取る側の想像が広がりづらいでしょう。
そして「音声情報」というのはまさにこの2つの中間で、送り手が持つ雰囲気が伝わりながらも、視覚的情報がない分「こんな人なのかな?」「こういう雰囲気なのかな?」と、読み手が想像する余地があると思います。さらに、制作工数が3つのなかで最も手軽であることも特長です。

たとえば求人票に「明るい職場です」という言葉があったとして、その「明るい」という言葉が持つイメージは、人によって違いますよね。「文字情報」だけだと、読み手が持つ「明るい」へ対する先入観や過去の経験に左右されてしまいます。一方「映像情報」だと、そこにある情報がほぼ答えになってしまいます。
しかし、音声情報の場合「明るい」という言葉に対し、送り手の話し方やその内容で「自分に合いそうか、活躍できそうか」をある程度判断できつつ、「面接でもっと知りたい」「この人と話してみたい」と思わせる情報提供が可能です。もちろん逆もしかりで、「明るい」のイメージが、声や話している内容だけで「違う」と判断させられれば、事前にマッチング精度の低いエントリーの数を減らせます。

社員に向けて「声」を活用する取り組みは、「VEX(Voice Employee Experience)」として、人事だけでなく社員同士のコミュニケーションにも広がっています。現在最も効果を発揮しているのは先ほど紹介した「求人票での活用」と感じていますが、そのほかにも「声のオファーレター」「声の社内報」「MVP受賞お祝いメッセージ」「退職時の寄せ声」など、採用活動以外のさまざまなポイントで取り入れ、Voicyでの経験・思い出を「声」に残す取り組みをしています。

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2. 「気付いたら半年が終わっている」。ごく自然で滑らかなオンボーディングを目指して

社員とのエンゲージメントを高めようと考えたとき、カギとなるのはまず入り口部分です。エントリーマネジメントの強化により、徹底してミスマッチを防ぐ。さらには、採用活動の段階からオンボーディングは始まっているという観点で、「内定承諾後~入社前日」「入社当日」「入社後」の3つに時期を分けて、施策を設計しました。

EX(Employee Experience)担当メンバーとは、「内定承諾後、『気付いたら半年終わっている』状態を目指そう」というゴールを掲げました。イメージしたのは「最上級のホテルや飲食店のサービス」です。極上のサービスを受けていることすら感じさせない、受け手にとってストレスや緊張を感じさせない心地良い状態をつくっていくことを目指しました。逆にいうと、受け入れる側の「歓迎サービス」が押し付けになってしまっては、私たちの作戦は失敗ですね。新入社員が気付かないような「自然で滑らかなランディングの仕掛け」を考えました。

2-1. 内定承諾後~入社前は「Slack招待」「オンボーディング資料」「社員プロフィールシート」を用意

内定承諾後の「Slack招待」で、安心感を醸成

内定のオファーレターは「声」で届けます。また、内定承諾後はSlackに招待して、気軽にコミュニケーションが取れる場を用意します。
内定者が入っているチャンネルには、一緒に仕事をすることになるメンバー、選考にかかわったメンバー、労務や経理担当が入っており、入社までに用意すべきことや入社後の仕事内容について不安があれば相談できます。実際に入社前に、内定者の方から質問や相談がくるケースは多くはないですが「いつでも連絡を取れる」「つながっている場がある」ことそのものに、安心感があることは確かでしょう。

ハサミの有無からデスクの環境まで、どんなささいなことも取り除く「事前説明資料」

さらに、入社前には33ページに及ぶ「事前説明資料」を配布します。資料作成にあたっては、全社員にアンケートを実施しました。「前職と比べて困ったこと」「便利だった/不便だったこと」を細かくヒアリングし、そのすべての情報を伝えています。

入社当日のスケジュールや、Voicyで使用しているツールについて、現在の組織図とチーム紹介などの概要はもちろん、デスクのデザインや社内にある備品の詳細情報も写真付きで入れています。

私が入社したときはデスクに引き出しがありませんでした。それが意外に困ったんですよね。引き出しに入れようと思って持ってきたものの置き場がない。他にも、前職では会社の備品としてあったハサミやテープが、個人で必要になってくる。小さなことですが、「あると思っていたものが、ない」のは引っかかりの一つになります。

アンケートでは、「デスクの上にフィギュアを置きたかったけど、どんなオフィス環境か分からなかったから、初日は持ってこなかった」というエンジニアの声もありました。人によって「当たり前」は異なるものであり、「この情報が事前にほしい」というポイントも異なるものです。もしかしたら「細か過ぎる」と思われるかもしれませんが、できる限り詳細に伝えて、入社1日目からその人のベストコンディションが整えられるようにしています。

また、入社前の時点で、どんな社員が働いているかがわかるようにと「プロフィールカード Coicy」の共有も進めています。

遊び心のあるプロフィールカード「Coicy」

(遊び心のあるプロフィールカード「Coicy」に関する同社のブログ記事へリンクします)

Coicyや先ほど紹介した「声のオファーレター」などは、「Voicyならでは」の要素も強いと思われるかもしれません。しかし、どれも制作工数はあまりかかりませんし、発想次第で自社に合うようアレンジができるものかと思うので、参考にしていただけるとうれしいです。

「人・組織を育てる『フィードバック』の基礎知識」ダウンロードページはこちら リモートコミュニケーションのヒントも

2-2. 入社初日の歓迎ランチの前に聴く「Welcomeメッセージ」が、チームワーク形成のカギ

現在コロナ禍の影響で出社スタイルは自由としていますが、入社当日に関してはオフィス出社としています。そこで、各事業部から事業内容の説明をしたり、使っているツールの登録を一緒に行ったりするなど、入り口でつまずくことがないようフォローしています。その後、同じチームで働くことになるメンバーおよび直属の上司からの「音声のWelcomeメッセージ」を、ランチの直前にお1人で聞いてもらいます。

音声のWelcomeメッセージ

「音声のWelcomeメッセージ」が入った自分だけの専用チャンネル

「選考中に、実はこんなことを思っていました」「あなたのこんなところがいいなと思って採用を決めたんです」といった、オンリーワンのメッセージを伝えるほか、簡単な自己紹介で趣味の話を語るなど、人物理解が深まるような情報も盛り込みます。その後のランチは、音声のWelcomeメッセージを送った同じチームで働くことになるメンバーと一緒にとってもらいます。

「入社初日の歓迎ランチ」だけに限りませんが、「初対面の人との食事」って、通常、相手の人となりを探る時間がありますよね。せっかく記念すべき入社初日のランチなのに、気を遣いながら、相手のキャラクターを探るような1時間。歓迎される新入社員からしたら、正直あの1時間って楽しみづらいんじゃないのかなって思ったんです。

でも、「音声のWelcomeメッセージ」を事前に聞いておけば、すでに自己紹介が終わっている状況からランチを始められるので、スタート地点も違うし、打ち解けるスピードが速くなるんです。「〇〇が好きって言っていましたね」と会話が生まれ、たった1時間ほどのランチとは思えない盛り上がりに。翌日からの実務でも、分からないことを周りに聞きやすくなるなど、チームワーク形成がとてもスムーズになります。

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2-3. 入社後は定期面談やアンケート実施で、あがった声をすぐに改善につなげる

入社したあとは、1週間後のタイミングでアンケートを実施し、内定後~入社までのオンボーディング体験に0~5の5点満点で満足度を測っており、5以外は満足ではないという厳しい基準でPDCAを回しています。

入社以降に関しては、入社当日の各部署の説明など、非常に細かくカテゴリーを分けてアンケートを作成しており、現場へのフィードバックにつなげています。入社後に悩んでいること・困っていることを答えてもらう項目では、「その内容を上司に伝えていいか」をあわせて聞いていますが、約85%が「はい」と回答していますね。同意を取れている悩みや相談事項は、上司に共有し、すぐ状況改善につなげてもらいます。

入社後アンケート以外にも、社員のエンゲージメントを高めるうえで、その都度さまざまなアンケートを実施していますが、アンケートの運用で大事にしているのは、もらった指摘はどんなささいなことでもすぐに行動に移す、ということ。入社当初のフォローだけではなく、継続して社員の声に応え続けることが大切です。「アンケートに答えると、会社は本当に変わる」という実感を積み上げていくことが大切だと思っています。

さらにアンケートだけではなく、組織改善クラウドのスコアや、人事による1・3・6・12カ月の1on1の面談を行い、さまざまな角度から組織の状態を定期的に把握しています。

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3. 神は細部に宿る。EXチームの「細かすぎる」ほどのこだわりが、全社の活気をつくっている

EXチームの「細かすぎる」ほどのこだわり

2020年はコロナ対策によるリモートワークにより、社内コミュニケーションの機会が減ってしまったため、EXチームで意識的に社員交流イベントを企画・運営しました。

当社では3月早々からフルリモートにしていたため、1回目の緊急事態宣言明けには、あえてオフラインでの交流の場をつくろうと、社内に期間限定のカフェをオープンしました。緊急事態宣言が明けたとはいえ、もちろん感染症対策には気を遣ったのですが、「感染防止徹底宣言ステッカー」を自分たちでまねて作り、カフェの入り口に貼っていました。
EXチームの担当メンバーがステッカーを作っている姿を見たときは、正直「ここに時間を使うのか…」なんて思っていたのですが、参加した社員からは「EXチームのこういう細部へのこだわりがいい!」と、大盛り上がり。小さなステッカーが、EXチームのこだわりや情熱を象徴しているかのようでした。

どんな企画も細部までこだわり抜く姿勢が、組織や社員のことを本気で考えて動く「EXチームの熱量」として全社に伝わり、それに呼応して社員も盛り上がってくれているのではないかと思います。

コロナ禍の状況下においては、2020年4月に入社したてのメンバーが「自分のように4月1日以降に入ってきたたくさんの新入社員たちが楽しめ、オンラインの悩みが解消できる場をつくりたい」と彼女自らオンラインで「スナック」を企画したイベントが一番盛り上がりましたね。私も参加しましたが、ゲームをしながらゆるく参加する人もいるなど、その場に「強制力」というものがなかった点が、多くの社員にとっての「心理的安全性」につながったのではないかと考えています。そして、この1年で、組織コミュニケーションをつくる人・空気が、EXチームだけでなく、現場へも自然と広がりつつあると感じました。

事業や組織が成長し、そこで働く人も変化していくなかで、入社後のオンボーディングはこの先も変化し続けなければなりません。「声」の持つ力を活用しながら、事業の成長とともに、人が成長する組織づくりを実現したいと思います。

※掲載情報は記事制作時点のものとなります。

執筆:田中 瑠子、編集:瀬戸 香菜子(HRreview編集部)

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